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45話

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声の主は勿論フレッド様ですわ。

急な敬語に驚きましたが、ちゃんと使えますのね。

そう思いながら次の言葉を待っていると、フレッド様は少し気まずそうにしながら

「最初のあの態度は謝罪します。すみませんでした」

と私達に頭を下げてきましたわ。

急になんですの?

それに、この変わりよう..........。

雰囲気までも一気に変わりましたわ。

二重人格を疑うレベルですわね。

そう思っていると、お父様が

「なんであんな態度を取ったんだ?」

とフレッド様に尋ねました。

あ、それ、私も気になりますわ。

するとフレッド様は少し悲しそうな顔をしながら

「前の婚約者がそういう感じだと聞いて、そっちの方が良いのかと......」

と言ってきましたが反射的に

「あら?私、その人のことは大嫌いでしたわよ?」

と言ってしまいましたわ。

それはもう反射的に。

だって、今の言い方ではベルン様のことが好きだったけど婚約破棄されてしまった、みたいじゃないですか。

それは気に食わないですわ。

するとフレッド様はキョトンとした顔をしながら

「.........え?」

と呟いています。

本当に誰からの情報ですの?

それに、隣国で私の噂をする人なんて誰もいませんわよ。

だって、隣国との関りが一切ないんですもの。

そう思いながら

「婚約破棄されて、喜んでしまうくらい前の婚約者は嫌いでしたの。知りませんの?」

とつい言うと、気まずそうにしながら

「そこまでは聞いていなかった..........」

そう言ってなんだか落ち込んでいますわ。

うーん.......悪い人ではないんでしょうね。

まぁ、もう二度とこんなことがないように、ここははっきりと言わせてもらいますが、

「フレッド様のあの態度を見ていると胸糞が悪くなりますの。元々は違う性格なのであれば二度とやらないでくださいませ」

軽く睨みながらそう言うと、私の言うことが本当なんだ、と理解してくれたようで

「わかった.......」

そう言って小さく縮こまってしまいましたわ。

ここまで脅すようなことはしたくなかったんですが、自業自得ですわね。

全く.........本当に迷惑な話ですわ。

お父様も、私とフレッド様の間で話がついた、と判断してくれたみたいで、はぁ......と大きくため息をついた後に

「なんだか勘違いがあったようだな」

そう言って苦笑しています。

一方、公爵は顔色を悪くさせながら

「本当にすみません.......っ」

と机に頭が付くのでは?と思うほどに思いっきり頭を下げましたわ。

フレッド様がこんなことをするのは想定外で動けなかったとかそういうことでしょうか?

そうだとは言え、こうなる前に止めるべきでしたわね。

なんて思いながら、思わず私もため息をついていると、お父様が

「とりあえず、今後あのような態度を取ったらこの話は白紙にするので」

と公爵にくぎを刺していますわ。

まぁ、一旦目を瞑ってあげる、と言うことですわね。

本来ならこの話はなくなるところだったんですから感謝して欲しいですわよね。

お父様の言葉に、私も頷いていると

「は、はいっ。もちろんでございます」

「すみませんでした」

と2人揃って謝ってくれたので、これでこの話は終わりですわ。

はぁ.......最初からこんな感じで大丈夫なんでしょうかね?
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