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29話 一緒に行きます
しおりを挟む謁見の間を出た後、私とメイリスは王宮に仕えている従者達にお礼を言い、急いで荷造りをした。
「メイリス、準備は終わったかしら?」
「はい。私はあまり物を出してなかったので」
私とメイリスは王宮に来た時と同じ格好をして、王宮を後にしようとした。
すると突然、後ろから私とメイリスを呼ぶ声が聞こえてきた。
振り向くと、そこにはフォストが大きな鞄を持って走ってきていた。
「え!?フォスト様!?」
「思ったより早い出発で驚いたよ」
と荒い息を整えながら言うフォストに、私もメイリスも戸惑ってしまった。
荷物の量的に、着いて行く気なんだと察したからだ。
「あ...あの、フォスト様」
「シエラ嬢!メイリス!俺も一緒に行ってもいいかな?」
私は目をキラキラさせて聞いてくるフォストを断る手段なんて無いと思ったので、メイリスに助けを求めると
ふいっ
と目をそらされてしまった。
これは.........もう、どうにでもなれ!ってやつです。
私は引きつった笑みを浮かべて、勿論です、と答えた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
私とメイリス、フォストの3人で入国門に行くと、マノンが大人しく待っていた。
「お待たせしました」
とだけ告げると、マノンは不機嫌そうにこちらを睨んできた。
「ねぇ、シエラ嬢。この人は?」
とフォストが小声で聞いてきたので、元旦那です、とだけ短く答えると、なるほど...、と少し嫌そうな顔をした。
たぶん、臭すぎて我慢できなかったのね。申し訳ないわ。
そう思いながら、メイリスに馬車をお願いしようとしたら
「シエラ!この男はなんだ!?俺というものが居ながら浮気をしたんだな!?」
とマノンが急に叫び出した。
まさか、ここまで馬鹿だったとは......。
大体、浮気をしていたのは貴方の方でしょう?
否定しようと口を開くと、先にフォストが前に出ていた。
「初めまして。シエラの元旦那様。私はハルエット国の第3王子、フォストと言います」
フォストは、にっこりと笑っているが、その笑顔はいつも見るようなものとは違い、相手を馬鹿にするような笑い方だった。
......あら?今、私の事を呼び捨てにしてなかったかしら?......いや、きっと気の所為よね。
そう考えていると
「お嬢様」
と急にメイリスから声がかかった。
「どうしたの?」
「それが、今精霊に聞いたところ、いつの間にか転移魔法が使えるようになっていたみたいなんです」
転移魔法とは、言葉の通り人を目的地へと転移させる魔法だ。
だが、それを習得するには膨大な魔力と繊細なコントロールが必要なため、使える人は数少ない。
「えっ!凄いじゃない!じゃあ、今から一瞬でナリス国に行くことが出来るの?」
「...そういうことですね」
少し自信がなさげに頷くメイリスに私は、精霊がいるんだから大丈夫よ、と声をかけるとメイリスは頑張ります、と短く答えた。
話を聞いていたマノンとフォストは目を輝かせながら、早く行こう、と急かしている。
「メイリス、ではお願いできるかしら?」
「かしこまりました。行き先はハーヴェスト家でよろしいですか?」
「えぇ、大丈夫......あ、マノン様だけ王宮に送ってあげてちょうだい」
「かしこまりました」
「な、なぜだ!シエラ!」
「当たり前ですよ?なぜ貴方を我が家に入れなければいけないんですか?」
と微笑むとマノンは驚いた顔をしていた。
メイリスが軽く魔法を唱えると、マノンの体が光に包まれた、と思ったらヒュンと音がして居なくなっていた。
「メイリス、流石だな」
「えぇ!凄いわ!」
私とフォストがそれぞれ賞賛をおくると、少し照れくさそうな顔をしてから
「ありがとうございます」
では、次はハーヴェスト家に転移しますね、とめいリスが言うと、3人は光に包まれてナリス国の方向へと飛んで行った。
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