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30話 帰ってきました

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~ナリス国王宮にて~


マノンが目を開けると、そこはナリス国の謁見の間だった。

無事にメイリスが転移を成功させたみたいだ。

「クソっ!なんで俺だけが王宮に......」

マノンがそう呟くと、謁見の間の扉が開いた。

振り向くと、そこには宰相が立っていた。

「なっ、お前はマノン・マージェン!?なぜここに!?」

驚くのも無理はない。ハルエットから帰国するという報告があったのはついさっきだ。

こんなに早く帰ってくるなんて、誰が想像できたことか。

「...シエラの従者である、メイリスが転移魔法で送ってくれました」

とマノンが説明すると宰相はまた驚いた。

「まさか...転移魔法が使えるなんて...」

少しの間、呆気にとられていたが、なにか思い出したかのように顔を上げた。

「シエラ嬢は!?」

「......ハーヴェスト家に」

俺は別でここに飛ばされた、と説明すると

「わかった。貴様は両親の所へ連れていく」

ついてこい、と宰相が言ったので、マノンは言う通りについて行った。







✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


~ハーヴェスト家にて~

私、メイリス、フォストの3人が目を開けると、ハーヴェスト家の門の前だった。


「帰ってきたわね」

と思わず呟くとメイリスが、そうですね、と答えてくれた。

急に居なくなって、皆に迷惑をかけたから謝らなくちゃ

と考えていると

「へぇー、ここがシエラ嬢の実家か」

と横から聞こえてきた。勿論、今言ったのはフォストだ。

「とりあえず、中に入りましょうか」

2人が頷いたのを確認してから門をくぐった。

すると、庭師が私達に気付いて、シエラお嬢様!と駆け寄ってきた。


「随分と早いお帰りだったんですね!おかえりなさい!」

急に居なくなって、少しくらい怒ってもいいのにそんな様子もなく、嬉しそうに言うのを見て少し驚いてしまった。

「えぇ、ただいま。ごめんね?勝手に留守にしてしまって...」

と言うと、あんな旦那様と別れて旅に出たくなるのも当然ですよ、と思いもよらなかった返事をされてしまった。

ありがとう、と返すと他の従者達も私達に気付いて屋敷の中から次々と出てきた。

「お嬢様!おかえりなさい!」

「待ってましたよー!」

「メイリスもおかえり!」

「度のお話聞かせてください!」

と同時に話しかけてきて、あわあわしてるとお父様とお母様も屋敷から出てきた。

お父様はフォストの姿を見ると驚いた顔をしたが、すぐに顔を引きしめて

「シエラ!領主の仕事を放棄して、勝手に居なくなるとはどういうつもりだ!」

と怒られてしまった。

私はごめんなさい、と素直に謝ると

「全く...まぁ、無事で帰ってきてくれて良かった」

お父様はほっとした顔をしながら頭を撫でてくれた。

お母様を見ると、目に沢山の涙をためて、おかえり、と微笑んでくれた。

「お母様、ただいま。ごめんね?心配をかけて」

私がそう言うと、お母様は

「いいのよ、それよりも中に入って一緒にいる男性を紹介して欲しいわ」

と言われた。

フォストを見ると、その会話を微笑みながら、勿論紹介させてくれ、と頷いた。



一方、少し離れたところにいるメイリスは、ノアに物凄く怒られていた。

「全く!主人を1人にしなかったことは褒めますが、なぜ止めることは出来なかったんですか!?」

ノアが手紙を届けてる間に居なくなったからとても心配しただろう。

そう考えると申し訳ないわ。

「あ、ノアさん。私、精霊の愛し子だったみたいで、私にそんなに怒ると精霊に仕返しされちゃいますよ」

とメイリスが他愛のない話のように、平然と爆弾発言をしていて少し笑ってしまった。

メイリスの言葉にお父様とお母様、他の従者も全員が驚いた。


「いや、そういう話ではなくて......え!?精霊!?メイリスが!?え!?え?」

その中で1番驚いていたのはキャラが崩壊するんじゃないかと思ったくらいの反応を見せたノアだった。

その光景を見て皆で必死に笑いをこらえたのは、ノアには内緒だ。


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