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62話 キーンside

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はぁ......学園でバカにされ、家に帰えると父上が毎日のように怒っていて......。

ヴァイオレットとの婚約破棄だけで、なぜこれほどまでに俺は追い詰められているんだ?

いや、それよりもヴァイオレットが殿下と一緒に居ることが俺には理解が出来ないし、そもそも2人は話をするような仲ではないはず。

それなのに、ここ数日で仲良くなった、という感じではなく長く付き合いがあるように見えた。

一体どういうことなんだ.....?

そう思いながら、父上やメイドに気付かれないように、急いで自分の部屋に向かった。

というのも、メイドはまぁ.....別に見つかったところで何も問題はないが、父上に帰宅がバレてしまったらまた怒鳴られてしまうからな。

怒鳴ることをやめて欲しい、というのが本音だが、それが無理なのはよくわかっている。

だから少しでも心に余裕を作ってから呼び出されたいというか.......。

なんて思いながら、ベットに寝転がろうと鞄を机の上に置くと、それと同じタイミングでコンコンと扉をノックする音が聞こえてきたではないか。

くっそ.......もしかして、帰宅したのがバレてしまったのか?

いや、だが、流石に早すぎな気もするんだが........と思いながらも、無視するわけにもいかないから、ゆっくりと扉を開けた。

すると、そこにはメイドが立っていて、扉が開いたことに一瞬驚いた顔をしたがすぐに

「おかえりなさいませ。旦那様がお呼びです」

と深々と頭を下げてきた。

.....ということは、もしかして俺が帰宅したことを知らずにノックした、ということか。

はぁ......だったら無視しておいた方が良かったな。

だが、無視をしたらしたで、メイドが父上に怒鳴られるだけで......。

そう思いながら、メイドの言葉に返事をすることもなくボーっとしていると、流石に違和感に気付いたんだろう。

メイドは不思議そうな顔をしながら

「キーン様?」

と首を傾げて俺のことを見ていた。

それを見て、自分が固まったしまっていたんだ、と気付いたが.......疲れているんだろうな。

「あぁ、すぐに行く」

と口では言ったものの、体が全く動かなかった。

はぁ.......なんで毎日毎日、父上のストレス発散に使われないといけないんだ。

そもそも、こんなことになったのだって、父上の考えを事前に俺にも教えておけばこうはならなかったよな?

正直、婚約を結んで来い、とだけ言われてもヴァイオレットに対して特別な感情は全くないし、再び婚約したいか、と聞かれたら答えは「いいえ」だ。

あのような田舎に住んで、両親は毎日のように土いじりをして.......。

平民達の為にお金を使っている、とかヴァイオレットは言っていたが、それで自分たちが貧乏になってしまうのであれば話は全く違う。

たかが平民に金を使うよりも自分たちに金を使った方が何倍も有意義なはずなのに.......。

そう思いながら立ち尽くしていると、流石のメイドも待っているには長すぎたんだろうな。

いつのまにか扉の前には誰もいなくなっていて、1人で突っ立っている、という状況になっていた。

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