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下らない昔話を思い出しちまったよ
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むかしむかし、あるところに団子屋のお兄さんがおりました。
今日も今日とて店に立ち、早く客が来ないかと暇をもて余していました。
すると……
今にも、どんぶらこどんぶらこ、と音が聞こえてきそうな、大きな桃を持ったお姉さんが入店しました。
お兄さんは、あまりにも美味しそうな桃を目の前にして食欲が抑えきれず、なんとかしてお姉さんの桃をお持ち帰りしました。
家に帰るとお兄さんは、丁寧に丁寧に皮を剥き、ゆっくりと桃を割ってみると果肉からは蜜が溢れ、とてもとても美味しそうだったので、お兄さんは思わず貪るようにお姉さんの桃を頂きました……
そんな絶品の桃をお姉さんから頂いたので、お兄さんはせめてものお礼にと、お兄さん自慢のおだんごをあげる事にしました。
するとお姉さんは泣いて喜び、無我夢中でおだんごを食べ、気が付けば辺りは真っ暗になっていました。
その日から、毎日のように桃とおだんごを二人で食べ、どんぶらこ、どんぶらこ……
「で、お前が生まれたってわけ」
「うるせーわ!! クソ親父!!」
下らない昔話を思い出しちまったよ……
小さい頃、毎日寝かしつけのために母さんに絵本を読んでもらっていたが、その日に限っては何故かクソ親父が俺の寝室へやって来て、そんな下らない話を聞かせやがった。
そんな話でも眠ってしまった俺も俺だが、今思い出せばとんでもない話だった。
なんでそんな事を思い出したかというと、はぁ……
「あぁん、パパ、上手ー!」
「そうだろママ? 昔から生地をこねるのは得意なんだぜ!」
「うふふっ、知ってる! ん、もう! ちゃんと手を動かして…… じゃなくて、動かさないでぇ!」
…………
「へへっ、こねこねしちゃうぜぇー!」
「手つきが…… すごぉい!」
…………
「んー、もうそろそろいい感じかなぁ? おっと、これはみたらしかなぁ?」
「そう、よぉ…… パパ、みたらし、好きでしょ?」
「うへへっ、だぁい好き!」
…………うるせぇ!!!
「イチャついてんじゃねー!! ちんたらしてると開店まで間に合わねぇだろ!?」
いつまで生地こねてんだよ!! 早く焼かないといけないのに、時間がないんだよ!
「ごめんね桃ちゃん、そんなに怒らないでよぉ」
「どうせそんなに客入んないんだから、焦る事ないだろ桃太」
「そういう問題じゃねーよ! イチャつくなら仕事終わってからにしろ!!」
まったく…… やる気がないのかいつもこんな感じだよ、ある意味やる気はあるのかもしれないが。
三代続く老舗の団子屋『吉備 団子店』その三代目であるクソ親父の『吉備喜火太《きびきびた》』と、その妻である『吉備紅桃《きびくるみ》』、その間に生まれた一人息子が俺、『吉備桃太《きびももた》』だ。
定時制の高校に通いつつ、日中は店の仕事を手伝っている高校三年生。
両親からは手伝わずに普通の高校に行けと言われていたが、こんな両親に任せていたら店が潰れてしまう。
二代目であるばあちゃんが必死に守ってきた俺も大好き店だ、ゆくゆくは四代目となる俺が守っていかないと!
「ふぅ、生地も出来たし…… ママ、そろそろまかない食べたくない?」
「んっ…… もう、パパったら分かってるくせに! お腹ペコペコよぉ」
「へへへっ、じゃあ早速パパ自慢のおだんごを……」
「こらぁ!! まだ終わってないだろー!!」
まったく! 目を離せばすぐサボろうとしやがって ナニが…… いや、何がまかないだ! 二人して朝っぱらから息子の前でイチャイチャイチャイチャ、恥ずかしくないのか!?
「も、桃ちゃん、そんなに怒られるとママ、悲しくなっちゃうわぁ」
「こら、桃太! ママをいじめるんじゃない! ママは…… くるみは俺が守る!!」
「あぁん、きびちゃんカッコいい……」
あー、はいはい、くだらない事言ってないで手を動かしてねー?
そんないつも通りとなりつつあるやりとりをしながら作業をしていると、調理場に一人の女の子が入ってきた。
「おはようございます!」
「おう! おはよう千和、今日もよろしくな」
「うん!」
この女の子は隣に住んでいる幼馴染の『柴田千和《しばたちわ》』。
俺と同い年で普通高校に通っているのだが、通学前の一時間と学校が終わってから閉店までアルバイトとして手伝ってくれている優しい子だ。
小柄で、大きなくりくりとした瞳に幼さが残る丸顔で、肩まで伸ばした少し癖のある茶色の髪、それを左右にまとめ小さなツインテール作っている。
そして何より目を引くのが胸元の大きなメロン、制服が盛り上がり過ぎて、下手したらおへそが見えてしまいそうなくらいのたわわに実ったメロンだ。
「桃くん、今日は何をすればいいかな?」
「じゃあとりあえず今日は焼き上がった団子にみたらしとあんこの二種類を塗ってくれ」
「二種類でいいの? うん、任せて!」
ちょこちょこと調理場を動き回る千和を横目で見ながら俺は次々と団子を焼いていく。
今日は平日だしそこまで団子は出ないだろうから…… あれ? 親父達が居なくなってる!! 千和が来たからって逃げやがったな!?
「あははっ、相変わらず仲良しだね、おじさん達」
「まったく…… ごめんな、いつも手伝ってもらって、大したアルバイト代も出せないのに」
「ううん、好きでやってるんだから大丈夫だよ! このお店大好きだし、それに…… 桃くんのおだんごも食べれるし」
「……学校終わったら、お腹いっぱい食べさせてやるから」
「う、うん…… た、楽しみにしてる」
顔を赤くして子犬のようにプルプル震えて、千和は本当に食いしん坊だな。
すっかり俺のおだんごにハマってしまったようで、時にはよだれを垂らしておねだり…… おっと、団子が焦げちゃう! さて、俺も仕上げの手伝いを……
「んっ、よいしょ、完成したのはどうすればいい?」
「俺がショーケースの中に並べるからそのままでいいぞ、ありがとうな」
「うん…… えへへっ」
器用で手際の良い千和は、あっという間にみたらしとあんこを塗り終わっていた。
いつもの癖で頭を撫でてやると、千和は嬉しそうに目を細める。
あっ、もちろんちゃんと手を洗った後だからな?
開店までは時間もあるし、午前中の仕込みは終わったから休憩するか。
家の中は…… うん、今は止めておこう、きっと今頃……
「桃くん、学校はどんな感じ? 友達出来た?」
「へっ? いや、クラスのやつとは普通に仲良くしてるけど」
千和…… 俺の事、ぼっちだと思ってるのか? まあ定時制だから人数も少ないし年上の人なんかもいるけど、結構仲良くしてるぞ? たまにうちの団子を買ってってくれるし。
「そ、そうなんだ! あ、あの…… クラスの女の子とかも?」
「女の子? いるにはいるし話くらいはするけど」
心配そうな顔をして、何か問題でもあるんだろうか?
「も、も、桃くんのおだんごを食べさせたりとか?」
おだんご!? いやいや、俺のおだんごなんてまだ人に出せるようなものでもないから…… ん? 待てよ? 千和、お前ってやつは。
「食いしん坊だな千和は…… 俺のおだんごを一人占めしたいんだろ?」
「へっ!? い、いや、わ、わ、私は! そんな、ひ、一人占めなんて…… た、ただ、お腹いっぱいになるまで桃くんのおだんごを毎日食べたいとか、そんな、ハレンチな事、考えてないから!!」
顔を真っ赤にして否定しているけど、何年の付き合いだと思ってるんだ?
「大丈夫だ、今俺のおだんごを食べたいと言ってくれるのは千和だけだ、だから遠慮せずに食べていいんだぞ?」
「本当に? 桃くん……」
あぁ、こりゃおだんごの事で頭がいっぱいって顔だな、仕方ない。
「学校行く前に俺のおだんご、ちょっと食べていくか?」
「そ、そんな! 朝からおだんごなんて……」
「千和、どうする?」
「……我慢できなくなっちゃった、お願い桃くん、おだんご一つ…… 私に下さい……」
その後、千和は登校時間ギリギリまで滅茶苦茶おだんごを食べた。
今日も今日とて店に立ち、早く客が来ないかと暇をもて余していました。
すると……
今にも、どんぶらこどんぶらこ、と音が聞こえてきそうな、大きな桃を持ったお姉さんが入店しました。
お兄さんは、あまりにも美味しそうな桃を目の前にして食欲が抑えきれず、なんとかしてお姉さんの桃をお持ち帰りしました。
家に帰るとお兄さんは、丁寧に丁寧に皮を剥き、ゆっくりと桃を割ってみると果肉からは蜜が溢れ、とてもとても美味しそうだったので、お兄さんは思わず貪るようにお姉さんの桃を頂きました……
そんな絶品の桃をお姉さんから頂いたので、お兄さんはせめてものお礼にと、お兄さん自慢のおだんごをあげる事にしました。
するとお姉さんは泣いて喜び、無我夢中でおだんごを食べ、気が付けば辺りは真っ暗になっていました。
その日から、毎日のように桃とおだんごを二人で食べ、どんぶらこ、どんぶらこ……
「で、お前が生まれたってわけ」
「うるせーわ!! クソ親父!!」
下らない昔話を思い出しちまったよ……
小さい頃、毎日寝かしつけのために母さんに絵本を読んでもらっていたが、その日に限っては何故かクソ親父が俺の寝室へやって来て、そんな下らない話を聞かせやがった。
そんな話でも眠ってしまった俺も俺だが、今思い出せばとんでもない話だった。
なんでそんな事を思い出したかというと、はぁ……
「あぁん、パパ、上手ー!」
「そうだろママ? 昔から生地をこねるのは得意なんだぜ!」
「うふふっ、知ってる! ん、もう! ちゃんと手を動かして…… じゃなくて、動かさないでぇ!」
…………
「へへっ、こねこねしちゃうぜぇー!」
「手つきが…… すごぉい!」
…………
「んー、もうそろそろいい感じかなぁ? おっと、これはみたらしかなぁ?」
「そう、よぉ…… パパ、みたらし、好きでしょ?」
「うへへっ、だぁい好き!」
…………うるせぇ!!!
「イチャついてんじゃねー!! ちんたらしてると開店まで間に合わねぇだろ!?」
いつまで生地こねてんだよ!! 早く焼かないといけないのに、時間がないんだよ!
「ごめんね桃ちゃん、そんなに怒らないでよぉ」
「どうせそんなに客入んないんだから、焦る事ないだろ桃太」
「そういう問題じゃねーよ! イチャつくなら仕事終わってからにしろ!!」
まったく…… やる気がないのかいつもこんな感じだよ、ある意味やる気はあるのかもしれないが。
三代続く老舗の団子屋『吉備 団子店』その三代目であるクソ親父の『吉備喜火太《きびきびた》』と、その妻である『吉備紅桃《きびくるみ》』、その間に生まれた一人息子が俺、『吉備桃太《きびももた》』だ。
定時制の高校に通いつつ、日中は店の仕事を手伝っている高校三年生。
両親からは手伝わずに普通の高校に行けと言われていたが、こんな両親に任せていたら店が潰れてしまう。
二代目であるばあちゃんが必死に守ってきた俺も大好き店だ、ゆくゆくは四代目となる俺が守っていかないと!
「ふぅ、生地も出来たし…… ママ、そろそろまかない食べたくない?」
「んっ…… もう、パパったら分かってるくせに! お腹ペコペコよぉ」
「へへへっ、じゃあ早速パパ自慢のおだんごを……」
「こらぁ!! まだ終わってないだろー!!」
まったく! 目を離せばすぐサボろうとしやがって ナニが…… いや、何がまかないだ! 二人して朝っぱらから息子の前でイチャイチャイチャイチャ、恥ずかしくないのか!?
「も、桃ちゃん、そんなに怒られるとママ、悲しくなっちゃうわぁ」
「こら、桃太! ママをいじめるんじゃない! ママは…… くるみは俺が守る!!」
「あぁん、きびちゃんカッコいい……」
あー、はいはい、くだらない事言ってないで手を動かしてねー?
そんないつも通りとなりつつあるやりとりをしながら作業をしていると、調理場に一人の女の子が入ってきた。
「おはようございます!」
「おう! おはよう千和、今日もよろしくな」
「うん!」
この女の子は隣に住んでいる幼馴染の『柴田千和《しばたちわ》』。
俺と同い年で普通高校に通っているのだが、通学前の一時間と学校が終わってから閉店までアルバイトとして手伝ってくれている優しい子だ。
小柄で、大きなくりくりとした瞳に幼さが残る丸顔で、肩まで伸ばした少し癖のある茶色の髪、それを左右にまとめ小さなツインテール作っている。
そして何より目を引くのが胸元の大きなメロン、制服が盛り上がり過ぎて、下手したらおへそが見えてしまいそうなくらいのたわわに実ったメロンだ。
「桃くん、今日は何をすればいいかな?」
「じゃあとりあえず今日は焼き上がった団子にみたらしとあんこの二種類を塗ってくれ」
「二種類でいいの? うん、任せて!」
ちょこちょこと調理場を動き回る千和を横目で見ながら俺は次々と団子を焼いていく。
今日は平日だしそこまで団子は出ないだろうから…… あれ? 親父達が居なくなってる!! 千和が来たからって逃げやがったな!?
「あははっ、相変わらず仲良しだね、おじさん達」
「まったく…… ごめんな、いつも手伝ってもらって、大したアルバイト代も出せないのに」
「ううん、好きでやってるんだから大丈夫だよ! このお店大好きだし、それに…… 桃くんのおだんごも食べれるし」
「……学校終わったら、お腹いっぱい食べさせてやるから」
「う、うん…… た、楽しみにしてる」
顔を赤くして子犬のようにプルプル震えて、千和は本当に食いしん坊だな。
すっかり俺のおだんごにハマってしまったようで、時にはよだれを垂らしておねだり…… おっと、団子が焦げちゃう! さて、俺も仕上げの手伝いを……
「んっ、よいしょ、完成したのはどうすればいい?」
「俺がショーケースの中に並べるからそのままでいいぞ、ありがとうな」
「うん…… えへへっ」
器用で手際の良い千和は、あっという間にみたらしとあんこを塗り終わっていた。
いつもの癖で頭を撫でてやると、千和は嬉しそうに目を細める。
あっ、もちろんちゃんと手を洗った後だからな?
開店までは時間もあるし、午前中の仕込みは終わったから休憩するか。
家の中は…… うん、今は止めておこう、きっと今頃……
「桃くん、学校はどんな感じ? 友達出来た?」
「へっ? いや、クラスのやつとは普通に仲良くしてるけど」
千和…… 俺の事、ぼっちだと思ってるのか? まあ定時制だから人数も少ないし年上の人なんかもいるけど、結構仲良くしてるぞ? たまにうちの団子を買ってってくれるし。
「そ、そうなんだ! あ、あの…… クラスの女の子とかも?」
「女の子? いるにはいるし話くらいはするけど」
心配そうな顔をして、何か問題でもあるんだろうか?
「も、も、桃くんのおだんごを食べさせたりとか?」
おだんご!? いやいや、俺のおだんごなんてまだ人に出せるようなものでもないから…… ん? 待てよ? 千和、お前ってやつは。
「食いしん坊だな千和は…… 俺のおだんごを一人占めしたいんだろ?」
「へっ!? い、いや、わ、わ、私は! そんな、ひ、一人占めなんて…… た、ただ、お腹いっぱいになるまで桃くんのおだんごを毎日食べたいとか、そんな、ハレンチな事、考えてないから!!」
顔を真っ赤にして否定しているけど、何年の付き合いだと思ってるんだ?
「大丈夫だ、今俺のおだんごを食べたいと言ってくれるのは千和だけだ、だから遠慮せずに食べていいんだぞ?」
「本当に? 桃くん……」
あぁ、こりゃおだんごの事で頭がいっぱいって顔だな、仕方ない。
「学校行く前に俺のおだんご、ちょっと食べていくか?」
「そ、そんな! 朝からおだんごなんて……」
「千和、どうする?」
「……我慢できなくなっちゃった、お願い桃くん、おだんご一つ…… 私に下さい……」
その後、千和は登校時間ギリギリまで滅茶苦茶おだんごを食べた。
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