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141 ダンボールの上には黒マジックで
しおりを挟む夕刻。
陽平父さんと無理矢理付き合わされたらしい落合先輩に京夏さんが幾つものダンボールを抱え、阿須那父さんと陽平父さんの新居、この学園の寮へと軽トラックに荷物を積んで運んで来た。
「へい!お待ち!」
等と明るく幾つものダンボールを僕と皇さんの部屋の前に幾つか置き、次いですぐお隣の部屋、昨日まで空き部屋だった玄関前に次々と積み重ねていく。
積み重なって行くダンボールをボケっとしながら呆気に取られて見ていると、
「こっちが優樹っちの荷物ね~。」
ほいっと京夏さんに渡されたダンボールの上には大きな文字で黒いマジックを使い、ハッキリと書かれている『ぱんつ』の文字。
「…ぱんつ。」
何故その三文字。
そうして平仮名。
片仮名で書かれても嫌だけど。
「そそ。」
「何故わざわざ書くかな。」
こんなに黒い文字で大きく書く必要無いよね?
「その方がわかりやすいっしょ。」
そう言う問題か。
「京夏さんがね。」
「優樹っちもこの後片付けやすいっしょ。」
…うん。
聞かなかったことにしよう。
見なかったことにしよう。
恭介さんが帰宅する前に記載されたダンボールはとっとと粉砕して見られないようにしよう。
と言うかね、ぱんつ以外も入っていると思うのだけど。服とか靴下とかエトセトラ。
何故そこの所を強調するかな。下着って書くだけで良いような。
京夏さんだからだな、うん。
僕をからかって何が面白いのやら。
「こっちのダンボールは教科書とかノートとかも入っているから結構重いよ。玄関の中に入れて良い?玄関から室内には入らないけど、それぐらいは皇っちが居なくても大丈夫かな~?」
「うん?別に居なくてもいいと思うけど。」
何故恭介さん?確かに今は仕事に行っていて不在だけど、友達だし気にする必要は無いと思うけど?
「いやいや、優樹っち。皇っちってばそう言うの、結構気にすると思うよ~。」
「京夏、それはαならだな。」
うん?αなら?
「皇っちの大事な優樹っちとの愛の巣に、友達とはいえ他のαを入れたくないって皇っちも思うと思うよ~。」
俺も落合先輩との愛の巣に、他のα達をいれたくないモーン♪と、テヘヘと笑う京夏さん。
惚気か。
惚気なのか。
そうしてα以外なら良いのか。
「α以外ならって言うか、Ωちゃん達がうっかり入っちゃったら絶対ヒート起こしちゃうよ。βも女子ならまずい感じ。男子は知らにゃい~。ひろのフェロモン滅茶苦茶凄いんだもん~俺、孕んじゃいそう~!」
そう言って頬を染めてうへへへと笑う京夏さん。
その顔ってば思い出し笑い?
顔は兎も角、口から出ている声が変だけど。そう言えば京夏さんって出会った当初は兎も角、最近は「うへへへへ」とか、「うひゃひゃひゃ」とか変な声で笑う。
しかも心底楽しそうに。
嫌いではないけど結構吃驚してしまう。今まで周りでこういう風に笑う人、周囲に居なかったから。悪い意味では無くね。明るい人だなって思う。
でもこの笑い方って時と場所を選んでいるみたいなんだよね、学園の厳格そうな先生の側だと堪えている様だし。その代わり僕等みたいな学生の間や陽平父さんの側だと抑えていないけど。
気を許して居るのかも?
等と思っていたら、ブフッと吹き出して幾つものダンボール箱を抱えて持って来た陽平父さんが苦笑していた。
「こんな時間帯に変なこと言うな。」
と、ダンボールを降ろした後に京夏さんを小突いている。
「夕方だから良いじゃ~ん。」と、小突かれながらも夕方ならば良いのかどうか微妙な事柄を口にしている京夏さんを守るように間に落合先輩が入り込み、陽平父さんが微妙な顔付きをしている。
うん?
ああ、何か変だなって思ったら落合先輩から微妙な威圧が出ているのか。
陽平父さんはほんの少し眉を下げ、阿須那父さんの方を見てから僕の方へと視線を寄越す。大丈夫ですよ~これぐらいのαの圧なら何とも無いです。
…恭介さんのαのフェロモンに慣れつつあるからだけどね。
「陽平。」
あれ、阿須那父さんが困惑している。
「うん?」
「これ、どういう意味だ。」
「え、何が?」
「ダンボール箱の上のマジックの文字。」
うん??どういうこと?
もしかして京夏さんが悪戯したのかな?
「…京夏さん。」
ウヒヒヒと妙な笑い声を上げ、その場を逃げ出す京夏さん。
悪戯したのだなあ、わかりやすい。
「お前なぁ。」と呆れる陽平父さんに阿須那父さん。
ひょいと覗き見たダンボールの上に書かれた文字、ソコには『スケスケ黒レース勝負ぱんつ』と書かれていた。しかも漫画風に吹き出しが記載されていて、京夏さんの書いた文字で【お色気むんむん!】と記載付き。
…阿須那父さん、そんな下着を持っていたんだ。
※ ※ ※
今回のツッコミどころ
・ぱんつぱんつと五月蝿くてすいません(*´﹃`;)。
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