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5話

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とりあえず、簡単にですがお父様達にパーティーでの出来事を報告し終えると

「キール殿が本当にそんなことを言ったのか?」

お父様は今まで聞いたこともないくらいの低い声でそう聞いてきましたわ。

これには私もお兄様も驚きましたが

「え、えぇ、わざわざ嘘をいう訳がありませんわよ」

と答えるとお父様は大きくため息をつきましたわね。

まぁ、今までキール様のご実家には相当良い思いをさせてきた、ということもあって、まさか貧乏だからと婚約破棄されるのは想定外ですわよね。

というのも、お父様が貧しい人に食糧なんかを渡している話はしたと思いますが、それでも余ったものは全てキール様の家にも貧しい人用に、と寄付していましたの。

しかも、わざわざ形の良いものをしっかりと選定して、ですわよ。

当然ですが、他の領地だったら余った野菜は自分たちで売るでしょうし、他の貴族たちが聞いたら、

「えぇ!?そんなのおかしいですわ!?」

と言われますわよね。

ちなみに、私も随分と前からそう思っていますわよ。

なので、お父様にもおかしいと言ったんですがいまだにやめませんのよ。

まぁ、他にもキール様の家に野菜を送るのをやめて欲しい理由があるんですけどね。

実は前にキール様のおうちに行ったときにチラッと聞いたことがあるんですが、我が家の野菜は他の領地の物よりも出来が良いから売れば高値が付く、と言っていましたの。

なので、きっとキール様の家は我が家からもらった野菜たちを売って自分たちの懐に入れていたんじゃないでしょうかね?

だからこそ、夫人のアクセサリーは毎回違いましたし、ドレスも随分と高そうな物ばかり着ていたんだと思いますわ。

ただ、そんなことをお父様が聞いたらショックを受けると思って今まで黙っていましたのよね。

はぁ....婚約している時はキール様達のことを簡単に疑うことは出来ない、と思ってスルーしていましたが、よく考えると上手く利用されていただけ、ですわよね。

なんて思っていると、黙ってしまったお父様の代わりにお兄様が

「それで、ヴァイオレットはこれからどうするんだ?後2か月後には卒業するし、結婚しないとなると家にいることになるのか?」

と聞いてきましたわ。

実は、これに関しては何も困っていませんのよね。

下を向いているお父様に

「その件なんですが、お父様」

と声をかけると、一瞬驚いたようにビクッと肩を震わせましたが、すぐに

「なんだ?」

と言ってくれたので、私は微笑みながら

「殿下からも言われていたあれを受けようと思うんですがどうでしょう?」

そう言いましたわ。

実はキール様と婚約している間から殿下にお誘いを受けていたことがありますのよね。

受けてしまったらキール様がうるさいと思ったのでずっと断っていましたが、もう断る理由がありませんわ。

なんて思っていると

「わ、私は構わないが.......いいのか?」

心配そうにそう聞いてきましたわね。

まぁ、ずっと断っていたことなので、私が嫌がっていると勘違いしていたんでしょうね。

そんなお父様に自分の意思で、という思いも込めながら

「もちろんですわ!そもそも、婚約していたから仕方なく断っていただけですもの!今だったら喜んで引き受けますわ!」

満面の笑みでそう言いましたわ。
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