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「こっち」

ジュリエットに案内される通りにぺド伯爵邸を進む。途中で会った兵士には悪いけど魔法で寝てもらっている。そうして騒ぎを大きくせずに屋敷に入って・・・俺はその部屋を見て吐き気を催していた。

裸で鎖に繋がれた双子の片割れの女の子達。身体には生傷があり、独特の異臭とお香の香りが混じっていた。

「・・・ここは伯爵様の玩具箱」

なんとも悪趣味だ。俺は意識が混濁してる女の子に近づくと鎖を外して治癒の魔法を使う。そういうこともされてそうだから、再生の魔法も同時に使って、膜を戻すことも忘れない。

そうして12人の女の子を一先ず連れてきた使用人に任せて次に行こうとする前に俺は服の袖を最初に治した女の子に掴まれた。

「・・・助けてくれたの?」
「ああ、もう大丈夫だ。弟くんかお兄さんも助けたから問題ないよ」
「・・・ありがとう」

涙を浮かべるその子の頭を撫でてからジュリエットの案内で俺は最後に残ったアルビノの男の子の元へと向かった。そしてーーー部屋の前でブチ切れそうになっていた。

「おら、鳴け!この豚が!」

アルビノの男の子を虐めて喜ぶぺド伯爵。もっと言えば性的にだ。さっきの女の子達は一応生かされてたけど・・・こっちは使い捨てのようだ。手足をもいで楽しんでたようで死体も転がっている。と、グイグイとジュリエットが俺の袖を引っ張って涙目で言った。

「あの子・・・あの子助けて・・・!」
「ああ。任せなさい」

ポンと頭を撫でてから俺はバン!っと扉を勢いよく開けて言った。

「いいご趣味ですね。ぺド伯爵」
「な・・・何故貴殿がここに!?」
「陛下の代理で貴方を裁きに来ました。無駄な抵抗はオススメしかねます」

ぐったりと横たわる男の子に駆け寄るジュリエット。そのジュリエットを見て察したのか苦々しい顔でぺド伯爵は言った。

「忌み子ごときに動くなど・・・」
「忌み子ではありません。子供にそんなくだらない呼び方をする時点で私達は最悪です。だから老人が老害なんて呼ばれるんですよ」
「黙れ!こいつらなど生きてる価値がないではないか!私達の玩具でしかないだろうが!」

悲しそうに唇を噛むジュリエット。そんなジュリエットにも聞こえるように俺は言った。

「・・・おい。そろそろ黙れよ」

突然口調が変わって驚くぺド伯爵に構わずに俺は言った。

「生きてる価値がないだって?それは俺たち大人だろうが。この子達には未来がある。老い先短いジジイがしゃしゃり出てるんじゃねぇよ」

うん。端的に言えばいい加減俺はキレていた。リリィやエミリアの件でも思ったが・・・この世界でも子供に負担を押し付けることしか出来ない無能な大人がいる現実。もうさ、いい加減にして欲しい。何が忌み子だ。単に自分と違うから怖いだけだろ?

「テメェらみたいなチキンのくだらねぇ感情で子供の未来を食いつぶしてんじゃねぇよ。このデブが」
「き、貴様ぁ!」

殴りかかってくるぺド伯爵。デブとはいえこの老体では避けるのも困難。なので俺は無詠唱で伯爵が地面を踏む前に氷の魔法で無様に転ばすことにした。情けないことにバランスも取れずにそのまま頭を打って気絶する伯爵を1度蹴ってから、驚いているジュリエットと男の子に近づくと男の子を治癒しながら言った。

「皆には今のは内緒にしてね。恥ずかしいからね」
「あ、あなたは・・・?」
「ただの老い先短いジジイだよ。子供好きのね」
「・・・僕たちを助けてくれるの?」
「そう捉えてもらっても結構。さて、これでどうかな?」
「・・・大丈夫。あの、皆は・・・」

チラッと近くに転がる子供の死体を見るその子。俺が首を振ると悲しそうな表情をしたが・・・流石に死後かなり経過してると再生も難しいのだ。一応秘術はあるが・・・それやると俺のこの人生が終わりかねないしね。

「君の名前は?」
「・・・ない」
「なら、今日からロミオと名乗るといい」

ロミジュリとは安直だが、この日俺はかなりの人数の子供を引き取ることになり、そしてぺド伯爵家はおとり潰しになるのだった。我ながらやり過ぎたかもなぁ・・・





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