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4 王女襲来
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「あなたという人は・・・またですか!」
旅館にアリスを連れて戻ると、クラウドが怒り浸透と言った感じで怒っていた。いきなり怒鳴れて少し驚いて縮こまったアリスを背中に隠して暁斗は言った。
「人手は必要だろ?それに、挨拶の前にそんな大声出したらアリスが怖がるだろ?」
「誰のせいですか!まったく・・・すみません。えっと・・・アリスさんですか?」
「は、はい・・・」
恐る恐る暁斗の背中から顔を出すアリスにクラウドはなるべく優しい口調を意識して言った。
「うちの暁斗があなたに迷惑をかけたようでーーーすみません」
「そ、そんな!むしろ、暁斗さんには私が助けられてーーー」
「いいえ。この男はとことん獣人が大好き過ぎてあなた方に確実に迷惑をかけます。セクハラされたら言ってください。私がしばきますので」
「そ、そんな・・・私は別に・・・」
チラリと暁斗を見てから顔を赤くするアリス。そんなアリスの様子を見て、ため息をついてからクラウドは暁斗を見て言った。
「とにかく・・・買ったのなら、最後まで責任はとってくださいよ?」
「当たり前だよ。それに、アリスくらい可愛いならうちの看板娘にピッタリだよ」
「まあ、容姿は確かにいいですが・・・あなたはここを獣人主義者の巣窟にしたいのですか?」
獣人主義者ーーーそれは、この獣人が差別される世界で、獣人こそが神からの御使いーーー天使のような存在だと主張する過激な連中のことで、この世界ではテロリストと同じ扱いになる。
「連中が来たら追い返すさ。流石に彼らのお仲間になるわけにもいかないからな」
「まあ、勇者のあなたが獣人主義者になったらそれこそ、国をあげての問題になりますからね」
「えっ・・・!?」
その言葉にアリスは思わず声をあげてしまった。暁斗は口止めを忘れていたことに若干後悔しながらもアリスからの反応を待った。
「あの・・・暁斗さんは、勇者様なのですか?」
「おや?知らなかったのですか?この男はこんなんでも一応勇者様なんですよ」
「元だよ。すでに俺は引退を決めたからね」
「そんな簡単に引退できないのはあなたが一番わかってるでしょうに・・・」
なんとなく申し訳なく思いつつも暁斗は言い訳のように言った。
「その・・・勇者って言ってもただの人間だからな。いつかは言おうと思ってたんだけど・・・怒った?」
チラリと視線をアリスに向けるとーーー彼女は涙を流していた。
「あ、アリス・・・?」
「怒るなんて・・・むしろお礼を言わせてください・・・」
「お礼?」
「お爺ちゃんと私を助けてくれたことについてです・・・本当にありがとうございます・・・」
アリスは暁斗が勇者という事実に驚いてはいたが・・・それは、こんな形で祖父の恩人に会えたことについてだった。
「ずっと・・・勇者様を探していました。お爺ちゃんが誇らしそうに語ってたのを覚えていたので・・・」
「大袈裟な・・・」
「大袈裟ではありません!お爺ちゃんは・・・自分達みたいな半端者を助けてくれて、見返りを求めない聖人よりも聖人な人だって言ってました!私も・・・こうして助けて貰えたことでそう思います・・・」
アリスがそう言うと、暁斗は頭をかいてから言った。
「俺は・・・むしろ、君や君のお爺ちゃんには助けられっぱなしだよ」
「えっ・・・どういう・・・」
「なんでもないよ。まあ、とにかくーーーこの話はおしまい。で、アリスをここで雇っても問題ないだろ?」
黙って聞いていたクラウドにそう言った暁斗。照れ隠しが若干あるとわかって、ニヤニヤして
いたクラウドはため息をついて言った。
「あなたの望むようにしてください。私も妻もあなたの味方ですから・・・」
「ありがとう・・・アリスもここで働くってことでいいよな?」
その暁斗の言葉にアリスは頷いて言った。
「はい・・・私を暁斗さんのお側においてください」
「うん。じゃあ、とりあえず中に入ろうか。クラウド、クリスは?」
「妻なら後で来ますよ」
「どなたなのですか?」
疑問符を浮かべるアリスに暁斗はクラウドを指差して言った。
「この男の嫁さんだよ」
「お嫁さん・・・クラウドさんは結婚しているのですか?」
「まあ一応・・・」
照れ臭そうにそう言うクラウド。鉄仮面なような印象を持っていたアリスはその表情になんとなく意外に思いつつ恐る恐る暁斗に視線を向けて聞いていた。
「あの・・・暁斗さんは・・・」
「ん?俺がどうしたの?」
「その・・・クラウドさんのようにお相手はいるのですか?」
どういう意味があるのか暁斗にはわからなかったが・・・特に隠す必要もないので答えた。
「いないよ」
「そうですか・・・」
どこか安心したようにほっとしているアリスに首を傾げていると、クラウドは言った。
「婚約の話なら来てましたよね?」
「・・・ミリーのことなら断ったけど?」
「あら・・・私はまだ諦めてませんわよ?」
そんなことを言ったのは無論アリスではない。声が聞こえてきたのはクラウドの後ろからでーーーそこに見えた人物に暁斗は驚いて名前を呟いていた。
「ミリー・・・」
「お久しぶりです暁斗様」
そう言って微笑んだのは、シンフォニー王国の
第二王女である、ミリー・シンフォニー・・・青い髪と清んだ瞳の美少女であるミリーは笑顔を浮かべてそこにいたのだった。
旅館にアリスを連れて戻ると、クラウドが怒り浸透と言った感じで怒っていた。いきなり怒鳴れて少し驚いて縮こまったアリスを背中に隠して暁斗は言った。
「人手は必要だろ?それに、挨拶の前にそんな大声出したらアリスが怖がるだろ?」
「誰のせいですか!まったく・・・すみません。えっと・・・アリスさんですか?」
「は、はい・・・」
恐る恐る暁斗の背中から顔を出すアリスにクラウドはなるべく優しい口調を意識して言った。
「うちの暁斗があなたに迷惑をかけたようでーーーすみません」
「そ、そんな!むしろ、暁斗さんには私が助けられてーーー」
「いいえ。この男はとことん獣人が大好き過ぎてあなた方に確実に迷惑をかけます。セクハラされたら言ってください。私がしばきますので」
「そ、そんな・・・私は別に・・・」
チラリと暁斗を見てから顔を赤くするアリス。そんなアリスの様子を見て、ため息をついてからクラウドは暁斗を見て言った。
「とにかく・・・買ったのなら、最後まで責任はとってくださいよ?」
「当たり前だよ。それに、アリスくらい可愛いならうちの看板娘にピッタリだよ」
「まあ、容姿は確かにいいですが・・・あなたはここを獣人主義者の巣窟にしたいのですか?」
獣人主義者ーーーそれは、この獣人が差別される世界で、獣人こそが神からの御使いーーー天使のような存在だと主張する過激な連中のことで、この世界ではテロリストと同じ扱いになる。
「連中が来たら追い返すさ。流石に彼らのお仲間になるわけにもいかないからな」
「まあ、勇者のあなたが獣人主義者になったらそれこそ、国をあげての問題になりますからね」
「えっ・・・!?」
その言葉にアリスは思わず声をあげてしまった。暁斗は口止めを忘れていたことに若干後悔しながらもアリスからの反応を待った。
「あの・・・暁斗さんは、勇者様なのですか?」
「おや?知らなかったのですか?この男はこんなんでも一応勇者様なんですよ」
「元だよ。すでに俺は引退を決めたからね」
「そんな簡単に引退できないのはあなたが一番わかってるでしょうに・・・」
なんとなく申し訳なく思いつつも暁斗は言い訳のように言った。
「その・・・勇者って言ってもただの人間だからな。いつかは言おうと思ってたんだけど・・・怒った?」
チラリと視線をアリスに向けるとーーー彼女は涙を流していた。
「あ、アリス・・・?」
「怒るなんて・・・むしろお礼を言わせてください・・・」
「お礼?」
「お爺ちゃんと私を助けてくれたことについてです・・・本当にありがとうございます・・・」
アリスは暁斗が勇者という事実に驚いてはいたが・・・それは、こんな形で祖父の恩人に会えたことについてだった。
「ずっと・・・勇者様を探していました。お爺ちゃんが誇らしそうに語ってたのを覚えていたので・・・」
「大袈裟な・・・」
「大袈裟ではありません!お爺ちゃんは・・・自分達みたいな半端者を助けてくれて、見返りを求めない聖人よりも聖人な人だって言ってました!私も・・・こうして助けて貰えたことでそう思います・・・」
アリスがそう言うと、暁斗は頭をかいてから言った。
「俺は・・・むしろ、君や君のお爺ちゃんには助けられっぱなしだよ」
「えっ・・・どういう・・・」
「なんでもないよ。まあ、とにかくーーーこの話はおしまい。で、アリスをここで雇っても問題ないだろ?」
黙って聞いていたクラウドにそう言った暁斗。照れ隠しが若干あるとわかって、ニヤニヤして
いたクラウドはため息をついて言った。
「あなたの望むようにしてください。私も妻もあなたの味方ですから・・・」
「ありがとう・・・アリスもここで働くってことでいいよな?」
その暁斗の言葉にアリスは頷いて言った。
「はい・・・私を暁斗さんのお側においてください」
「うん。じゃあ、とりあえず中に入ろうか。クラウド、クリスは?」
「妻なら後で来ますよ」
「どなたなのですか?」
疑問符を浮かべるアリスに暁斗はクラウドを指差して言った。
「この男の嫁さんだよ」
「お嫁さん・・・クラウドさんは結婚しているのですか?」
「まあ一応・・・」
照れ臭そうにそう言うクラウド。鉄仮面なような印象を持っていたアリスはその表情になんとなく意外に思いつつ恐る恐る暁斗に視線を向けて聞いていた。
「あの・・・暁斗さんは・・・」
「ん?俺がどうしたの?」
「その・・・クラウドさんのようにお相手はいるのですか?」
どういう意味があるのか暁斗にはわからなかったが・・・特に隠す必要もないので答えた。
「いないよ」
「そうですか・・・」
どこか安心したようにほっとしているアリスに首を傾げていると、クラウドは言った。
「婚約の話なら来てましたよね?」
「・・・ミリーのことなら断ったけど?」
「あら・・・私はまだ諦めてませんわよ?」
そんなことを言ったのは無論アリスではない。声が聞こえてきたのはクラウドの後ろからでーーーそこに見えた人物に暁斗は驚いて名前を呟いていた。
「ミリー・・・」
「お久しぶりです暁斗様」
そう言って微笑んだのは、シンフォニー王国の
第二王女である、ミリー・シンフォニー・・・青い髪と清んだ瞳の美少女であるミリーは笑顔を浮かべてそこにいたのだった。
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