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111 本物と影武者候補

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「まあ、本当にローリエにそっくりね」

ナナミを侍女にしたので、最初にそう説明すると驚きながらナナミを見るサーシャ。やはり母親からしてもそっくりに見えるのだと思っていると、ローリエが少しだけ複雑そうに言った。

「お父様は私では満足できないのですか?」
「そんなわけないよ」

物凄く人聞きの悪い言葉だが即答する。意味合い的に誤解されても仕方ないが、そんな邪推をする者はこの場にはいないので俺はきっぱりと言う。

「ローリエにそっくりなのはたまたまだよ。それにいざと言うときの影武者候補でもある」
「影武者?」
「簡単に言えば、ローリエの代わりに式典とかに出れるような代役だよ。もちろんローリエ本人が出るのが一番だけど、例えばどうしても外せない夜会でローリエが体調を崩した時に出て貰ったりとかね」

まあ、影武者というのは悲惨な末路しか思い付かないが、流石にそんな危ないことは事前に俺が排除するので安全だ。影武者というのはあくまで方便。二人には屋敷の襲撃に俺への暗殺のことは黙っているので、そういう理由付けが必要なのだ。

「それにローリエはこの世に一人の可愛い娘だ。大切に思っているよ」
「お父様・・・はい!」

嬉しそうに笑うローリエとは対称的にサーシャが少しだけ不機嫌になるので、今度はそちらのフォローに回る。

「もちろんサーシャだってこの世に一人の私の可愛い嫁だ。例え同じ顔の人間がいても間違えたりはしない。絶対にだ」

まあ、サーシャそっくりの女というのは少しだけ悩ましいが、偽物であることに変わりはないので、すぐに分かる。そもそもサーシャというのは既に魂レベルで把握できているので間違えようがない。例え天国に召される時にも必ず見つけられるだろう。そんなことを言うとサーシャは少しだけ嬉しそうにしながら言った。

「わ、私も旦那様のことは間違えません」
「私もお父様なら絶対に間違えません!」
「そうか。嬉しいよ」

そもそも、カリスさんに似てる男がこの世界に他にいるのだろうか?ドッペルゲンガーでもない限りはよく似たオッサン程度が関の山だろうが、いるなら場合によっては排除しなくては。サーシャを魅了するのは俺だけで十分だしね。そんな俺達のやり取りに呆然としていたナナミはしばらくしてからこういうノリなのだろうと、理解したのか苦笑していた。

幼いながらもこの適応力は凄いと思いながらも、この様子なら本当に影武者としては適任かもしれないと思うのだった。まあ、婚約者のセリュー様が気付くかはわからないけど。そもそもセリュー様の方にも何やら新しいフラグが立ってるので、そちらをどう扱うのかによって対応は違ってくるだろう。





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