3 / 4
2 魔王様の運命の出会い
しおりを挟む
「ルートヴィヒ、身体は大丈夫なのか?」
「はい、お父様。いつもご心配をおかけします」
どうやら我が父は国王としても父親としても良き人格をしているようだ。俺は病弱な第3王子、上に優秀な兄と姉がいるというのにわざわざ気にするのだから本当に珍しいくらいに優秀だろう。長年王族というものを見てきたが、自分が中に入るのはなんとも新鮮で面白いものだ。
「気にすることはない。お前も可愛い私の息子の1人だ。しかしヴィルヘルムの婚約者候補との立ち会いに出たいとは珍しいな」
「興味がありますので」
「ほう、まあとはいえ私はあまりこの縁談はいいものにはなりそうもないと思うがな」
「そうなのですか?」
「…いや、すまない。忘れてくれ」
失言だったようだが、思ったより先を見ているようだ。この人間は面白い。ならばここで少しだけ伏線を張るとしよう。
「お父様。お願いがあります」
「なんだ?」
「簡単です。お兄様が遠くないうちにこの縁談を無にして他の女性と添い遂げようとしたら、その時は僕に彼女のことをください」
予想外の言葉に父は驚いたような表情を浮かべてから何かを探るようにこちらを見てくる。ふむ、まあ突然こんなことを言えば警戒するだろう。実際俺がルートヴィヒとして彼女に会ったことはない。だが、ここで先に1つ先手を打てれば面白くなりそうだからだ。
「お兄様はとにかく我の強い方です。王とは傲慢で丁度よろしいですが…まあ、それでも万が一のことは考えるべきかと」
「確かにな…しかし、それはあくまで彼女の…フォルタール公爵令嬢の気持ち次第だ。軽々には受けられない」
「ええ、それで構いません」
元からそこまで欲してはいないのだ。これでひとまずは布石を打てたのだから後は芽が出るのを待つだけだ。
「お父様、おはようございます」
「おお、ヴィルヘルムか」
そんな会話が終わるタイミングで我が兄が悠々と出てきた。俺を見てから意外そうな表情を浮かべてから兄は言った。
「ルートヴィヒか。何故ここにいるんだ?」
「興味本位の見学です。お邪魔はしません」
「まあ、なんでもいいさ。早く終わらせてしまおう」
面倒そうな我が兄の態度に不安そうな表情を浮かべる父。ふふふ、俺の言葉に少ならかず揺さぶられているのだろう。これはこれで面白いが…さて、本命の方はどうだろうな。
「失礼します」
そんなことを考えていると、侍女の案内と共に入ってくる2人の男女。件の婚約者候補の両親…フォルタール公爵と公爵夫人だろう。そしてその後ろから歩いてくる少女に俺は少しばかり驚いてしまう。
白銀の長い髪に、赤い瞳。幼いながらも感じられる美しさ。これまで美女や美少女は何度も見てきたがこれほどの存在は初めてかもしれない。
(悪くない…いや、欲しいな)
思わずそう思ってしまう。ニヤけてしまうのを抑えてから。彼女を見ると何やら緊張しているのか、今にも転けそうな様子だった。
「お、お初にお目にかかりま――」
ガクッと、足を捻ったのか転ぶ少女。俺は反射的に彼女の元にダッシュするとそっと受け止めていた。
「えっ…」
「大丈夫ですか?」
驚く彼女と周囲。病弱設定なのに確かに一瞬で彼女の元までいったのだからそりゃこうなるか。ふむ、予定は少しだけ狂ったけど、仕方ない。
「あ、ありがとうございます…」
「いえ、無事で何より」
にっこりと微笑んでからそっと彼女を立たせる。すると彼女は聞いてきた。
「あ、あの。もしかして貴方がヴィルヘルム様ですか?」
「申し訳ありません。僕は弟のルートヴィヒです」
「ルートヴィヒ様…」
「親愛を込めてルーイと呼んでください」
そう微笑むと顔を赤くする彼女。おやおや、この程度で反応するとは初だなぁ。しかし可愛いものだ。思わずそう思ってから俺はせっかくなので少しだけここでも伏線を張ることにした。
「お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「…ミーシャ。ミーシャ・フォルタールです」
「可愛いお名前ですね」
「~~~!?」
顔を真っ赤にする彼女に俺は少しだけ嗜虐心をそそられながら決めた。今回のゲームは彼女を手に入れることに尽力しようと。
「はい、お父様。いつもご心配をおかけします」
どうやら我が父は国王としても父親としても良き人格をしているようだ。俺は病弱な第3王子、上に優秀な兄と姉がいるというのにわざわざ気にするのだから本当に珍しいくらいに優秀だろう。長年王族というものを見てきたが、自分が中に入るのはなんとも新鮮で面白いものだ。
「気にすることはない。お前も可愛い私の息子の1人だ。しかしヴィルヘルムの婚約者候補との立ち会いに出たいとは珍しいな」
「興味がありますので」
「ほう、まあとはいえ私はあまりこの縁談はいいものにはなりそうもないと思うがな」
「そうなのですか?」
「…いや、すまない。忘れてくれ」
失言だったようだが、思ったより先を見ているようだ。この人間は面白い。ならばここで少しだけ伏線を張るとしよう。
「お父様。お願いがあります」
「なんだ?」
「簡単です。お兄様が遠くないうちにこの縁談を無にして他の女性と添い遂げようとしたら、その時は僕に彼女のことをください」
予想外の言葉に父は驚いたような表情を浮かべてから何かを探るようにこちらを見てくる。ふむ、まあ突然こんなことを言えば警戒するだろう。実際俺がルートヴィヒとして彼女に会ったことはない。だが、ここで先に1つ先手を打てれば面白くなりそうだからだ。
「お兄様はとにかく我の強い方です。王とは傲慢で丁度よろしいですが…まあ、それでも万が一のことは考えるべきかと」
「確かにな…しかし、それはあくまで彼女の…フォルタール公爵令嬢の気持ち次第だ。軽々には受けられない」
「ええ、それで構いません」
元からそこまで欲してはいないのだ。これでひとまずは布石を打てたのだから後は芽が出るのを待つだけだ。
「お父様、おはようございます」
「おお、ヴィルヘルムか」
そんな会話が終わるタイミングで我が兄が悠々と出てきた。俺を見てから意外そうな表情を浮かべてから兄は言った。
「ルートヴィヒか。何故ここにいるんだ?」
「興味本位の見学です。お邪魔はしません」
「まあ、なんでもいいさ。早く終わらせてしまおう」
面倒そうな我が兄の態度に不安そうな表情を浮かべる父。ふふふ、俺の言葉に少ならかず揺さぶられているのだろう。これはこれで面白いが…さて、本命の方はどうだろうな。
「失礼します」
そんなことを考えていると、侍女の案内と共に入ってくる2人の男女。件の婚約者候補の両親…フォルタール公爵と公爵夫人だろう。そしてその後ろから歩いてくる少女に俺は少しばかり驚いてしまう。
白銀の長い髪に、赤い瞳。幼いながらも感じられる美しさ。これまで美女や美少女は何度も見てきたがこれほどの存在は初めてかもしれない。
(悪くない…いや、欲しいな)
思わずそう思ってしまう。ニヤけてしまうのを抑えてから。彼女を見ると何やら緊張しているのか、今にも転けそうな様子だった。
「お、お初にお目にかかりま――」
ガクッと、足を捻ったのか転ぶ少女。俺は反射的に彼女の元にダッシュするとそっと受け止めていた。
「えっ…」
「大丈夫ですか?」
驚く彼女と周囲。病弱設定なのに確かに一瞬で彼女の元までいったのだからそりゃこうなるか。ふむ、予定は少しだけ狂ったけど、仕方ない。
「あ、ありがとうございます…」
「いえ、無事で何より」
にっこりと微笑んでからそっと彼女を立たせる。すると彼女は聞いてきた。
「あ、あの。もしかして貴方がヴィルヘルム様ですか?」
「申し訳ありません。僕は弟のルートヴィヒです」
「ルートヴィヒ様…」
「親愛を込めてルーイと呼んでください」
そう微笑むと顔を赤くする彼女。おやおや、この程度で反応するとは初だなぁ。しかし可愛いものだ。思わずそう思ってから俺はせっかくなので少しだけここでも伏線を張ることにした。
「お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「…ミーシャ。ミーシャ・フォルタールです」
「可愛いお名前ですね」
「~~~!?」
顔を真っ赤にする彼女に俺は少しだけ嗜虐心をそそられながら決めた。今回のゲームは彼女を手に入れることに尽力しようと。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
死んだはずの悪役聖女はなぜか逆行し、ヤンデレた周囲から溺愛されてます!
夕立悠理
恋愛
10歳の時、ロイゼ・グランヴェールはここは乙女ゲームの世界で、自分は悪役聖女だと思い出した。そんなロイゼは、悪役聖女らしく、周囲にトラウマを植え付け、何者かに鈍器で殴られ、シナリオ通り、死んだ……はずだった。
しかし、目を覚ますと、ロイゼは10歳の姿になっており、さらには周囲の攻略対象者たちが、みんなヤンデレ化してしまっているようで――……。
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
殺されたくない転生悪女は、ヤンデレ婚約者と婚約を破棄したい!!
夕立悠理
恋愛
楽しみにしていた魔法学園の入学式で、私は前世の記憶を思い出した。前世の記憶によると、ここは乙女ゲームの世界で、私はヤンデレな攻略対象者たちから様々な方法で殺される悪役令嬢だった! って、殺されるとか無理だから! 婚約者にベタ惚れで、イエスマンな私は今日でやめます!! そして婚約破棄を目指します!! でも、あれ? なんだか、婚約者が私を溺愛してくるんですが……?
※カクヨム様小説家になろう様でも連載しています
【完結】転生悪役令嬢は婚約破棄を合図にヤンデレの嵐に見舞われる
syarin
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢として転生してしまい、色々足掻くも虚しく卒業パーティーで婚約破棄を宣言されてしまったマリアクリスティナ・シルバーレーク伯爵令嬢。
原作では修道院送りだが、足掻いたせいで色々拗れてしまって……。
初投稿です。
取り敢えず書いてみたものが思ったより長く、書き上がらないので、早く投稿してみたくて、短編ギャグを勢いで書いたハズなのに、何だか長く重くなってしまいました。
話は終わりまで執筆済みで、雑事の合間に改行など整えて投稿してます。
ギャグでも無くなったし、重いもの好きには物足りないかもしれませんが、少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
ざまぁを書きたかったんですが、何だか断罪した方より主人公の方がざまぁされてるかもしれません。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです
斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。
思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。
さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。
彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。
そんなの絶対に嫌!
というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい!
私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。
ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー
あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの?
ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ?
この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった?
なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。
なんか……幼馴染、ヤンデる…………?
「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる