上 下
82 / 89

81話

しおりを挟む
伯爵家の話を聞いた、というお兄様の表情は見えないのでわかりませんが、きっと凄く落ち込んでいますわよね。

だって、アンナ様が結婚相手として最後の希望のようなものでしたから。

そう思っていると、

「この婚約の話自体なくなるらしい。今まで迷惑をかけてすまない」

お兄様がそう言ってきましたわ。

反射的に振り向くと、そこには私に向かって、深く頭を下げるお兄様がいて

「お、お兄様は何も悪くありませんわ。なので頭を上げてくださいませ」

と言ってしまいましたわ。

だってまさかお兄様が頭を下げてまで謝ってくるとは思っていなかったんですもの。

すると、お兄様は頭を下げたまま

「いや......これは俺がアンナ嬢に強く言わなかった責任だ。メイド達にもこれから謝ってくるつもり」

と言ってから頭を上げましたわ。

確かに、お兄様がアンナ様にハッキリと言わなかったのも悪いです。

ですが、アンナ様が一般的な常識のある人だったら、こんなことにもなっていないんですわ。

つまり、一番悪いのはアンナ様、ということです。

ですが、今のお兄様にそう言っても納得はしないと思ったので黙っていると

「それと.......あの.....さ」

と何か言いたそうにしていますわ。

これ以外に何か言うことがあるんでしょうか?

そう思って、思わず首を傾げて、お兄様の言葉を待ったんですが

「いや、なんでもない」

とだけ言って部屋の扉の方に向かって歩いて行ってしまいました。

な、なんですの?

お母様といい、お兄様といい。

話すことがあるならハッキリと言ってくれないと、なんだかモヤモヤしますわ!

そう思っている私に、

「もう少しで夕食だから食堂に行き準備しておいてね」

と言って、お兄様は部屋を後にしました。

時計を見ると、確かに夕食の時間が迫っていますわ。

.....ただ謝罪に来ただけ、ということで合っていますのよね?



ーーーーーーーーーーーーーー

私が食堂に向かうと、もうお父様もお母様も、お兄様までもが席についていて、

「隣国から手紙が届いた」

何やら重苦しい空気のなか、お父様がそう話し始めましたわ。

お父様いわく、元々疑いがあったけど証拠が掴めなかったから助かった、と感謝されたみたいです。

調査書に書いてある通り、伯爵家は一家全員が何かしらの罪を犯している、ということで、一旦ですが全員牢屋行き。

伯爵に関しては処刑となるだろう、とのことが手紙に書いてあったみたいですわ。

夫人はすべての悪事に関与していたわけではない、ということで処刑は免れたものの終身刑。

アンナ様とアンナ様のお兄様はそれぞれ強制労働させられる、ということで処罰が決まったみたいです。

それから、一時期でもアンナ様の婚約者的立場にいたお兄様も疑われるところだったんですが、お兄様はそんなことをしていませんし、何より証拠を出した家の人が関与しているとは思えない、とのことで特に何もなかったみたいですわ。

お父様の話を聞いて

「ということは、アンナ様は帰宅してからすぐに捕まってしまったんですのね」

と私が言うと

「そうでしょうね。まぁ、今までしてきたことを考えたら自業自得よ」

お母様がそう言って苦笑していますわ。

確かにその通りですわね。

処刑されないだけマシだ、と思った方が良いですわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜

雪島 由
恋愛
生まれた時から家族も帰る場所もお金も何もかもがない環境で生まれたセラは幸運なことにメイドを務めていた伯爵家の息子と婚約を交わしていた。 だが、貴族が集まるパーティーで高らかに宣言されたのは婚約破棄。 平民ごときでは釣り合わないらしい。 笑い者にされ、生まれた環境を馬鹿にされたセラが言い返そうとした時。パーティー会場に聞こえた声は国王陛下のもの。 何故かその声からは怒りが溢れて出ていた。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!

しずもり
恋愛
 ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。 お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?  突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。 そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。 よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。 *なんちゃって異世界モノの緩い設定です。 *登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。 *ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。

婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。 全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。 言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。 食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。 アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。 その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。 幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…

【本編完結】はい、かしこまりました。婚約破棄了承いたします。

はゆりか
恋愛
「お前との婚約は破棄させもらう」 「破棄…ですか?マルク様が望んだ婚約だったと思いますが?」 「お前のその人形の様な態度は懲り懲りだ。俺は真実の愛に目覚めたのだ。だからこの婚約は無かったことにする」 「ああ…なるほど。わかりました」 皆が賑わう昼食時の学食。 私、カロリーナ・ミスドナはこの国の第2王子で婚約者のマルク様から婚約破棄を言い渡された。 マルク様は自分のやっている事に酔っているみたいですが、貴方がこれから経験する未来は地獄ですよ。 全くこの人は… 全て仕組まれた事だと知らずに幸せものですね。

【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。

西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。 路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。 実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく――― ※※ 皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。 本当にありがとうございました。

処理中です...