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夏の章
うわさ
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「パパ、リコンてなあに?」
ハヤテの爆弾発言で、鼻からコーヒーが出そうになる。
「な、なんだよ急に」
「ママは遠い国にいるんだよって言ったら、マユちゃんが『ハヤテ君のパパはリコンしてるんだよ』って言ったの」
「それは……」
僕は答えられなかった。普段から子供の質問には出来るだけ誠実に答えようと心掛けている。だけど、この件に関して今は明かせない。
マユちゃんママに言おう、大人の事情に子供を巻き込むなと。彼女だって人の親だ、真摯に話せばわかってくれる。そう意気込んで保育園に赴き、マユちゃんママに近づこうとした……その時、他のママさんたちがボスママである彼女を取り囲んだ。そして一行は群れをなして歩き出したので、僕は少し後から尾行した。
一行は近くのファミレスに入った。保育園児の保護者は普通働いているはず。仕事はどうした? 疑問は尽きないが、もしかして伍代とユリカ先生の噂話も聞けるかもしれない。そう思って彼女たちの声が聞こえる席に僕は座った。
案の定、彼女たちは園内の様々な噂話に花を咲かせた。なるほど、ボスママというのはこうやって情報収集するのか、と妙に感心した。とその時、ハヤテの名前が出たので耳の感度を上げた。
「マユったら、ハヤテ君とまだ仲良くしているみたいなの。やめてほしいのよね……この前なんか、マユのお洋服にセミの抜け殻が入っていたのよ。こんな汚いもの入れちゃダメって言ったら、ハヤテ君がくれたって……もう、育ちの悪さ全開じゃない」
僕は怒りで震えた。自分のことならともかく、息子の名誉が穢されるのは許せない。だが悲しいかな、僕は許せない相手を許さない勇気も持ち合わせていない。さらに話はあらぬ方向へ。
「そうそう、ハヤテ君パパって浮気して奥さんに逃げられたんですってね」
「でも、あのショボイ男じゃ逃げたくもなるわね。ホホホ」
全く根も葉もない作り話だ。こんな信憑性のないおしゃべりに耳を傾けようとした僕がバカだった。
仕事帰り、僕は保育園で息子たちを引き取るとギュッと抱きしめた。「パパ、痛いよ」という彼らに言い聞かせた。
「パパは、おまえたちを誇りに思ってるぞ! 誰になんと言われようとな!」
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「でも、あのショボイ男じゃ逃げたくもなるわね。ホホホ」
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