上 下
102 / 141

94 婚約の報告

しおりを挟む
「婚約者候補ですか?」

キョトンとするサーシャに俺は頷いて言った。

「ローリエにはセリュー様の婚約者候補になってもらう」
「あの・・・それって、正式には婚約者ではないのですか?」
「ああ、あくまで候補。表向きは婚約者として振る舞ってもらうが基本的には今までと関係性が大きく変わることはない」
「そんな前代未聞の出来事によく陛下が頷きましたね」

正確には頷かせたのだがそんな細かいことは言わない。

「まあ、向こうにも色々あるのだろう。私としてはローリエの婚約の見定めの意味もあっての提案だったのだけれどね」
「ふふ、旦那様はローリエに過保護ですね」
「もちろんだよ。ただ、ローリエがセリュー様を好きになったならそれも認める度量はあるよ」

まあ、父親としては歯ぎしりするほどに複雑ではあるけど、ローリエが好きになったのなら仕方ない。子供の幸せを自分の都合でねじ曲げるのは本意ではない。こうして時間稼ぎをしても乙女ゲームと同様にローリエはセリュー様を好きになってしまうかもしれないが、その場合にローリエを守るのは俺の役目だ。

「ちなみに隣で聞いてた王妃様は終始笑顔だったよ」
「王妃様らしいですね」
「ああ、面白いと言っていたよ。ただ王妃様からも提案を受けてね」
「提案ですか?」
「ああ、この婚約者候補という複雑な関係は公にはせずに公にはローリエには正式に婚約者になってもらったという風に吹聴することを提案された」

まあ、もともとそのつもりではあったので、構わないけどね。王族としても外堀を埋めてローリエを抑えておきたいのだろう。

「あとは、ローリエに納得して頑張ってもらうしかないが・・・」
「大丈夫ですよ、旦那様」

そう笑ってからサーシャは自分のお腹に手を当ててくすりと笑って言った。

「あの子は私と旦那様の子供です。きっとどんなことでも受け入れて前に進む強さを持ってます」
「そうかもね・・・きっと、サーシャの優しい心も持ってるからね」
「ええ、旦那様の輝くばかりの光も持ってると思います」

そう笑ってから俺は先ほどのサーシャのモーションが少しだけ頭のすみに引っ掛かっていた。まるで新しい命を予期しているような母性的な微笑み、まさかサーシャ・・・

「どうかなさいましたか?」
「い、いや。なんでもない」

いや、まさかそんな。確かにここ最近溜まってた分ハッスルしつつもサーシャに気をつかってはいたが・・・いや、思い当たることが多すぎる。これはまた新しい家族が増えるのも時間の問題かもしれないと思いつつ、その分サーシャを愛でる時間を増やそうと決意するのだった。まあ、ローリエも婚約で不安になるかもしれないからちゃんとケアしないとね。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。

白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。 筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。 ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。 王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています

平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。 自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...