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 side.高峰 真央


「諸々が終了して皇君の予約していた部屋に帰ってみたら、部屋の中がピンク色だった件。」


 いや、何を言っているって思うだろう?
 でも事実だよな、これが。






 ※






 最近兎に角俺の界隈、いいや、芸能関係の業界というべきだろうな。何故か彼方此方、右を向いても左を向いても雲行きが怪しい。

 今朝もスポーツ関係の業界が賑わっていて、ニュースを読み上げるアナウンサー達も「最近この様なニュースが多くなってきましたよね。」等と言っていた。
 この様な…つまり、【有名人】を狙った人物がワザとヒート状態を起こして転がり込んで来るという事柄なら昔からあったのだが、最近は【周囲の人を巻き込む】違法薬物を使用した犯罪が多い。
 特に今朝のニュースはスポーツ観戦をしに、一般人に紛れていた有名人に対してこの薬剤を使用した馬鹿が周囲の一般人にまで薬剤を吹き掛け、会場が大混乱へと陥った。

 この薬物と言うのが中々に厄介で、普通はΩがヒートを起こすとαやβまでが襲うって言うのが通常起こるモノなのだが、この場合はΩが居ないと、もしくはΩが犯人でないと出来ない。

 それが全く関係ないバース…βが擬似的にΩのヒートと同じ様なフェロモンを撒き散らし、もしくはΩの様に擬似的に発情し、狙った相手であるαを疑似フェロモンで陥落させ既成事実を作るというものだ。
 ただこの違法薬物の厄介な所は使用者当人の身体から周囲に薬物があっという間に気化し、広範囲に薬物が漂い周囲のΩがあてられてヒートを起こしてしまう。そうするとΩのフェロモンが混じり合ってαだろうが、βだろうが理性が溶けて悲惨な現場へと陥ってしまう。

 更にはもう一つ厄介な薬物もあって、これはスプレーの様なもので周囲に撒き散らす。しかも噴射したものがΩのヒートの時のフェロモンを擬似的に作成したものだから、余計にタチが悪い。
 当然当てられた者は普段から対策出来て居ない者の場合、簡単に理性を失い誰彼構わず襲ってしまうか、襲われてしまう。

 ったくこんなアホな薬品誰が作ったんだよ。
 話を聞いた時頭が痛くなったことを思い出す。
 そして、この情報を与えてくれた相手が漏らした言葉も思い出してしまう。


「そんなの決まっているじゃん、亜藥村にあった今は無い極秘国家機関「ダムレイ」研究所所属のマッドサイエンティストだよ。つーかソコしか無いだろうな、バース性の研究者って言う名の大量殺人鬼を学者として隠していた施設は。」


 喫茶『ロイン』の店主は悪態を付いて嫌そうに顔を歪める。


「ハンニバル・レク●ーも真っ青な思考の女性学者だったよ。」


 と言う台詞が出る辺り、過去何度か会ったことがあるのだろう。
 聞いても黙り込んでしまった以上、彼の性格から引き出すことが出来ないと判断しているが、今回の事柄で再度問いただした方が良いだろう。

 事務所の社長にも皇家ご当主にも報告しなければならない。
 これも皇君のマネージャーの仕事だ。その分お給金は良いが、詳細を省いた報告等したら…ブルル、怖いこわい。想像しただけで勝手に身震いをしてしまう。

 何せ今回のやらかした女性からはβの筈なのに微かにΩのヒート状態のフェロモンが漂い、うっかりすると意識が持っていかれそうに何度も陥り、慌てて即効性の抑制剤を飲み込んだ。
 そうして改めて周囲を見渡すとβは特に支障が無い様だが、この喫茶店のオーナー、それに駆けつけた警察等のαは多少意識が混迷したりするらしく、抑制剤を飲んで貰ったりして対処して貰い、改めて話をした。
 更にはすぐに警察から派遣されてきた者達によると、女性はどうやら普段から違法薬物を摂取しており、その身体は薬物に蝕まれている可能性があるとのこと。

 ―…どういう事だ?
 この違法薬物とは摂取出来るものなのか?しかも普段から摂取?麻薬の様なものなのか??

 これも社長や御当主に報告せねばならない。
 既にこの手の情報を掴んでいると思われる、喫茶ロインの店主と情報交換が必要だよな、いや情報合わせかも。更には先日の帝都新聞社の編集長、時と場合によってはバース問題として学園側にも連絡をした方が良いだろう。
 その辺りの細かい事柄は社長と皇家当主に指示を仰ぐ形になるが、先ずは………。


「この違法薬物の情報を提示願います。」


 提示するのは勿論皇家御当主と我が事務所の社長に。
 提示しないなんて言うのは無理だせ警察さん方。圧を掛けるのは俺じゃなくて、この国のトップの人達なのだから。俺?その下っ端ですからね?俺に威嚇しても無理だよ、そこのαの警官。
 ただのαの威嚇なんて背筋が痒いだけだ。






 ※






 そんなこんなで色々報告やら何やらやって部屋に帰って来たらさ。
 ピンクもピンク!桃色の世界ー!

 良かったな皇君っ!
 外の景色見ていてウットリ顔の倉敷君が甘えるように寄り掛かっているし、倉敷くんと皇君の先輩らしい人とその友人なんて窓辺でイチャコラ。
 おおい!俺頑張って来たのに憩いが無い!
 何だよ、この世界は!
 猫様も呆れて………。

 俺は見た。
 猫様も人間達に煽られたのか、それとも目の錯覚か。
 まりりんちゃんとベッキーちゃんの二匹が床で互いの毛繕いをしてイチャイチャ……。

 良い。
 俺、猫様達の仕草で癒やされるから。

 だがしかし!運命は無理だとしても恋人欲しいなッ!(涙目)
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