24 / 46
閑話 知らぬは公爵
しおりを挟む
「まったく・・・馬鹿馬鹿しい」
面白くなさそうにそう呟く男は貴族ーーーシルベスター王国エルシア公爵家当主のレクタ・エルシア公爵・・・今年で45歳になった彼は届いた書類の中身を確認して心底下らなそうにそう呟いた。
手元の書類にはこないだ新しく国王になった第二王子からの国税の引き上げに関するもので・・・内容は国防のために王国騎士団の装備を新調するというものと、その維持のためだと書いてあるがそれが嘘なことくらい長いことこの世界で生きてきた彼にはわかっていた。
「おそらく、出来損ないの娘の変わりに王妃になった忌々しい愚物のためだろう」
彼の娘・・・いや、すでに公爵家から勘当されているので元娘だったルナの変わりに、彼女を引きずり下ろして王妃になった平民の娘のためにこんな馬鹿げた内容の書類が来たのは言うまでもないだろ。
噂では第二王子・・・現国王がその平民だった娘にかなりいれこんでおり、かなり高価なものを貢いでいるというのを知ってるのですぐにその発想には行き着いた。
「小癪な真似を・・・」
とはいえ、これは国からの命令・・・断れば今のこの国に居場所がなくなることは必須なのでどうにか資金を集めるしかないが・・・出来るのは騒ぎがおこらないギリギリまで領民から税を巻き上げて、あとは非合法な手段でお金を稼ぐことくらいだと、ため息をつく。
あまり税をあげては後々、領民から不満が出てそれが崩壊に繋がりかねないし、彼の私財であれば確かに払える額だが、しかしそんな真似をするほど素直な人間ではない彼が出来るのは非合法な方法だけだろう。それも人身売買や薬などの極めて悪辣なものばかり・・・
「本当に・・・あの間抜けな娘がしくじったせいだ」
彼の怒りの矛先は追放された元娘のルナに向かった。王子が寵愛していた平民の娘をいじめた上に殺人未遂までしたというルナ・・・それが本当だろうと嘘だろうと彼にとってはどうでも良かった。問題はせっかく商品として王子の婚約者として作った娘がそんな悪評をたててしまったということで・・・それが冤罪だということを証明するものが何もないからだ。冤罪なら悲劇のヒロインごっこをさせてからルナを別の王子の婚約者にしようと考えていた彼だったが・・・かなり具体的な証拠が偽物だろうと用意されていたことでそれをすることは困難になった。
要するに・・・彼にとって、娘だったルナは王妃になるための道具であり、手段であったということ。その役目がないなら価値はないというのが彼の意見だ。
つまり彼は娘を娘として最初から見ていなかったのだ。当然のように愛着もなければそこに家族愛などもなくーーーようするに彼にとって王妃になれない娘にはなんの価値もなかったのだ。
妻にしても愛人との会瀬を自分と同じようにしているので当然のようにそんな情があるわけもないので、本当に彼にとって、エルシア公爵家というのは表向きの役職でしかなかったのだ。そこに家族としての情も愛もない・・・ただの仕事のための道具。
だからこそ、彼はいくら気に入らなくても、新しい国王に尻尾をふって忠誠を見せかけだけでもたてないといけない。例えそれが、自分の商品をダメにした女だろうと、新しい国王のご機嫌とりのためなら仕方ないという気持ち。
「ああ・・・本当に小癪な・・・」
「失礼します旦那様」
そんなことを考えていると馴染みの執事が書類を持って入ってきていた。
いつもならその後はただ書類を置いていくだけの執事なのだが・・・しばらく躊躇ったように口をつぐんでから言った。
「旦那様・・・実は、先日我がエルシア公爵家の使用人が二人辞めまして・・・」
「そうか。それで?」
「辞めたのはお嬢様の侍女と乳母をしていた者なのですが・・・」
そんな躊躇いがちな報告にレクタはイラついたように言った。
「使用人がいくら止めようが知ったことじゃない。あと、我が家に娘などいない。いいか」
「は、はい・・・失礼しました」
ペコリと謝ってから執事は部屋を早々に出ていって・・・レクタは舌打ちをした。
彼にとって使用人がいくら辞めようと知ったことではないが・・・元娘の名前が出ると無性に頭にきてしまうのだ。
「あの出来損ないめ・・・まあ、もう死んだだろうから関係ないが・・・」
魔の森に追放されたという報告を受けているので生きてることはないだろうと思った。王妃としての教育しか受けていない出来損ないでは魔物を相手に生き残れるわけがないからだ。
そう考えてから彼は思考を戻してため息をついてから呟いた。
「やはり次はもっと優秀な商品を作らないとな・・・まずは今の国王に取り入ってから、その子供の婚約者用に新しい商品を作って・・・」
彼にとって、家族とはどこまでも商品という考えしかないのでそんな思考になるが・・・後に、先程の報告を聞き逃したことに関して悔いる日が来るかもしれないがーーー今の彼には関係なかった。
崩壊の音色は音を変えて迫るーーー
面白くなさそうにそう呟く男は貴族ーーーシルベスター王国エルシア公爵家当主のレクタ・エルシア公爵・・・今年で45歳になった彼は届いた書類の中身を確認して心底下らなそうにそう呟いた。
手元の書類にはこないだ新しく国王になった第二王子からの国税の引き上げに関するもので・・・内容は国防のために王国騎士団の装備を新調するというものと、その維持のためだと書いてあるがそれが嘘なことくらい長いことこの世界で生きてきた彼にはわかっていた。
「おそらく、出来損ないの娘の変わりに王妃になった忌々しい愚物のためだろう」
彼の娘・・・いや、すでに公爵家から勘当されているので元娘だったルナの変わりに、彼女を引きずり下ろして王妃になった平民の娘のためにこんな馬鹿げた内容の書類が来たのは言うまでもないだろ。
噂では第二王子・・・現国王がその平民だった娘にかなりいれこんでおり、かなり高価なものを貢いでいるというのを知ってるのですぐにその発想には行き着いた。
「小癪な真似を・・・」
とはいえ、これは国からの命令・・・断れば今のこの国に居場所がなくなることは必須なのでどうにか資金を集めるしかないが・・・出来るのは騒ぎがおこらないギリギリまで領民から税を巻き上げて、あとは非合法な手段でお金を稼ぐことくらいだと、ため息をつく。
あまり税をあげては後々、領民から不満が出てそれが崩壊に繋がりかねないし、彼の私財であれば確かに払える額だが、しかしそんな真似をするほど素直な人間ではない彼が出来るのは非合法な方法だけだろう。それも人身売買や薬などの極めて悪辣なものばかり・・・
「本当に・・・あの間抜けな娘がしくじったせいだ」
彼の怒りの矛先は追放された元娘のルナに向かった。王子が寵愛していた平民の娘をいじめた上に殺人未遂までしたというルナ・・・それが本当だろうと嘘だろうと彼にとってはどうでも良かった。問題はせっかく商品として王子の婚約者として作った娘がそんな悪評をたててしまったということで・・・それが冤罪だということを証明するものが何もないからだ。冤罪なら悲劇のヒロインごっこをさせてからルナを別の王子の婚約者にしようと考えていた彼だったが・・・かなり具体的な証拠が偽物だろうと用意されていたことでそれをすることは困難になった。
要するに・・・彼にとって、娘だったルナは王妃になるための道具であり、手段であったということ。その役目がないなら価値はないというのが彼の意見だ。
つまり彼は娘を娘として最初から見ていなかったのだ。当然のように愛着もなければそこに家族愛などもなくーーーようするに彼にとって王妃になれない娘にはなんの価値もなかったのだ。
妻にしても愛人との会瀬を自分と同じようにしているので当然のようにそんな情があるわけもないので、本当に彼にとって、エルシア公爵家というのは表向きの役職でしかなかったのだ。そこに家族としての情も愛もない・・・ただの仕事のための道具。
だからこそ、彼はいくら気に入らなくても、新しい国王に尻尾をふって忠誠を見せかけだけでもたてないといけない。例えそれが、自分の商品をダメにした女だろうと、新しい国王のご機嫌とりのためなら仕方ないという気持ち。
「ああ・・・本当に小癪な・・・」
「失礼します旦那様」
そんなことを考えていると馴染みの執事が書類を持って入ってきていた。
いつもならその後はただ書類を置いていくだけの執事なのだが・・・しばらく躊躇ったように口をつぐんでから言った。
「旦那様・・・実は、先日我がエルシア公爵家の使用人が二人辞めまして・・・」
「そうか。それで?」
「辞めたのはお嬢様の侍女と乳母をしていた者なのですが・・・」
そんな躊躇いがちな報告にレクタはイラついたように言った。
「使用人がいくら止めようが知ったことじゃない。あと、我が家に娘などいない。いいか」
「は、はい・・・失礼しました」
ペコリと謝ってから執事は部屋を早々に出ていって・・・レクタは舌打ちをした。
彼にとって使用人がいくら辞めようと知ったことではないが・・・元娘の名前が出ると無性に頭にきてしまうのだ。
「あの出来損ないめ・・・まあ、もう死んだだろうから関係ないが・・・」
魔の森に追放されたという報告を受けているので生きてることはないだろうと思った。王妃としての教育しか受けていない出来損ないでは魔物を相手に生き残れるわけがないからだ。
そう考えてから彼は思考を戻してため息をついてから呟いた。
「やはり次はもっと優秀な商品を作らないとな・・・まずは今の国王に取り入ってから、その子供の婚約者用に新しい商品を作って・・・」
彼にとって、家族とはどこまでも商品という考えしかないのでそんな思考になるが・・・後に、先程の報告を聞き逃したことに関して悔いる日が来るかもしれないがーーー今の彼には関係なかった。
崩壊の音色は音を変えて迫るーーー
5
お気に入りに追加
1,777
あなたにおすすめの小説
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
塩対応の公子様と二度と会わないつもりでした
奏多
恋愛
子爵令嬢リシーラは、チェンジリングに遭ったせいで、両親から嫌われていた。
そのため、隣国の侵略があった時に置き去りにされたのだが、妖精の友人達のおかげで生き延びることができた。
その時、一人の騎士を助けたリシーラ。
妖精界へ行くつもりで求婚に曖昧な返事をしていた後、名前を教えずに別れたのだが、後日開催されたアルシオン公爵子息の婚約者選びのお茶会で再会してしまう。
問題の公子がその騎士だったのだ。
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
え、幼馴染みを愛している? 彼女の『あの噂』のこと、ご存じないのですか?
水上
恋愛
「おれはお前ではなく、幼馴染である彼女を愛しているんだ」
子爵令嬢である私、アマンダ・フィールディングは、婚約者であるサム・ワイスマンが連れて来た人物を見て、困惑していた。
彼が愛している幼馴染というのは、ボニー・フルスカという女性である。
しかし彼女には、『とある噂』があった。
いい噂ではなく、悪い噂である。
そのことをサムに教えてあげたけれど、彼は聞く耳を持たなかった。
彼女はやめておいた方がいいと、私はきちんと警告しましたよ。
これで責任は果たしました。
だからもし、彼女に関わったせいで身を滅ぼすことになっても、どうか私を恨まないでくださいね?
愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる