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11話

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「大丈夫か?」

そう言ってセルドリック様が私の顔を覗き込んできました。

正直、まだセルドリック様はリナリーさんの味方になるのでは?と思っていたので今日の行動は少し意外でした。

あぁ、もちろん今回はセルドリック様が私を大切にしてくれているのはわかります。

そうじゃなければ、あの騒ぎで駆けつけてくるとは思えませんから。

わかっているんですけど、そう思わずにはいられないんです。

だって、過去9回はリナリーさんの味方だったんですもの。

その9回のうちに出来てしまったセルドリック様に対する不信感がすぐに取り払えるわけではありません。

「大丈夫です。助けてくれてありがとうございます」

私がそう言って微笑むと、セルドリック様は少し複雑な表情をしてしまいました。

上手く笑えていなかったんでしょうか?

いや...でも笑うことは慣れているので、そんなことはないと思いますが......。

そう思いながら首を傾げていると、目を逸らされてしまった。

もう!なんなんですか!



それから少し無言の時間がありましたが、急に

「あぁ、そうだ。次の休日、何か用事はあるのか?」

とセルドリック様が聞いてきました。

次の休日......多分、いつも通りお義姉様かルリアナ様とお茶をするくらいなので、用事と言えるほどのことはありませんよね?

それ以外は本を読むかお母様のお買い物に付き合わされるだけですし。

なので

「いえ、特に用事はありませんよ?」

と答えました。

王宮でお茶会でも開くんでしょうか?

あ、でもそれなら先に招待状が届くはずですよね?

そう考えていると、セルドリック様は少し照れくさそうに

「じ、じゃあ、一緒に王都に出て買い物でもしないか?今まで1度もそういうことをした事がないと思って......」

そう言って頬を搔いた。

確かに、今まで王妃教育があったから王宮に行って会う、くらいでしたし......。

王妃教育が終わった今では基本的に学園でしか会っていませんでしたし、過去の転生の時も出掛けるなんてしたことはありませんでした。

それに王都ですか。

実は、行くことは多々あっても店に入ったりはしたことがないので気になります。

ということで、殿下には了承の返事を返しました。

すると、殿下はパァっと花が咲いたかのような笑顔を浮かべて、良かった、と呟いた。

こんな笑顔を見たのは幼少期以来だったから少し驚いてしまいましたわ。

だって、私はこの笑顔に恋したんですもの。



一応、王太子とその婚約者の外出ですから、護衛がつくので2人っきりではありませんが、少し楽しみになりました。

戻ったらお父様には報告しましょう。

あぁ、それから、平民の格好をしてくるように、と言われました。

お母様に言えば何かしらのワンピースとか持っているでしょうか?

そう思いながら、殿下と別れた。

この時は自分では気付いていなかった。

自分が思っている以上にセルドリック様のことを好いていることに。


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