悪役令嬢は溺愛される

yui

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本人不在ならノロケればいいじゃない

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部屋に入ると食堂にはすでに父上と母上、それにバスが座っており、その視線がこちらに注がれて・・・固まる。

「遅くなりました。お待たせしてすみません」
「・・・・・(ぺこり)」

俺に合わせるようにフォルテも軽く頭を下げた。本当に飲み込みの早い子だと感心していた俺だったが、部屋の雰囲気が少し固いような気がして視線を父上と母上に向けると、父上は固まっており、母上はどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。

そんな空気のなかで、比較的冷静だったバスが俺とフォルテの繋いだ手を見ながら聞いてきた。

「兄様・・・フォルテと一緒に来たのですか?」
「ん?ああ、途中で会ってな」
「あの・・・その手は・・・?」
「手?ああ、これか」

俺は繋いでいた手を離すとそのままフォルテの頭に乗せて撫でながら言った。

「なんとなく流れでな。変な意味は微塵もないぞ。私はエミリーという大切な婚約者・・・いや、妻がいるからな」

誤解があればいけないと俺はそう堂々と言い切った。フォルテに対して家族としての愛情はあるが、エミリーに抱いているのとは別なので俺はきっぱりと告げる。

まあ、そんなことしなくても聡明な我が家族なら特にそんな誤解はしないだろうが・・・俺がエミリーのことをどれだけ愛しているかを本人がいないところでも明言しておくのは決してマイナスではないのでそう言った。

いやー、しかし、こういう台詞も前なら多少のためらいがあったはずなのに、エミリーに甘く囁いたり、口説いたりしているうちに何の抵抗もなく出てくるようになったよ。あ、でもエミリーに関することだけで、まったく見ず知らずの他人に同じ台詞をその他人のために言えと言われたら当然拒否するけどね。いや、だってエミリー以外に甘い言葉を使う意味がないよね。

俺の中でエミリーは唯一無二の存在だからね。そこは何があろうと揺るがない。

そんな俺の宣言に父上はますます驚きの表情を浮かべるが、母上は「ふふふ・・・」と面白そうに笑っていた。

そして、バスはといえば・・・

「兄様・・・凄いです!」

何故か瞳を輝かせていた。
え?何が?

「自分の好きな人のために真っ直ぐな兄様格好いいです!僕も兄様みたいに誰かを本気で愛してみたいです!」

俺の姿がバスさんにはそう写ったらしい。
なんとも無垢な若人よ・・・しかし、好きな人を愛するのは決して悪いことではないので、俺は先駆者として軽くアドバイスをしておくことにした。

「バスにもいつか自分の全てをとしてでも守りたい人が見つかるさ。いや、もしかしたらバスの場合は私や母上のような性格をした女から迫られるかもしれないな」
「まあ・・・バスはどちらかといえばそうかもしれないわね」

母上もなんとなく思っていたのか苦笑気味にそう言った。
キョトンとしているバスには申し訳ないが、俺や母上みたいな溺愛する側ではなく、される側にまわるようなイメージが強いというのが本音ではある。

母上に溺愛されてる父上みたいな、俺に溺愛?されているエミリーみたいな感じかな?

ちなみに溺愛?にしたのは俺としてはまだまだエミリーを愛で足りないからだ。余計なイベントはさっさと終わらせて早くエミリーを愛でたい!



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