上 下
12 / 141

11 ご褒美はケーキ

しおりを挟む
「ただいま」
「おかえりなさいませ。旦那様。ローリエ」

パーティーを終えて、ローリエと共に屋敷に戻ると出迎えてくれたのは最愛の妻のサーシャだった。可愛い奥さんを見て俺はだらしなく緩みそうになる頬を押さえて紳士スマイルで言った。

「いつも出迎えありがとう。サーシャを見ると私も元気になれるよ」
「・・・と、当然のことです。私は、旦那様の妻なのですから」

照れつつも嬉しそうにそう言うサーシャ。やはり俺の嫁は可愛い!と、そんなことを考えていると、ローリエが俺の服の袖をひっぱってから控えめに言った。

「おとうさま・・・あ、あの・・・」
「わかってる。お菓子ならこれから用意するから少し待っててくれるか?」

そう言うとパアッと表情を明るくするローリエ・・・単純で可愛いが、こんな天使なような娘をいつか他の男にやらねばならいないとなると、複雑な気持ちだ・・・反抗期の時の対処も考えないとダメかな?

と、そんなことより・・・

「サーシャ。これからお菓子を作るつもりなんだが・・・よければ皆でお茶にしよう」
「これからですか?お疲れでは・・・?」

心配そうにそう言ってくるサーシャ。優しい嫁にほっこりとしつつも俺は笑顔で言った。

「可愛い嫁と娘のためならなんてことないさ。二人の笑顔が私にとっては何よりの宝だからね」

渋いオッサンのできる限りのイケメンスマイルにサーシャは顔を赤くして『嬉しいけど、娘の前だから我慢!』というような様子を見せるものだから、今すぐ抱き締めて部屋にお持ち帰りして食べたい衝動を抑えるのに必死になった。

耐えろーーーせめて夜まで待て俺よ・・・。そんな邪念を消し去ろうとする俺と、恥ずかしそうなサーシャを見て無垢に首を傾げるローリエはまさに天使としか例えようがなかったのだった。



「さてと・・・」

邪念をなんとか抑えてから俺は厨房に立っていた。二人は今頃くつろいでいるだろうから、早めに作るつもりだが・・・

「とりあえず、こないだ試したあれ・・を作ってみるか」

俺は材料を用意すると早速調理にかかった。
とはいえ、対して時間がかかるわけでもないので、用意した材料を混ぜてから、オーブンで加熱するだけで済む。
まあ、あとは余熱をとってから盛り付けて完成ーーーほとんど説明する手間も必要はない。強いて言えば材料にもっといいものがあればいいのだが・・・こればかりは仕方ないので、用意できる最高の材料で試行錯誤するしかない。

お菓子を作る渋いオッサン(しかも公爵)はかなりシュールかもしれないが・・・二人の愛しい人のためならどんなことでも出来る覚悟がある俺からすれば些細な問題だ。

最近では、調理場への出入りが多くなり、屋敷の料理人達ともすっかり仲良くなってしまったが・・・まあ、二人が少しでも美味しいと笑ってくれるなら頑張れる。

「おや・・・帰ってきて早速料理ですか?」
「ジークか」

そうして、二人のことを考えながら調理を終えて一息ついていると、執事のジークが調理場に顔を出した。

最初の頃はここに俺がいることに対して大層驚いていたジークだったが・・・すっかり慣れたのか最近は少し物足りない反応になってきてしまった。まあ、別にオッサンの反応を楽しむ趣味はないが・・・やはり、意図してないサプライズは人を驚かすにはもってこいだから、ついつい少年心が反応してしまうのは仕方ないだろう。

「カリス様にお話があって来たのですが・・・今大丈夫ですか?」
「ああ。あとは盛り付けだけだが・・・どうかしたのか?」
「実はですね・・・セレナ様から、お茶会の招待状が先程届きました」
「セレナ様から?」
「はい。こちらです」

そう言って渡されたのは間違いなく王家公認の印が押された質のいい招待状ーーーそこには間違いなくローリエ宛のお茶会への参加を促す内容が書かれていた。ふむ・・・

「どうなされますか?」
「とりあえず、ローリエには私から話をしておこう」

とはいえ、流石に第二王女からの直々の招待状を断る選択肢はほとんどないが・・・ローリエがどうしても嫌なら俺の力の限りを尽くして断る所存ではあった。娘と妻のためなら俺はなんでも出来るからね!



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」 きっかけは幼い頃の出来事だった。 ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。 その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。 あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。 そしてローズという自分の名前。 よりにもよって悪役令嬢に転生していた。 攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。 婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。 するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる

レラン
恋愛
 前世でプレーした。乙女ゲーム内に召喚転生させられた主人公。  すでに危機的状況の悪役令嬢に転生してしまい、ゲームに関わらないようにしていると、まさかのチート発覚!?  私は平穏な暮らしを求めただけだっだのに‥‥ふふふ‥‥‥チートがあるなら最大限活用してやる!!  そう意気込みのやりたい放題の、元悪役令嬢の日常。 ⚠︎語彙力崩壊してます⚠︎ ⚠︎誤字多発です⚠︎ ⚠︎話の内容が薄っぺらです⚠︎ ⚠︎ざまぁは、結構後になってしまいます⚠︎

盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。 思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。 さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。 彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。 そんなの絶対に嫌! というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい! 私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。 ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの? ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ? この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった? なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。 なんか……幼馴染、ヤンデる…………? 「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。

乙女ゲームの世界に転生した!攻略対象興味ないので自分のレベル上げしていたら何故か隠しキャラクターに溺愛されていた

ノアにゃん
恋愛
私、アリスティーネ・スティアート、 侯爵家であるスティアート家の第5子であり第2女です そして転生者、笹壁 愛里寿(ささかべ ありす)です、 はっきり言ってこの乙女ゲーム楽しかった! 乙女ゲームの名は【熱愛!育ててプリンセス!】 約して【熱プリ】 この乙女ゲームは好感度を上げるだけではなく、 最初に自分好みに設定したり、特化魔法を選べたり、 RPGみたいにヒロインのレベルを上げたりできる、 個人的に最高の乙女ゲームだった! ちなみにセーブしても一度死んだらやり直しという悲しい設定も有った、 私は熱プリ世界のモブに転生したのでレベルを上げを堪能しますか! ステータスオープン! あれ?  アイテムボックスオープン! あれれ? メイクボックスオープン! あれれれれ? 私、前世の熱プリのやり込んだステータスや容姿、アイテム、ある‼ テイム以外すべて引き継いでる、 それにレベルMAX超えてもモンスター狩ってた分のステータス上乗せ、 何故か神々に寵愛されし子、王に寵愛されし子、 あ、この世界MAX99じゃないんだ、、、 あ、チートですわ、、、 ※2019/ 7/23 21:00 小説投稿ランキングHOT 8位ありがとうございます‼ ※2019/ 7/24 6:00 小説投稿ランキングHOT 4位ありがとうございます‼ ※2019/ 7/24 12:00 小説投稿ランキングHOT 3位ありがとうございます‼ ※2019/ 7/24 21:00 小説投稿ランキングHOT 2位ありがとうございます‼ お気に入り登録1,000突破ありがとうございます‼ 初めてHOT 10位以内入れた!嬉しい‼

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

処理中です...