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しおりを挟む『優樹、唐突だが研究者達の始末が付くまで学園の敷地内から外に出るのは危険なので禁止。』
阿須那父さんから掛かって来た電話に出てから言われたことに暫し固まり、硬直した。
※
京夏さんと落合先輩が学園内にある寮に帰り、高峰さんは先程頼んでいた僕と恭介さんと高峰さんの夕飯のお弁当を食堂に取りに行ってくれた。彼は今日、ここでお弁当を食べてから職場に報告に行くそうだ。お疲れ様です。
そんな僕は持って来た荷物を恭介さんに許可を得たクローゼット内に詰め込んだ。
生活用品等いつも使う物は使い勝手がいい所に詰め込み、制服などはハンガーに掛けておく。
「明日、足りない物を買いに行こう。」
不意に耳元に囁く声に驚いて心臓が飛び跳ねた。
「ふふ、吃驚した?」
何時の間に来たのだろうか、恭介さんが背後に居て微笑んでいる。
「急に耳元で囁かれれば誰だって驚くと思う。」
「そうだね。」
クスクスと機嫌が良さそうに笑う恭介さん。そうして笑う度に僕の耳元にその、息が、ね。
擽ったいのです!
我慢をして悶えていると急に「ふっ」と息を吹きかけられる。勿論僕の耳に。
「わぁあああ!」
慌てて飛び退いて恭介さんの方を見ると、先程同様に微笑んでいる。
何か変なこと考えていません?
「う~んこれ以上はちょっと危ないな。」
何が。
「私の理性が。」
ぶは。
今日何度目かの吹き出しをしてしまう。
止めて下さい、少なくとも今はまだ、その、ね?
「許可を得て恭介さんと一緒に住むことになったのに、初日から僕、貞操の危機ですか!?」
同棲初日からって、考えてみたら同棲ってその、そういうこと込みなワケだよね。僕等αとΩな訳ですし。と言うか、世間では色々な事柄、キス以上な事を既に済んでから同棲するのだろうか。
恋愛偏差値が低い僕にはわからない事だらけです。
「私のことが嫌いになった?」
どう考えてもそれは無い。
無いから困ってしまう訳で。
「それなら優樹、何処までなら良いか。」
そう言って僕の顎に手を掛け、恭介さんの綺麗な顔が側に近づいて…
「皇君が何時になく積極的なのは構わないと思うのだけど、少なくとも俺が帰宅するタイミングを見計らってやる事では無いと思うぞ。」
何事も無かったように僕等がいる居間に入り、此方を見て苦笑しつつ高峰さんはお弁当が入った袋とペットボトルが入った袋をテーブルの上に置く。
僕はその僅かな間にパタパタと片手で仰ぎ、熱が上がったような頬を少しでも冷やす。気休めでも大事。
「バレたか。」
そう笑いながら僕から離れる。
それでも僕の腰から恭介さんの手は離れていないし、横にピッタリと居るのはまぁ、何と言うか彼らしいし安心する。何となくだけど、この部屋の中で恭介さん以外のαの匂いがするのは何故か落ち着かなくなる。
落合先輩や京夏さん達が居た時は特に気にならなかったのに、何故なのだろう。
「ほい、お弁当とお茶。そう言えばっと、ハイこれ。」
ん?と僕に渡されたスマホ。
そのスマホから『優樹?』と、阿須那父さんの声。
「阿須那父さん?」
そうして、上記の宣言をされる。
『敷地内から出るのを禁止。』
今後足りなくなると思われる生活用品を買い足したい僕としては色々困るのだけど!?
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