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例の侍女ら

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 次の日、朝から皇后様の部屋を訪ね部屋に戻ろうとしていると、厨房付近で皇宮侍女が集まっているのが見えた。

 思わず立ち止まる。
「どうしたのかしら?」

「本当ですね。何でしょう?」
 セナが首を傾げる。

「見てきましょうか!仲良くしてる子がいる様なので!」
 そう言うとエマが集まっている中に駆けて行った。

「もぉ、お嬢様は行っていいなんて仰ってないのに…」
 私の後ろでため息を吐くニーナ。

「ふふ。良いわよ。気になったし。」
 集まっている中にお構いなしで入り、何か話している様子のエマを遠くから眺める。

 すると、皇宮侍女の数人がコチラを向き駆け寄ってくる。

「た、助けてください!もう毎日めちゃくちゃなんです!」
 必死に訴る侍女ら。

「助けるのはいいけど…説明してくれないとどうにもならないわ。」
 困った顔をして言うと、戻って来たエマが言う。

「皇女殿下の侍女達が、難癖をついているようです…」

 “あぁ…”
 はぁー。っとため息を吐きながら侍女らが集まる場所を見る。

「わかったわ。行きましょうか。」

 私を見上げ、お願いをする皇宮侍女らを見て言う。
 パッと笑顔になる。
「ありがとうございます!!」

 近づくほどに言い争っている声が聞こえてくる。

 わざと、靴音をコツンコツンと鳴らし近づくと、音に気づき振り返る者が出てくる。
 直ぐに道を開け、お辞儀をする侍女らに言う。

「お疲れ様。」
 ニコリと笑いかけると、嬉しそうな表情を見せた。

 道が開けられ、言い争っている中心に近づく。

 私を背に、大きな声で言い争い興奮する皇宮侍女と、すぐ側に料理長である証の緑のスカーフの男も居た。

 向き合い言い争う侍女ら。
 皇女の侍女らが私に気づき、少したじろぐのが分かった。

 言い争う皇宮侍女の肩を軽く叩く。
 ビクッとし、直ぐに振り返る侍女に笑顔で言う。

「そんな大声出して、どうしたの?」

「お…おお嬢様??!!!
 も、申し訳ございません!」
 すぐに深々とお辞儀をする。

 争いの中心に居た侍女ら全員が私に対しお辞儀をする。

「いいのよ。それで?何かあったの?」

 周りを見渡し、皇女の侍女らを見る。
 “炊事場の侍女がほとんどの様ね。
 あぁ、…例の6人。騒がしい子達か”

 初めに口を開いたのは、皇女の侍女だった。

「私達は、皇女様のお口に合う様な料理を出して欲しい。と言っているだけです。」

 すると、私がさっき背中を叩いた皇宮侍女が大声で噛み付く。

「だから!限度という物があるでしょ!?
 味が濃ゆいだの、薄いだの!見た目が悪いだの全部に難癖をつけ、何度も何度も作り直させて!!
 挙句、やっぱりいらない。ってどういう事よ!!」

『そうよ!』
『文句ばっかり!』
『もう、うんざりよ!』

 そんな声が周りから聞こえてくるが、皇女の侍女らは動じていない様だった。

「何度も作り直しているのに、丁度いい塩梅が出来ていない方に問題があるのでしょ?」
 鼻で笑う皇女の侍女。

「何ですって!?!」
 興奮し、言い返そうとする皇宮侍女の肩にポンっと手を乗せ止める。

「まぁ、落ち着いて。話は分かったわ。」

「お嬢様ぁ…」
 すっかし困り果てているという顔をしている皇宮侍女ら。

「大丈夫よ。心配ないわ。」
 ニコリと笑顔を見せ、横で肩を落とし自信をすっかり無くしているか小さくなった料理長に言う。

「話は全て合っているの?」

 ビクッと身体を震わせ答える。
「は、はい…。
 両陛下にも、お嬢様にもお出ししている物と同じだったのですが…
 皇女殿下には、あわない様でして…
 つ、作り直しては、メモを取り!
 全て1グラム単位で調整したのです!」

「そう…。いつからなの?今日からと言うわけじゃなさそうだけど。」

「皇女殿下がお付きになった日のお昼からです…。
 お嬢様が出掛けられてから、酷くなりました…。」

「皇女様が直接いらした事は?」

「い、いえ。ありません。全てそちらの侍女らが…」

 そう言うと、料理長はチラッと皇女の侍女らを見る。

 “なるほど…。留守中に散々暴れてたのね。”

 そう思っていると、皇女の侍女らがヒソヒソと話しているつもりなのだろうか、全然出来ていない声が聞こえる。

「よくあんな濃ゆい物食べて何ともないわねぇ。」
「素材の味なんて何にも分からないんでしょうねー!」
「ねぇ!病気になりそうよね!」

 クスクス笑いながら、私を見ているのが分かる。
 どんどんまた肩をすぼめ小さくなっていく料理長。

 “まったく…”

「そう言えば、他の料理長や総料理長はどうしたの?
 貴方、デザートの担当じゃなかった?」

「は、ははい!
 覚えていて下さっていたのですね!感激です!
 他の料理長らは、今料理の仕込みなどを…
 総料理長は、気分がすぐれないから、少し休んで来る。と朝食の時間が終わるとお部屋に…」

 一瞬、嬉しそうな顔を見せたが、話していく間にどんどん表情が暗くなる。

 “まぁ、1週間何かを出す度に、訳のわからない文句も言われれば体調も壊すわね…”

『情けないわね。』
 今後は、本当にヒソヒソした声で微かに聞こえた。

 俯き暗い表情の料理長に、笑顔を見せ合う。
「そんなに下を向かないで?
 私は、とても美味しいと思っているし何の不満もないわよ。」

 バッと顔を上げ、涙ぐむ料理長。
「ありがどうございます!」

「貴女たちも。いつもありがとう。」
 振り返りつつ、侍女らを見渡し言う。

 皆、深くお辞儀をする。

「さて。私は、濃ゆいとも素材の味がわからないとも思った事ないければ、この通り健康なのだけど。
 皇女様は一体何て仰っているの?」
 次は皇女の侍女らに聞く。

「濃過ぎて食べられない物や、素材の味すらしない物があると仰られていました。」

 ふんっ!っとふんぞり返り言う。






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