37 / 79
一日の終わりに嫌な顔を見るとは・・・
しおりを挟む
「では・・・また、明日」
夕食が終わり・・・お茶を楽しんでから俺は現在エミリーを部屋まで送りにきていた。
本当ならもっと一緒にいたいが・・・残っている仕事を片すのと、時間的な問題で仕方なく、でもなるべくゆっくり安全に部屋まで送ってきた。
端的に言えば、デート気分でゆっくりと送り届けにきました。
「あぁ・・・おやすみエミリー」
「はい・・・」
そうはいいつつもなかなかその場から動けない俺と・・・エミリーも名残惜しいと感じているのかその場で沈黙してしまっていた。
ふむ・・・
「エミリーちょっとこっちに・・・」
「はい?」
言われた通りに素直に近づいてくるエミリーの手を引き寄せそのまま軽く額にキスをした。
「!?あ、アルト様・・・」
「また明日・・・おやすみエミリー」
「は、はぃ・・・」
最後に真っ赤なエミリーの顔を見れて俺は満足してエミリーが部屋に入ってからその場を後にした。
これで一日が終われれば良かったんだけど・・・
「・・・・・・そろそろ出てきたらどうだ?」
しばらく歩いてから俺は後ろにそう問いかけてみた。
別に気配が読めるとはではないが・・・なんとなく接触がありそうな気がしたからだ。
その人物はしばらくしてから柱の影から姿を表して・・・くすりと笑った。
「気づかれていたんだ」
「ああ。それで?満足の行く結果にはなったのか?ヒロイン様?」
「やっぱり・・・あなたも記憶持ちだったんだ。ええ、概ねあなたのお陰よヒーローさん?」
互いに含みのある言い方をするが・・・なんてことはない、互いに原作の知識をもつ者同士の会話だ。
「それで・・・なんか用があるのか?俺は急がしいんだ。手短に頼む」
「へぇー・・・やっぱりエミリーさんが絡んでないと途端にやる気なくなるんだね。まあ、まさかヒーローとヒロイン・・・両方に記憶持ちが付くとは思わなかったけどね」
「皮肉にも原作とは違う展開だしな」
本来のメインヒロインとヒーローが一緒なのにその場にあるのはピンクなオーラではなく、どこまでも平行な・・・敵対はしないが交わることがない無関心の色しかお互いになかった。
「まあね。悪役令嬢を溺愛するメインヒーローとモブを溺愛するヒロイン・・・皮肉かもしれないわね」
「モブ・・・やっぱりお前は俺にごみ掃除をさせたのか?」
「あら?気づいてやってくれたんでしょ?」
ジェシカのその言葉に俺は顔をしかめる。
「勘違いするな。俺はエミリーの安全のためにごみ掃除をしただけだ。お前のためじゃねぇよ」
「アルト様こわーい」
馬鹿にしたように笑わうジェシカ・・・こいつは素の性格も苛つくな。
一頻り笑ってからジェシカは「まあ、でも・・・」と表情を変えていった。
「お陰で邪魔な取り巻きは排除出来たわ。そこは素直にお礼を言ってあげる」
「・・・・・・お前の目的はどうでもいいんだよ。二度とエミリーと俺に関わらなければどうでもいい」
「同じ記憶持ちなのに冷たいわね・・・まあ、確かに好きな相手を危険にさらされたらそうなるかしから?」
「・・・さっさと用件を言え」
俺の苛立ちに対してジェシカはくすりと笑ってから言った。
「用件は2つ。ひとつはお別れを言いに来たのよ。私、もう学園から去って、彼の家に入るから」
「・・・セルゼ・マルート伯爵子息のことか?」
「やっぱり知っていたんだ。そうよ。彼の実家で色々勉強するのよ」
「あっそ・・・」
正直、ヒロインのことはどうでもいいが・・・気になったことがひとつある。
「なんでお前は、取り巻きを一度形成してから俺にばらされた?結構前から記憶あったんだろ?」
ヒロインの経歴をジークフリードに調べさせてみると、どうやら幼い頃に頭を打ってから急に色々と利発になったという情報があったからこその疑問だ。
それこそ取り巻き形成前になんとか出来たはずだろうに・・・
その俺の疑問にヒロインは首を竦めて言った。
「まあ、単純に流れが変わると予測が出来なくなるからよ。元来のストーリー通りに動けば未来は同じだけど、変に変えると予想外の連続になって困るからね。あとは・・・時間稼ぎのためかな?」
「時間稼ぎ?」
「セルゼの家の説得のための時間よ。彼も記憶持ちなんだけど・・・家がなかなか認めてくれなくてね。仕方なく取り巻き作ってあとは学園を卒業したら自然解体する予定だったんだけど・・・運よく、あなたも記憶持ちだったから楽に終わったわ」
「俺のエミリーへの態度だけでわかったのか?」
「まあ、普通にストーリー知ってるからだろうとは思ったわ。だって、イベントの時にいないんだもん。しかも社交パーティーであれだけ熱烈に婚約者口説いてればわかるわよ」
やっぱり・・・ジェシカはあの社交パーティーでの出来事でそういう方針に行ったのか。
「まあ、私のことはいいのよ。2つ目は警告よ。続編には気を付けなさい」
夕食が終わり・・・お茶を楽しんでから俺は現在エミリーを部屋まで送りにきていた。
本当ならもっと一緒にいたいが・・・残っている仕事を片すのと、時間的な問題で仕方なく、でもなるべくゆっくり安全に部屋まで送ってきた。
端的に言えば、デート気分でゆっくりと送り届けにきました。
「あぁ・・・おやすみエミリー」
「はい・・・」
そうはいいつつもなかなかその場から動けない俺と・・・エミリーも名残惜しいと感じているのかその場で沈黙してしまっていた。
ふむ・・・
「エミリーちょっとこっちに・・・」
「はい?」
言われた通りに素直に近づいてくるエミリーの手を引き寄せそのまま軽く額にキスをした。
「!?あ、アルト様・・・」
「また明日・・・おやすみエミリー」
「は、はぃ・・・」
最後に真っ赤なエミリーの顔を見れて俺は満足してエミリーが部屋に入ってからその場を後にした。
これで一日が終われれば良かったんだけど・・・
「・・・・・・そろそろ出てきたらどうだ?」
しばらく歩いてから俺は後ろにそう問いかけてみた。
別に気配が読めるとはではないが・・・なんとなく接触がありそうな気がしたからだ。
その人物はしばらくしてから柱の影から姿を表して・・・くすりと笑った。
「気づかれていたんだ」
「ああ。それで?満足の行く結果にはなったのか?ヒロイン様?」
「やっぱり・・・あなたも記憶持ちだったんだ。ええ、概ねあなたのお陰よヒーローさん?」
互いに含みのある言い方をするが・・・なんてことはない、互いに原作の知識をもつ者同士の会話だ。
「それで・・・なんか用があるのか?俺は急がしいんだ。手短に頼む」
「へぇー・・・やっぱりエミリーさんが絡んでないと途端にやる気なくなるんだね。まあ、まさかヒーローとヒロイン・・・両方に記憶持ちが付くとは思わなかったけどね」
「皮肉にも原作とは違う展開だしな」
本来のメインヒロインとヒーローが一緒なのにその場にあるのはピンクなオーラではなく、どこまでも平行な・・・敵対はしないが交わることがない無関心の色しかお互いになかった。
「まあね。悪役令嬢を溺愛するメインヒーローとモブを溺愛するヒロイン・・・皮肉かもしれないわね」
「モブ・・・やっぱりお前は俺にごみ掃除をさせたのか?」
「あら?気づいてやってくれたんでしょ?」
ジェシカのその言葉に俺は顔をしかめる。
「勘違いするな。俺はエミリーの安全のためにごみ掃除をしただけだ。お前のためじゃねぇよ」
「アルト様こわーい」
馬鹿にしたように笑わうジェシカ・・・こいつは素の性格も苛つくな。
一頻り笑ってからジェシカは「まあ、でも・・・」と表情を変えていった。
「お陰で邪魔な取り巻きは排除出来たわ。そこは素直にお礼を言ってあげる」
「・・・・・・お前の目的はどうでもいいんだよ。二度とエミリーと俺に関わらなければどうでもいい」
「同じ記憶持ちなのに冷たいわね・・・まあ、確かに好きな相手を危険にさらされたらそうなるかしから?」
「・・・さっさと用件を言え」
俺の苛立ちに対してジェシカはくすりと笑ってから言った。
「用件は2つ。ひとつはお別れを言いに来たのよ。私、もう学園から去って、彼の家に入るから」
「・・・セルゼ・マルート伯爵子息のことか?」
「やっぱり知っていたんだ。そうよ。彼の実家で色々勉強するのよ」
「あっそ・・・」
正直、ヒロインのことはどうでもいいが・・・気になったことがひとつある。
「なんでお前は、取り巻きを一度形成してから俺にばらされた?結構前から記憶あったんだろ?」
ヒロインの経歴をジークフリードに調べさせてみると、どうやら幼い頃に頭を打ってから急に色々と利発になったという情報があったからこその疑問だ。
それこそ取り巻き形成前になんとか出来たはずだろうに・・・
その俺の疑問にヒロインは首を竦めて言った。
「まあ、単純に流れが変わると予測が出来なくなるからよ。元来のストーリー通りに動けば未来は同じだけど、変に変えると予想外の連続になって困るからね。あとは・・・時間稼ぎのためかな?」
「時間稼ぎ?」
「セルゼの家の説得のための時間よ。彼も記憶持ちなんだけど・・・家がなかなか認めてくれなくてね。仕方なく取り巻き作ってあとは学園を卒業したら自然解体する予定だったんだけど・・・運よく、あなたも記憶持ちだったから楽に終わったわ」
「俺のエミリーへの態度だけでわかったのか?」
「まあ、普通にストーリー知ってるからだろうとは思ったわ。だって、イベントの時にいないんだもん。しかも社交パーティーであれだけ熱烈に婚約者口説いてればわかるわよ」
やっぱり・・・ジェシカはあの社交パーティーでの出来事でそういう方針に行ったのか。
「まあ、私のことはいいのよ。2つ目は警告よ。続編には気を付けなさい」
0
お気に入りに追加
3,206
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
悪役令嬢の居場所。
葉叶
恋愛
私だけの居場所。
他の誰かの代わりとかじゃなく
私だけの場所
私はそんな居場所が欲しい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。
※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。
※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。
※完結しました!番外編執筆中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる