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10話
しおりを挟むとりあえず、あの場で何が起こったのか、ということを説明できましたし、殿下も私に対しては何も怒っていないみたいなので一安心....ということで良いですわよね?
そう思いながら、用意されたお茶を口に含みましたわ。
うーん...やっぱり王宮のメイドさんが淹れてくれたお茶と言うのは味がなんだか違いますわね。
何と言いますか......深い味わい、とでも言えばいいんでしょうか?
いや、ですがそんな簡単な言葉では説明がつかない気もしますわよね。
どうにかして、今度お茶の淹れ方を伝授して欲しい....と私がお願いして聞いてくれるでしょうか?
なんて思いながら、じっとカップを眺めていると、
「さて、とりあえずパーティーの件はわかった。じゃあ、本題に入らせてもらうね」
殿下はそう言うと、急に真剣な顔をして私のことを見てきましたわ。
あ、殿下のこの真剣な顔がカッコいい、という令嬢が物凄く多いんですのよ。
ただ、私はこの顔をした時は何の話をするのか想像が出来るので、カッコいいの前に何と返事をするか、について考えてしまいますけどね。
そう呑気に思っていると、
「前からお願いしていたのは引き受けてくれる、と言うことで良いかな?」
殿下はにこやかに私にそう聞いてきましたわね。
まぁ、この質問をされることは想定していましたし、別に良いんですが......普段は私の様子を窺いながら聞いてくるのに、今日は自信満々に質問してくるのが少し腹立たしいですわよねぇ。
なんて思いながら、小さくため息をついた後に
「まぁ、婚約者が居なくなってやることもないですからね。喜んで引き受けますよ」
苦笑しながらそう言うと、殿下は満面の笑みで
「良かった!じゃあ、早速だけど昨日の夜の段階で既に建設は開始しているんだ。ただ外装は勝手に決めたけど内装は好きにしたいだろうな、と思って」
そう言いながら設計図のようなものを懐から出して、テーブルの上に置きましたね。
昨日から建設って......えっと、昨日婚約破棄されて、昨日の夜に引き受ける、と決めたはずですよね?
それなのに、なぜ昨日の夜から注文することが出来るのか疑問ですし、そもそも設計図に関しては数年間練っていたんだろうなぁ....と思うくらい細かく、考え込まれています。
もしかして、殿下はこうなることをわかっていました?
そう思った私は、恐る恐る殿下に
「ず、随分と準備が早くないですか?」
と尋ねると、
「そりゃあ、僕がずっとお願いしていたことが叶うんだもの。何年越しだと思っているの?」
そう言ってきた殿下は今まで見たこともないくらいの満面の笑みをしていました。
い、いや.....まぁ、いいんですけどね。
元々、引き受けたい、とは思っていましたもの。
ですが、ここまで準備万端だとなんとも言えない心境になってしまいますわ。
殿下の言葉にはなんとか
「あ、あははー.....そうですよね」
と曖昧な返事を返しましたが、とりあえず喜んでいるから良い、と思っておきましょう。
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