悪役令嬢は溺愛される

yui

文字の大きさ
上 下
15 / 79

愛おしい温もりを・・・

しおりを挟む
目覚めると俺は自室のベットに寝かされていた。
起き上がろうとすると、なにやら左手を誰かに握られているのに気づきそちらをみた。
そこには無防備に俺の前で寝ている、愛しの天使・・・エミリーが俺の手を握りながら寝ていた。

「エミリー・・・」

俺はエミリーの寝顔をみて空いてる右手で寝ている彼女の頬に触れる。

「う・・ん・・・」

くすぐったそうに体を揺するエミリー。
俺はそれをみて内心で悶えていた。
ヤバイ!寝てるエミリーの無防備さが可愛いすぎる!
エミリーの寝顔はいつもの周りにみせてるような強気な表情からかけ離れたなんとも無防備で愛らしい、子どものような可愛いさがあった。

しばらくそうして遊んでいると、部屋のドアが開いてジークフリードが姿を表した。

「おや?お目覚めですか?アルト様。お体の具合はいかがでしょうか?」
「ああ。問題ない。」
「それはなにより。」

にっこりと頬笑むイケメン執事。

「それよりも、状況を教えてくれるか?ついでに私はどのくらい寝ていた?」
「まず、アルト様が倒れてからかれこれ半日くらいです。夜会はこんな状況なので欠席にしていただきました。」

半日か・・・
まあ、夜会イベントはスルーできたと考えてよしか? 

「それから、例の毒物を盛った侍女ですが・・・どうやら、キャロライン家からの派遣ではなく、もぐり・・・成り済ましによるもののようです。」
「確か?」
「キャロライン家の侍女のリストには載ってませんでした。それに、エミリー様のところの体調を崩したという侍女なのですが・・・空き部屋に拘束されているのを発見されました。」

やはりか・・・

「侍女は無事だったか?」
「はい。多少の怪我はありましたが、命に別状はありません。あと、これは未確定なのですが・・・」

そこでジークフリードは声を落とすと俺の近くまできた。

「昨日、スリザン様と例の侍女が密会していたとの報告があります。今、侍女本人には少し強めに話を聞いていますが・・・」
「そうか・・・」

予想通りの報告に俺は少し目を閉じる。
キングの狙いはやっぱり、エミリーだったのだ。
昨日の接触は俺を油断させてエミリーへの注意を下げるため。
確かに、あのタイミングでエミリーにつっかかっていったら、警戒されるから、俺に意識を向けるのは当たり前なのかもしれないが・・・
何故夜会の前は油断してると知っていた?
考えすぎかもしれないが、用心はしておくか。

「わかった。引き続き頼む。ジークフリード。」
「畏まりました。」
「それから聴きたいんだが・・・エミリーはもしかしてずっと付いててくれたのか?」

ある程度予想は出来てるが一応聞いておかねば。
俺の問いにジークフリードはこくりと頷いた。

「アルト様が倒れてから心配そうにずっと付き添っていらっしゃいました。見ているこちらが辛いくらいにご自分を責めて・・・そして、それ以上にアルト様のご無事を祈っておられました。」
「そうか・・・心配かけたんだな・・・」

エミリーの頭を撫でる。
やっぱり、エミリーはずっと側にいてくれたんだ。
もし、俺が気付くのが少しでも遅くなっていたら・・・
想像するだけで恐ろしい。
それと、同時に頭にきた。
俺のエミリーを毒殺しようとした犯人に・・・!

「ジークフリード。」
「承知しました。」

俺の意思をわかっているのかのようにジークフリードはその言葉で部屋から出ていった。

さて、思い知らせてやるかな。
誰の女に手をだそうとしたのかを・・・!

そんな風に思っているとエミリーがうっすらと目を開けた。
どうやら起きたようだ。

「おはよう。エミリー。」

俺は心の怒りを抑えるといつものように優しく微笑んでエミリーの頭を撫でた。
エミリーは寝起きでぼーっとしていたが、次第に意識がはっきりしてきたのか、俺をみて驚いたように立ち上がった。

「あ、アルト様!目が覚めたのですね!よかった・・・」
「心配かけたね。大丈夫だよ。」

俺のことを本気で心配していたのだろう。
エミリーは心からほっとしたようにそういった。
それをみて、俺は本当に守れてよかったと心から思ってしまう。

「あの、すみませんでした!私のせいで、アルト様が・・・」
「はい。待った。」

やはり、自分のせいだと思っているエミリーに俺は待ったをかける。

「今回のはエミリーは何にも悪くない。だから、謝ったりはしないでよ。」
「ですが・・・」
「エミリーは自分のせいで俺が倒れたと思ってるみたいだけど違うよ。これは、俺がしたかったこと・・・俺にしかできないことだからね。」
「したかったこと・・・?」
「うん。エミリーを守ること。」

その言葉にエミリーは一瞬目を見張ったあとに瞳から涙をこぼした。

「わたし・・・怖かったんです・・・アルト様にもしものことがあったら・・・わたし・・・わたし・・・」
「大丈夫だよ。エミリー。」

俺はエミリーの涙を親指で拭うと、左腕でエミリーを自分へと抱き寄せた。

「俺は死なない。エミリーと一緒に生きたいからね。だから・・・信じてほしい。俺のこと・・・」
「あ・・あると・・さ・・まぁ・・・!」

エミリーは俺の腕のなかでこどものように泣いた。
そんなエミリーを俺はあやすようにゆっくりと抱き締めてあげた。

エミリーから伝わってくる熱を感じながら俺はエミリーが落ち着くまでずっと抱き締めた。

守れた温もりを感じるために・・・
愛しいエミリーの温もりを離さないように。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています

平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。 自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

処理中です...