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「うわ、凄い噛み跡だね。…噛んだ誰かさん、どれだけ顎の力が強いのさ。」


 場所は変わって、つい先日プロテクターを購入したお店の中。
 その店内を「おお~こうなっているのか~。」と、店内にあるガラスケースに入れて飾られているプロテクターをキョロキョロとして見ているのは京夏さん。そうして、店の入口付近で居心地が悪そうにしている落合先輩と恭介さん。
 恭介さんが居心地が悪いのは、店長さんが噛んだ相手はコイツだよね?と言わんばかりに恭介さんを睨んで居るから。
 落合先輩の場合は此処の店長ってΩだけど、何故か初対面のαを威嚇するらしい。
 本人がさっき、「初対面のαは威嚇することにしています。」と言って、睨んだから。

 その姿が美人なシャム猫さんが毛並みをモフモフに逆立て、威嚇して居る様にしか見えないのは僕だけでしょうか?

 …えーと、店長さんそれで良いの?
 客商売なのに大丈夫なのかな?と思っていたら、「店の客はΩがメインですから」と苦笑していた。

 それは良いのだけど、京夏さんαなのに何故か此処の店長さんは威嚇をしない。
 何故?と思っていたら、「君は変わったαだねぇ」と言ってにっこり笑い掛けていた。

 …何か京夏さん顔面が引き攣ったけど、その姿を見て店長さんが笑いながら「先日来た女の子君とソックリなのだけど、もしかして双子かい?」と。
 ああ、成程納得。
 杏花音さんと双子だと気が付いたからかな。

 因みに恭介さんは『噛み跡の原因』として速攻でばれて、店長に「君が弁償代わりに支払いなさい」とガッツリと首根っこを抑えられた。
 分厚いカタログを渡されて「稼いでいるらしいし、可愛いあの子の為にも奮発してかなり頑丈なモノにした方が良いよ。そうしてこのお店に来店するΩ達に『良いαの見本』として貢献してね?」と高額な品をプッシュされている。

 その姿を見てからカタログを見せて貰った落合先輩が、頬を引き攣らせていた。
 何故だろう?そんなに凄い桁なのかな?と思って、落合先輩の横から見たら、0の桁が………。

 先日より多い気がします。
 怖い。
 百万とか普通にある。
 ナニコノ金額怖い。
 乗用車が買える金額ばかり。
 僕支払えません、無理過ぎです。

 話変わって。
 と言うか、金額から目を逸したい…。

 え~と、マネージャーの高峰さんは外の駐車場で、キャンピングカーの内部でデローンと伸びて仮眠中。事務所からの連絡が来るかも知れないし、合間に休憩したいのだそうだ。

 お疲れなのかな?後でキャンピングカー内部の台所でも借りて珈琲でもいれてみようかな。
 そう言えば恭介さんの寮の台所、珈琲サイフォン一式が置いてあったな。どうやって使うのかな?今度教えて貰おう。阿須那父さんと陽平父さんに一度本格的な珈琲やお茶等を出してみたい。
 むむむ…喫茶ロインでアルバイトでも募集してくれないかな?其処なら喫茶店だし、徐々に修行したら腕前だって良くなるだろうし良いのでは無いだろうか。
 その前にアルバイト募集しているかどうか…あ。

 阿須那父さん、喫茶ロインの店長さんのこと毛嫌いしていたっけ。
 む、無理かも。
 他のお店の方が良いかな。
 ちょっと、本格的に学園側がアルバイトしてもOKなら探してみようかな。
 何なら学園のカフェとかでも良いなぁ~あそこ、美味しそうなメニューが多いから料理の勉強にもなるかもだし。

 でもコンビニは避けたい。
 何故なら中学の同級生達が来たら、特にクラスの男子や僕に付き合えって言った子とは顔を会わせたく無い。何か、生理的に嫌って言うか、うん。苦手。
 それに恭介さんとのことがバレたら煩そう。
 女の子達は別に良い。特に今も連絡を取り合う仲の女の子達は、『あの皇恭介を手篭めに出来たら超嬉しい!こうなったら滅茶苦茶応援する!!』なんて、物凄く大プッシュされたぐらいだし。
 おかしいな、僕メールでは同じクラスになっただけだって教えただけなのに。何故そうなったのだろう?

 まぁ、『フラレたら嫁に貰ってやるよ!』なんて男前な台詞をメールでされた時は笑っちゃったけれど。どっちが嫁だよって突っ込み入れたい。

 等と思っていたら、ヒヤッとした感触が首に当たったな~と思った瞬間、カチャリと鳴る金属音。


「へ!?」


 慌てて首元に手を触れたら、店長さんが手鏡を取り出して此方に見せてくれた。


「うわ」


 僕の首に今あるのはそれこそ喫茶ロインで初めて見た、赤銅未明さんのプロテクターに似たタイプの金属製の頑丈そうなモノ。その癖重さを感じられない不思議な金属。多少ヒヤッとした感じが最初あったけれど、今は「ああ、そう言えばあるかな?」と言った、ほんのりと感じられるのみ。


「うわ~高そう…。」

「皇、コレかなりなモノでは無いのか。」


 京夏さんと落合先輩が僕の首元をみて、速攻で金額を気にしている。
 確かにこの軽量化された金属だと、金額が恐ろしい桁行っていそう。
 そうして、極々何でも無い風に「優樹のためにはこの方が良いからな。」と言っている恭介さん。ええと、何だか照れる。
 でもそれって、元を正せば恭介さんが………これ、言葉に出しては駄目な奴ダヨネ。
 黙っておきます。


「彼に似合うと思わないかい?それにね、かなり頑丈な歯や顎の主が相手になると、これぐらいでないと役に立たないよ。」


 店員さんが微笑んで告げた言葉がトドメとなって、恭介さんはさっさとカードで支払いをした。
 呆然としている僕に「学生さん相手だから国から助成金来るし、学割もしておくからそんなに気にしなくて良いからね?此処は彼に甘えておきなさい。」と。

 でもそれ、絶対に桁が凄いことになっているよねー!?
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