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細かい描写は書いておりませんが、男性妊娠表現が苦手な人は今回はスルーしたほうが良いかも知れません。
※ ※ ※
皇さんは旦那じゃないからね?と言っても三人共妙な生暖かい視線を僕に注ぎ、「うぐぐ」と言葉に詰まってしまう。
確かに皇さんの爽やかなレモンの香りがするフェロモンにはクラクラ所かグラグラしてしまうし、匂いに釣られて側に寄ってしまう傾向が高いのは自覚している。
でも、あの威嚇は怖くて側に行けなくなるんだよなぁ。
…あれ。
僕の首にあるプロテクターに皇さんの威嚇系フェロモンが付いているらしいのだけど、この匂いは感じられないし同じオメガの杏花音さんもわからないらしい。
何だろ、αって幾つもフェロモンの匂いの数が多いのかな?
それとも人による、とかかな。
もっと細かく言えば上位αだと色々あるのだろうか。
上位αで思い出したけど、不和さんが好いている美少年の未明さん。この学校に通っているらしいけど、学年が違うせいか学校が再開してから一度も会えたことが無いんだよね。あの事件の時に薬品のせいでヒート状態に陥ったらしいけど、その後どうしたのだろう。
大丈夫だったのかな。
学校から話を聞いているらしい父さん達に聞いてみようかと思ったけど、もし薬品でヒート状態に陥っていたのが僕だったらと思うと聞くのが戸惑われる。
嫌な記憶としてトラウマみたいになっていたら嫌だろうし、そんなに交流もない僕が未明さんのプライベートな事柄を聞き出すのは良くないよねぇ。
そんな事柄をつらつらと考えつつ、皆で京夏さんが持って来てくれた飲み物、僕の場合は烏龍茶を飲みながら陽平父さんが来るまで保健室にある椅子に座って待っていた。
昼食の時間帯も半分を過ぎ、そろそろと昼食に持ち寄った食器やらゴミやらを片付けていると先程メールを送られて来た皇さんの話になった。
ゴールデンウィーク前に発表があるから、今日の夜の7時になったらTVを付けて見て欲しい、と。
此処までは友達にもクラスの皆にも発表しても良いらしい。
…僕個人にはもっと具体的な事柄が書かれて居たけど、それは秘密にして欲しいとお願いされていた。
何だかまた三人から生暖かい目で見られている気がするけど、気が付かないフリをしてスルーした。だってどう対処したら良いのかわからない。別に僕等付き合っている訳では無いし。
『私は君との関係を深めたいと思っている。』
…なんて言葉を貰ったけれど、僕はまだ良くわからない。
Ωだからαに惹かれるのはわかる。これは自然の摂理だってことも。
でも、でも…僕自身の心は理解していない。
僕は男で。皇さんも男で。
でもバースはΩとα。
今までβの中で育ったからか、感覚がいまいち掴めない。
性別的には中間って感じ?
おかしいなぁ、この学園に入る時には父さん達みたいなお互いを必要として支え合うような恋をして、出来たらそのまま恋人になってくれる、そういう人を探そうと思って入学したのに。
だって、あんなに綺麗で格好良くてしかも有名人で財閥の御曹司って人が何故?しがない一般人であるΩの僕に惹かれると言って来るのだろう。
うう、ついついグダグダ考えてしまって、思考の渦に嵌ってグルグルしているよ。
カオスだよ、目が回りそう。
良くない兆候だよねぇ……。
※
「は~皇がねぇ。テレビか、了解見とく。」
因みに今僕は病院へ向かうために陽平父さんが運転している車の中です。
当然後部座席。
助手席は阿須那父さん専用だからね。無粋な真似は致しません。
…なんて。この車中には僕等義理の親子意外にももう一人乗っているワケで。
「…。」
僕に会った後、挨拶だけして速攻で車の助手席に無言で乗り込んでしまった彼、赤桐未明さんを後部座席から刺すように見詰めます。
じとぉ~~。
そこ、阿須那父さんの場所なのに。
じとぉぉぉ~~~。
理由はわかるよ。
ご当人が遠巻きに、言いにくそうに教えてくれた。
曰く、先日の事件後等々…誰とは言わないし、此方も誰とは聞かないけど。
いや、聞けない雰囲気だけど。
『番』契約はしていないけど、ヒート中に身体を許しちゃったらしい。
確実に相手は不和さんだよなぁ。
しかもΩのヒートの最中ってハッキリ言ってその、100%出来ちゃうんだよ、赤ん坊が。
今回は違法薬剤で無理矢理起こされたヒートだから多少は勝手が違うかも知れないけど、それでもΩにとっては一大事だし、今後の生活にも響いて来る。
何せ赤ん坊が産まれて来るのだから。
自分の人生と更にもう一人分出来て来てしまう。
そのために学生は避妊薬を飲むのだけど…飲んだのかな。
どうなのかな。
個人的なことだから流石に聞けない。
一応学生だし、しかも三学年で最終学年だから普通なら妊娠させないようにする筈。それでもお相手の人が社会人αだった場合、多くのΩはそのまま学園を去って出産を望む傾向が強いと聞く。
そんな訳で現在車内は…沈黙が辛い。
陽平父さんもどう接して良いのか様子を窺っているような気がする。
対して未明さんは黙り。
時折指を動かし、数を数えている気がする。
もしかして赤ん坊が出来てから産まれるまでの月日を数えている、とか?
10月10日って言われているけど、その計算?
「あ~…1月8日前後位かぁ。」
「「ぶはっ!」」
あ。陽平父さんが大慌てでコンビニの駐車スペースに車を止め、前のめりになってハンドルに頭を預けている。そんな様子を窺っている僕はひたすら目をパチクリと大きく見開いたり、口を無意識に開けてみたり…唖然としてみたり。
後部座席だから二人からは見えないとは思うけど、戸惑ってしまう。
計算しているかな?とは思っていたけれどね!
「お前な……。」
「あっはっは!御免つい気になって。日数を計算してみたら出産日って大体それ位かなって。」
「正確な数値だすなよ。」
「ん~一応学校にいる時に友人からスマホ借りて計算の出し方知ったから。つい、ね?」
「ってことは覚悟決まったのか。」
「そ。グダグダ考えても仕方ないからなぁ。まー相手がアレだし、ほんとアレだし。アレが相方だと今後の生活とか金銭的なことは安堵出来るからね。」
「ああ。アイツは確りとお前を守るさ。」
「ん。その辺は信用している。」
「そうか。」
父さんがガリガリと後頭部を掻いている。
気持ちを切り替えているのかな?そして僕は見ざる言わざる聞かざる状態です。むしろ透明人間になりたい気分です。
黙りしておきますよー、聞こえていますけど目線は前、向かない。
窓の外固定です。
動きませんよ~。
「無理しなければ何とか冬休み前位までは学校行けるかなぁ。いや、秋までかも?卒業したかったなぁ。」
「何とかなるだろ。特別申請出しといてやる。」
「お?俺、無事に卒業出来る?」
「1年から二年までの出席日数は足りているし、成績も良い。9月迄は普通に登校出来れば其処から先は体調次第だが、特別室出席で日数は足りる筈だ。」
「ほー。って、勿論成績落ちれば駄目ってやつか。」
「そうだな。今後、体育の授業は見学一択な。」
「へーい。」
「その他の事は担任と話し合ってからだな。それにそう云う学園だから心配するな。Ωやα相手の対処って言うのは結構融通が聞くからな。」
「んーでも、出席日数が足りないと普通に留年だろ?」
「当たり前だ。」
「デスヨネ―。」
ボソッと呟いた不穏な言葉、クソ親戚が何か仕掛けて来そうだなって言う声が後ろにまで聞こえていますよー。フラグが立ちそうで怖いので声に出さないで欲しいです。
「それも不和が始末するだろ。」
父さん、未明さんの相手が誰か言わないでー。知っているけどさ。
「ん。その辺りも信用している。でも、出来たら俺が何とか始末を付けたい。散々迷惑被って来たからいい加減我慢の限界が近いし。」
という声と何度も二人が言う「始末」って怖っ!
警察に連れて行くって言う意味だとは思うのだけど、言葉が剣呑だよ!
「ま、そんな訳で優樹君。」
ひえ、僕!?
「は、はいっ。」
なに優樹緊張している?って父さんの声が聞こえて来るけど、だって何だか怖いよっ!会話が怖いよ!
「学校で何かあったら先生借りるけど、宜しくな?」
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