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2章 今日も学園はゴタゴタしていますが、学園の外までゴタゴタしていて観賞しようとしてもどうやら無理な様です。

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 朝から豪華~な朝食が並ぶかと思ったのだけど、比較的普通な食事で安堵。とは言え実家のアレイ家とは比較に為らない程に豪勢だったのだけど、一度学園の食事に慣れてしまうとそう思わなくなるんだなぁと妙な感想を思う。


 うん、慣れって怖い。

 そして良くないなぁと自覚。

 食べた食事にせめて感謝をと、食後の御馳走様でしたをきちんとする。その際に料理をしてくれた人に感謝と食事を食べさせてくれた伯爵様に感謝、感謝だ。


「ははは、そんなに感謝されると嬉しいものだな。なぁニキ」


「レナはオーバーなんだよ」


 ニキ様に肩を竦めて言われてしまった。まぁ確かに今回はオーバーだとは思う。でもね~慣れたくは無いのさ。何時何があるか分からないからね、私の実家が特に。


「ふふ、まぁ良い事では無いでしょうか」


 モニカ様がクスクスと口元に手を添えて笑って居ます。

 そしてそれらを見て笑むケイン様。


 ふと横から差し出された紅茶に目を向けると、グラシアさんが卒なく皆にお茶を配って居る。その背後の扉から突如焦った様な感じで一人の使用人の男性が入室し、額に汗を流しながらグラシアさんの耳元に何事かを呟きお伺いをしている様な…?


「旦那様、宜しいですか?」


「急ぎか」


「はい。皆様にも聞いて頂いた方が宜しいかと」


「述べて見よ」


「先日レナ様がお探しになって居るデュシー様ですが、この領土に先日まで居られた様です。ですが…その」


 チラリと此方を窺う様に見詰めて来る。

 え、何か良からぬ事でも…?

 お姉ちゃんの身にやばい事が!?


「いえ、デュシー様の事ではありません」


 グラシアさんに皆が目線を寄越す。すると…


「王都にスタンピートが迫って来て居ます」




「なんだと!?」


 こうしては居られんっ!と、ニキ様のお父様、アルビオン・モイスト伯爵当主であり騎士団団長と言う役職の為に一刻も早く状況を把握し、迅速な対応をせねばと立ち上がったアルビオン様に先程室内に入ってきた男性が口を慌てて開く。


「今はまだ王都にまで達しておらず、我が国と隣国であるアメイジング国との境界線ギリギリの所に溢れております。ですがこのままですと恐らく10日から一週間後辺りには…」


「他に状況はっ」


「魔物が溢れ出したのは境界線付近にある『死人の森』のダンジョンかと思われます。ですがこのダンジョンは二ヵ月前に定期的に討伐をし終えて居ります。…溢れるワケなど無いのですが」


「だが溢れた、と」


「はい」


『死人の森』この名前を私はゲーム上で知って居る。

 アナスタジア国と隣国のアメイジング国の両国に渡って広範囲に広がって居る森林の森なのだけど、別名『死人の森』もしくは『腐海の森』と呼ばれている深い森だ。

 魔物はその名の通り基本ゾンビ系統もしくは骸骨系統等が多く、冒険者達にとって旨味の少ない森であまり討伐がされない。何せ食える場所が少なく、討伐しても使える部分が極めて少ない。それでも体内に蓄積されている魔石は馬鹿に出来ないし、またこの森の魔物はほっとくとリッチ等と言う下手に頭脳明晰な高位の魔物が産まれて来てしまう為、騎士団で定期的に討伐されている。


 更にまた奥地にはダンジョンがあり、此方のダンジョンの魔物は厄介な事に時折溢れて来てしまう為、半年に一度中層迄討伐を行って居る。尚『死人の森』とは違い、ダンジョンの方は冒険者に人気のあるダンジョンであり、そのお陰でダンジョンまでの道筋は『死人の森』の入口から人の出入りが多い為に道が開けて居たりする。


 ちなみにこのダンジョン産の魔物の肉は普通に王都に流通しており、学園の食堂でもよく取り扱っております、はい。


 静まった室内にガタリと音を立ててモニカ様が席を立つ。


「お兄様、私が魔術師団を率いておきます。その間に状況を出来るだけ敏速にお兄様の騎士団へと伝えますわ」


「うむ、頼んだ」


 アルビオン様が頷くとあっという間に…

 消えた!?


「アレはこの領土にある魔術師団へと移転魔法で移動したのだ。とは言っても近距離しか出来ぬのだがな」


 このモイスト領土から王都までは流石に出来ないと言うのだけど、それでも凄い事じゃないだろうか?と言うか移転魔法なんて初めて見た!ほんとあっという間に移動しちゃうんだね。


 そんなことを考えて居るとアルビオン様は「失礼する」と言って席を立って行ってしまい、私達三名である私とニキ様とケイン様、そして執事のグラシアさんが室内に残される。


「レナ様」


「はい」


 マジマジと此方を見詰めて来るグラシアさんに「?」と思いながら見つめ返すと、


「先程の報告の一つに聞き捨てならない事柄があります。…姉上であるデュシー様らしき方がスタンピートが迫って居る王都に向かって居ると」


 え。


「恐らくスタンピートが迫って来て居るとは存じ上げて居ないのでは無いかと思われます」








 * * *








 デュシー姉さんは基本ぽやーんとした人だ。


 幼い頃からの私の印象がそう言った感じで、本当にそう言う性格をしているのでは無いかと思って居る。

 何せ穏やかに笑って居たり、一緒に居る時でものんびりとした口調で何処か浮世離れした印象がある。正直将来が大丈夫かと思って居たけど、まぁ、それに関しては親父のせいで大丈夫では無かったのだが。

 兎に角のんびりで動作もちょっと遅かったし、言葉も少しおっとりとした印象がある。


 だからこそ何度かゲシュウ・ロドリゲスに引き合わされたりして居たのだが危機感が全く無く、また親父によって学が無い状態にされていたので考えもしなかったのだろう。


 …私はその様子をよく見ていたので逃げる事が出来たのだけど。


 今思うと次男のディラン兄さんがデュシー姉さんに話し掛け、何度か考える様にと言って諭して居た様だけど、あれはディラン兄さんが逃げる様に促して居たのかも知れない。


「レナどうしても行くのか」


「はい」


 危険でもなんでも、あの浮世離れした姉なら深く考えずに王都へ向かっている可能性がある。

 もしかしたら妾になった事により周囲に学ばせて貰い多少知恵がつき、今回のスタンピートを回避しているかも知れないし、それならそれで周辺地域に身を隠している可能性が高い。

 ならば王都近くまで寄って探した方が早いだろう。


「だが来る時にはそう言った情報は何も無かったが」


「ええ。でも此処に来てから姉の容姿が変化した可能性があります。だから見付からなかったのかも知れませんし、すれ違いになった可能性もあります」


 もしくはグラシアさんが言って居た『旦那様』とかいう人の指示で髪の毛を染めている可能性もあるし、もしくは苛酷な生活により色が抜けた可能性だってある。

 何せ妊娠して居た時から金銭を受け取って居ないから、食うに食えなかったらしいからね…。


 親父にロドリゲス家、許すまじ。

 ええい、禿げろーっ!

 毛根死滅せよーっ!


 スキルや魔法で『毛根死滅』とか『毛根死滅の呪い』とか無いかなぁ。あったら是非ご教授して欲しい。もしくはウチのクソ親父どもに掛けて欲しい。


「レナ何かとても恐ろしい事思ってないか?」


 ってニキ様言うけど、そこはニッコリ黒い笑みをタタエテオキマスヨ?


 だって親父に対しての禿げろな呪いですからね?

 絶賛私、クソ親父に対してお怒り中ナノデスヨ。
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