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こうして歩いてると

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 授業が終わり、俺とエリザは一緒に帰宅している。

「今日の晩ごはん何がいい?」

「ん~、ハンバーグ……かな?」

「うん、分かったよ! じゃあ買い物して帰ろ?」

「おう! 荷物持ちは任せとけ!」

「シュウちゃん頼もしい! うふふ」

 俺達がそんな会話をしていると、となりにいたジュリのやつが

「なんか……夫婦というより母親と子供みたいです! エリっちの母性が溢れ出してるです」

「何だと!?」

「シュウっちを見つめるエリっちの目がそういってるです! ね、エリっち?」

「そんな事ないよ? でもシュウちゃんのたまに見せる子供っぽさもシュウちゃんの魅力なんだから」

「やっぱり子供扱いしてるです!」

「だからそんな事ないってば~! うふふ」

 エリザとジュリが楽しそうに俺の事を話しているが……俺って子供っぽいか?

「じゃあ私はここで曲がるです、また明日学校で! バイバイです~!」

「バイバイジュリちゃん!」

「またな~!」

 そしてスーパーに寄り、夕食の材料を買って帰る。

「あっ、このお菓子美味そう! 買っていいか?」

「それ1個だけだよ? 節約しないと、家賃は払ってもらえるけど、光熱費と食費は自分達持ちって約束でしょ?」

「……は~い」

「シュウちゃんはいい子だからもう1個だけならいいよ?」

「マジで!? やった!」

「うふふ~、シュウちゃんったら~!」

 ……確かに母親に甘やかされてる子供みたいだな、俺。

 買い物を終え、家に向かって歩いていると

「こうして歩いてると……夫婦みたいだね?」

「そうだな……」

 すると近くにあった病院からマメ子とガリ田が一緒に出てきた。

「あっ、シュウくんとエリザさん……」

「マメ子、調子が悪いみたいだな、大丈夫か?」

「あれっ? マミ子ちゃん、ここって……」

 2人が出てきた病院、よく見るとここは産婦人科の病院だった。

 そしてマメ子とガリ田はお互いを見て頷き、

「実は……私、赤ちゃん出来ちゃったみたいで……」

「えっ?」

「まだ親には言ってないんだけど……どうしよう」

「僕達はまだ学生だし、正直に言うしかないよ」

「うん……でも私は……この子を産んであげたい」

「マミ子ちゃん……」

「カリ田くん、ごめんね? 迷惑はかけないから……」

「迷惑なんて何言ってるんだよ! とにかくお互いの両親に話をしよう! シュウくんとエリザちゃんそれじゃあ僕達は行くよ、できればクラスのみんなには内緒にしといてくれない?」

「あ、ああ……」

「ありがとう! それじゃあまた」

 ガリ田とマメ子が去って行った方を見つめ、立ったまま動けないでいる俺達。

「なんか今日は凄い日だな、ミーナ先輩にガリ田達……だもんな」

「……うん」

「エリザ?」

 エリザが思い詰めたような顔をしているのが気になり声をかけてみると

「帰ろ? シュウちゃん」

 笑顔で俺を見るエリザ、大丈夫……そうかな? ちょっと気になるが、2人で家に帰る。

 そしてアパートに着き、部屋に入ると……

「シュウちゃん……」

 部屋に入ってすぐ俺に抱きつくエリザ。

「どうした?」

「シュウちゃん愛してる……私、シュウちゃんを愛してるよ」

「俺も愛してるよ、本当にどうしたんだ?」

「シュウちゃん」

 そして俺の手を引き、買い物をした荷物もそのままで……

「シュウちゃん、シュウちゃん……」

「エリザ?」

 エリザに手を引かれ寝室へ……

 …………
 …………


「ごめんね、シュウちゃん」

「大体わかったよ、焦る事なんてないぞ? ずっとエリザと一緒にいるから」

「ありがとうシュウちゃん、でもやっぱりシュウちゃんとの家族が……」

「ミーナ先輩とかを見て焦ったんだろ? 俺達は俺達じゃないか、だから心配いらないよ」

「うん…… あっ、お腹空いたでしょ? ご飯作るね?」

「いや、もう少しこのままで……」

「シュウちゃん……」

 今日は色々あった、エリザの気持ちも分かる。
 けど俺達はこれからも一緒だ、という事をお互いに何度も確かめあった。
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