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66話 ベルンside
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父上が見ていた扉がゆっくりと開いたかと思ったら、入ってきたのは母上だった。
あまりにも久しぶりの姿に
「母上!」
と駆け寄ろうと思ったが、なんだか違和感がある。
お腹のあたりを大事そうに.......いや、なんだか膨らんでいないか?
い、いや....気のせいだ。
きっと今、母上のことを久しぶりに見たからそう見えただけで、きっと見間違いだ。
そう思っている俺に、追い打ちをかけるかのように
「跡継ぎはこの子だ。だからお前はもういらない」
今まで聞いたことのないような冷たい声で、俺にそう言ってきた。
それでも、自分が貴族ではなくなるなんて信じられなくて、
「ど、どういうことですか!大体性別だってまだわかりませんよ!?この国は男しか家は継げないんですよ!?」
と言ってみたが
「陛下にもこの話はしてある。そろそろ法律も変えないと、と思っていたから丁度いい、とのことだ」
父上から返ってくる答えは俺が言っていることを全て論破するような、そんなことばかりだった。
「そんな........」
もう何も切り札なんか残っていない.......。
ここまで論破されたらもう何も言い返せないじゃないか.......っ!
そう思ったとき、視界の端に母上の姿が目に入った。
みっともないことはわかっているが、これしかないと思って
「は、母上は!?母上は俺がいなくなったら嫌ですよね!?」
母上の足に縋るようにしがみついて、どうにか父上を止めるように、と懇願した。
母上が、俺のことを必要だと言ってくれたら父上だって考えが変わるはずだ。
そう思っていると、母上は、静かに、ゆっくりと
「ベルン」
と俺の名前を呼んだ。
きっと俺のことが大切だ、家に居ても良い、と言ってくれる。
そう思って、期待に満ちた目で母上を見た。
でも、母上の言うことは俺の思っていたものと全く違った。
「貴方、私と何か月も会っていなかったのに何も思わなかった?」
そう言ってきたときの母上の顔は、今までの優しい雰囲気は一切なく、ただただ何の感情も感じない、冷たいものだった。
そんな母上に
「え!?あ、あの.....それは........」
なんて返事を返すのが正解なのか.......。
母上と会わなくなったのはアリスと遊ぶことで1日が終わった、と満足していたからだ。
別に会おうと思わなくても会える、なんて思っていたら気付いたら何か月も会っていなかった。
「一度でも私に会いに来たことはあったかしら?」
そう言われると何も言い返せない。
だって、母上と話をしに行こう、だなんてここ最近は一切思わなかったから。
だから何も言えずに黙っていると、そんな俺を見て母上は大きくため息をついた。
そして
「貴方が私に対して何も思っていないように、私も貴方のことはどうも思っていません。それに、無実の令嬢のよからぬうわさを流すなんて........自分の息子だと思うのも恥ずかしいですわ」
そう言って、静かに執務室のソファーに腰を掛けた。
何も言い返せないし、母上の言うことは正しい。
多分母上は、父上よりも先に俺のことを諦めていたんだ........。
今になってそんなことに気付くとは...........。
母上なら助けてくれる、と思っていた俺にとって、あまりにもショックな母上の態度に呆然としていると
「そういうことだ。仕方がない....この休日だけは家にいることを許可しよう。その間に荷物をまとめるんだな」
父上はそんな俺に対しても容赦なくそう言って執務室から追い出した。
休日.....あと2日で、ということか。
あまりにも久しぶりの姿に
「母上!」
と駆け寄ろうと思ったが、なんだか違和感がある。
お腹のあたりを大事そうに.......いや、なんだか膨らんでいないか?
い、いや....気のせいだ。
きっと今、母上のことを久しぶりに見たからそう見えただけで、きっと見間違いだ。
そう思っている俺に、追い打ちをかけるかのように
「跡継ぎはこの子だ。だからお前はもういらない」
今まで聞いたことのないような冷たい声で、俺にそう言ってきた。
それでも、自分が貴族ではなくなるなんて信じられなくて、
「ど、どういうことですか!大体性別だってまだわかりませんよ!?この国は男しか家は継げないんですよ!?」
と言ってみたが
「陛下にもこの話はしてある。そろそろ法律も変えないと、と思っていたから丁度いい、とのことだ」
父上から返ってくる答えは俺が言っていることを全て論破するような、そんなことばかりだった。
「そんな........」
もう何も切り札なんか残っていない.......。
ここまで論破されたらもう何も言い返せないじゃないか.......っ!
そう思ったとき、視界の端に母上の姿が目に入った。
みっともないことはわかっているが、これしかないと思って
「は、母上は!?母上は俺がいなくなったら嫌ですよね!?」
母上の足に縋るようにしがみついて、どうにか父上を止めるように、と懇願した。
母上が、俺のことを必要だと言ってくれたら父上だって考えが変わるはずだ。
そう思っていると、母上は、静かに、ゆっくりと
「ベルン」
と俺の名前を呼んだ。
きっと俺のことが大切だ、家に居ても良い、と言ってくれる。
そう思って、期待に満ちた目で母上を見た。
でも、母上の言うことは俺の思っていたものと全く違った。
「貴方、私と何か月も会っていなかったのに何も思わなかった?」
そう言ってきたときの母上の顔は、今までの優しい雰囲気は一切なく、ただただ何の感情も感じない、冷たいものだった。
そんな母上に
「え!?あ、あの.....それは........」
なんて返事を返すのが正解なのか.......。
母上と会わなくなったのはアリスと遊ぶことで1日が終わった、と満足していたからだ。
別に会おうと思わなくても会える、なんて思っていたら気付いたら何か月も会っていなかった。
「一度でも私に会いに来たことはあったかしら?」
そう言われると何も言い返せない。
だって、母上と話をしに行こう、だなんてここ最近は一切思わなかったから。
だから何も言えずに黙っていると、そんな俺を見て母上は大きくため息をついた。
そして
「貴方が私に対して何も思っていないように、私も貴方のことはどうも思っていません。それに、無実の令嬢のよからぬうわさを流すなんて........自分の息子だと思うのも恥ずかしいですわ」
そう言って、静かに執務室のソファーに腰を掛けた。
何も言い返せないし、母上の言うことは正しい。
多分母上は、父上よりも先に俺のことを諦めていたんだ........。
今になってそんなことに気付くとは...........。
母上なら助けてくれる、と思っていた俺にとって、あまりにもショックな母上の態度に呆然としていると
「そういうことだ。仕方がない....この休日だけは家にいることを許可しよう。その間に荷物をまとめるんだな」
父上はそんな俺に対しても容赦なくそう言って執務室から追い出した。
休日.....あと2日で、ということか。
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