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73話

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まず、自分に届いた手紙ではなくお父様の方の手紙を読もう、と思った私は、早速受け取ったばかりの封筒から2枚の便箋を取り出しましたわ。

すると、ここでもまた手紙の一番最初に

『親愛なるー--......』

と書かれているのを見てつい笑いそうになってしまいましたわ。

手紙の最初は親愛なる、意外知らないんでしょうか?

そもそも、自分よりも年上の、しかもあまり関りのないお父様にもその言葉を使うなんて.......。

いまだに卒業試験を受けられないのも納得ですわよね。

なんて思いながら、手紙を読み進めましたわ。

えーっと.....まぁ、2枚にもわたる手紙の内容を簡単に説明するとしたら

『婚約破棄をなかったことにして欲しい。そして、我が家に金銭的な支援をしてくれ』

とのことですわね。

お父様が手紙を破り捨てたくなる、といった意味がよくわかりましたわ。

確かにこの内容は苛立ちますわよね。

そう思いながら便箋を折りたたんで再び封筒の中に入れていると、それに気付いたお父様が苦笑しながら

「どうだった?」

と聞いてきましたわね。

全く.....聞かなくてもどう答えるかわかっているでしょうに。

なんて思いながら、苦笑しているお父様に

「最悪ですわね。そもそも、なぜキーン様の家に金銭的な支援をしないといけませんの?それに、婚約破棄をなかったことに、なんて絶対に嫌ですわ」

ハッキリとそう言うと

「まぁ、当然だな」

と言って頷いていますわね。

そうです、当然なんですわ。

だって、婚約破棄をなかったことに、ということは、やっとキーン様から解放されたのに再び婚約なんて、自分から地獄に行くことと同じくらいのことですわよ。

まぁ、当の本人であるキーン様の方は私と会うたびに

「俺と婚約出来ることに感謝しろ」

と言っていたので、嫌がられている、ということを知らないんでしょうけど。

はぁ.......どうやったらここまで自分に自信を持てるのか、是非教えて欲しいですわね。

そう思いながら、お父様に便箋を入れた封筒を渡して

「というか、なぜ金銭的支援がー.....という話になっていますの?あれほど貧乏人だと言っていたではありませんか」

と気になったことを尋ねましたわ。

あれほどまでにバカにしていたのに、言動とこの手紙の内容が全く合っていないんですのよね。

あ、もちろん支援しろ、ではなく、支援してやるだったら話しは違いますわよ?

反省したのか、自分の言ったことをしっかりと考えたんだ、と私の方も婚約について考えるかもしれません。

ですが、このキーン様からの手紙の通り婚約をしたとして、我が家に何の利益があるんでしょう?

正直、婚約を結ぶ理由がありませんわよね。

なんて思っていると

「多分だが、ヴァイオレットが特許を取ったから、貧乏ではなくなった、とでも考えたんじゃないか?よく考えると、あの時の婚約の時に結んだ契約も、我が家にとって1つも利益はなかったな」

いま思い出したことのように言っていますが、衝撃ですわよ?

私だって、利益のない婚約だったらすぐにでも破棄したかったのに.....。

なんて思いながら、お父様に

「それでよく婚約していましたわね」

と言うと

「伯爵は相当口が上手いんだよ」

笑いながらそう言ってきましたが、私からすると笑い事ではありませんわよ?

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