シングルパパ

冬の章

おさそい

　問題はユリカ先生が本当にウチに来てくれるかどうかだ。次の日、保育園に行った時ユリカ先生を誘おうとしたが、何故か勇気が出ない。ちょっとは変われたと思っていたのに、ここに来て生来の豆腐メンタルが遺憾なく発揮されるとは。
　その翌朝も誘うことが出来ず、お昼時に桑田南方さざんと落ち合い相談した。
「俺ならストレートに誘うけどな。まあどうしても無理ってんなら、子供をダシにすりゃいいんじゃね？」
　
　その助言を胸に、子供のお迎えの時、勇気を振り絞って僕はユリカ先生を誘った。
「こ、今度のクリスマスイブ、ご予定ありますかっ？」
「あ、上村さんのお家でパーティーをされるんですよね。ハヤテ君とツムジ君が『ユリカ先生も来るんでしょ』って言っていたので、もしかしてお誘いされるかなとも思ってたんですけど……」
「ああ是非是非来てください！　子供たちがどうしてもユカリ先生に来てほしいと言うもので、ご迷惑でなければ……」
「迷惑だなんてとんでもないです。では、予定開けておきますね。楽しみにしています！」

　やった。誘うことが出来た！　とその時、僕の心に微かな後悔の念が湧き上がった。子供たちが望んだから来てほしいと言うのはずるい。でもだからといって今更どうする？　その時脳裏に「面倒避けるべからず」の標語が浮かび上がった。そして携帯を取り出し、ユリカ先生に電話をかけた。
「もしもし、先ほどお話した件なんですけど、その……さっきは子供たちをダシにして誘ってしまいましたけど、本当は……僕自身がユリカ先生に来て欲しかったんです！」
　しばしの沈黙の後、ユリカ先生は答えた。
「ご丁寧にありがとうございます。上村さんの誠実なお気持ちを感じました。今とっても嬉しい気持ちです！」