上 下
42 / 141

40 見送り

しおりを挟む
「おばあさま、またきてくれますか?」

少し寂しそうに母上にそう言う我が愛娘のローリエ。今日は母上と父上が屋敷に戻る日だ。サーシャは大事をとって部屋で休んでいるので見送りは俺とローリエの役目だ。
見ているこっちが苦しくなるような寂しそうな表情のローリエに母上は笑顔で言った。

「もちろんよ。必ずくるからねローリエ」
「はい!」

祖母と孫の微笑ましい光景だが・・・少し気にくわない!何が気にくわないって母上が俺に見せつけるようにローリエとイチャイチャしているのがなんとなく気にくわない!いや、ローリエが幸せならいいんだけど、母上はたまにわざと俺に見せつけるようにローリエやサーシャとイチャイチャするからね・・・ライバルだよライバル。

まあもちろんローリエやサーシャの前で親子喧嘩などは一切するつもりはない。冗談でもその手の行為を二人に見せるのは嫌だからね。サーシャに関してはこれから先は俺が守るからいいとしても、ローリエにも出来る限りのサポートはするつもりだ。可愛い娘だしね。とはいえ、もちろんこの先そういう人間の汚い部分を知ることがローリエにあるだろうけど・・・ローリエはもう十分ドン底を味わったのだ。これからは幸せであるべきだと俺は思う。

まあ、それはさておき・・・

「ローリエ。お祖父さまにもご挨拶しておきなさい」

母上の後ろで若干苦笑いしている父上が先程から気になって仕方ない。寂しそうとかではなく、ローリエを可愛がる母上に自分の姿を重ねているようなそんな感じだ。
ローリエは俺の言葉に頷いてから父上にも笑顔で言った。

「おじいさまもまたきてください」
「・・・ああ。ありがとうローリエ」

どこかまだぎこちないが・・・まあ、普通はこれくらいの距離感があっても仕方ないだろう。むしろ母上が異常なのだ。
そんなことは口にはせずに父上と話すローリエを微笑ましく思いつつ俺は母上に言った。

「母上。ではサーシャの出産前は色々とお願いします」
「ええ。にしてもあなたからサーシャの出産のサポートを頼みにくるなんてね」

意地悪な笑顔でそう言う母上。そう、俺はサーシャの出産の前の時期にこちらに来てサーシャのサポートをするように母上に頼んでおいたのだ。俺が色々とサポート出来ればいいが・・・ぶっちゃけ俺一人でできることは限界があるので母上にも助っ人を頼んだのだ。

出産くらいで大袈裟なと思う人がいるかもしれないけど、出産ってかなり大変なことなんだよ?人一人が産まれるには母親はえらい大変な思いをすることになるから、特に精神的にサポートする必要があるのだ。

男にできることは仕事をしつつ時間をみてサーシャに顔を見せ、愛娘の面倒をみることくらいだからね。まあ、ローリエの面倒と言ってもローリエは賢くて本気で手を焼くことがないからむしろ構いたくなるんだけど・・・それで反抗期とかにうざがられたらかなりショックだからやはり今のうちに愛でるだけ愛でるべきだろうか?

「まあ、私一人ではもしもの時にサーシャとローリエをフォローできませんからね」
「昔なら自分一人でやろうとしたのに随分と変わったわね」
「まあ、私も真実の愛に目覚めたからですね」
「あら?私と旦那様の愛情には勝てないわよ」
「愛は時間ではなく想いの濃さによりますので」

ローリエに気付かれない程度のバトル。静かに俺と母上はお互いの愛情についてバトルしている隣で苦笑気味の父上といつでも天使なローリエがほんわか会話していたのは・・・説明不要であろう。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。

白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。 筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。 ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。 王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています

平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。 自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。

処理中です...