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 はぁ、信用無いですね。まぁやらかしていますし…。」


(数年かけてやっと見つかったとはいえ怖がらせる等、何と未熟。こんなにも己の感情が抑えられないものだとは…。)

 一人何かをブツブツと呟いている皇さんを見る。
 口に手を当てて何事かと思案しているようにも思えるけど、落ち込むと周囲が見えなくなっちゃう人、とか?
 小声でブツブツ呟いている内容、この部屋にいる人なら耳を澄ませば聞こえちゃう気がする。
 特に僕、皇さんから近いから。
 とぎれとぎれだけど、『数年かけて…見つかった』という部分はハッキリと聞こえた。と言うことは、この部屋に皇さんがずっと探していた人がいる、もしくは物がある。
 そして度重なる接触により皇さんからの威圧。
 先日からの行動と、父さん達の言葉。
 いくら何でも察してしまう。

 何故探していたのだろうとかは何となくわかる。
 彼から香るこの惹き付けられる香りは多分、僕等が『番』なのではないかと思う。
 少なくとも一戸さんの態度から察するに彼女と皇さんは番とは違うようで惹かれている気配は無いし、先程いた蒼志さんも違う。どちらかと言うとこの二名は威圧により逃げ腰になっているだけだった。って、僕もそうだけど。
 でも今の状態の皇さんから漂う匂いに惹き付けられてしまい、ふと気がつくと頭がクラクラしてしまって朦朧としてしまうのは多分おかしい。これって『番』が見つかると惹かれ合うと言う状態のΩの症状に似ている気がする。それに先程から急激にお腹の奥がキュと絞まるような、そうでないような。ほんのりと熱があるような。

 はふ、確りしないと。

 それにしても先程の言葉、『数年掛けて』か。
 何処かで僕等は会っている?
 一生懸命探してくれていたと言うのだろうか。
 この、目の前の皇さんが?
 色白で何処か日本人離れした小顔の容姿、誰もが羨むような長い睫毛とサラサラの艶がある黒髪。更には男なら憧れる肩幅。今はまだ高校生だから若干完成されていないのかも知れないけれど、その美貌や姿形は誰もが振り向く男の色気を醸し出している。

 何ていうか、僕等の年頃の男性の理想形って感じかな。
 しかもモデルでもやっているの?と言いたくなるような均等の取れた肉体が見ているだけでもわかる。正直羨ましい。僕がΩでなければ目指してみたかった理想の体型だ。ただ血筋なのかなんなのか、阿須那父さんも僕も全く筋肉がつかない残念体型なので諦めているけど。

 それにしても、この一見すると優美な雰囲気の豪華な王子様って感じの人が僕を、ねぇ…。
 夢、かなぁ。


「んじゃ、兄貴達来るまで皇先生宜しく~!」


 ニヤリと場の雰囲気を簡単に変え、何故か先程から一心不乱にスマホで僕達を撮影しつつ微笑む一戸さんに僕は苦笑してしまった。

 彼女はどうやら京夏さん同様、中々面白い人のようである。




 





「で、杏花音は何百枚写真撮影したんだ?」


 呆れた声で話すのは勿論、つい先程落合先輩と競争をして帰って来た杏花音さんの瓜二つの双子のお兄さん、京夏さん。


「ふははは、つい連射してしまったからわからん!だから京夏兄様お願い!マイクロSDカード持っていたら頂戴!むしろ寄越せ。」


 お兄さんに対して双子の妹、ほんとソックリ。ただ京夏さんと杏花音さんの場合、性別とかもあるけれど杏花音さんの方がΩのせいか…うん。今ソレドコロじゃないよね。寄越せって強奪する気かい。


「貸してじゃなくて頂戴、いや寄越せかよ…。」

「だってー写真永久に消したくないし~。記念に大事にしたいじゃない?」

「ならもっと良いスマホに変えたら良いだろうが。それだと速攻埋まっただろう。」

「埋まったねぇ。だから頂戴!」

「仕方ないなぁ。後でスマホも容量あるやつと画質いいヤツ買えよ。」

「えーお金ありません~。」

「だったらマイクロSDカードもっと購入しとけ。」

「ええええー!?だって、だってその分のお金は優樹ちゃんと街歩きで消費するの!」

「お前な…ったく、ほれ、3枚でいいか。」

「やったー!京夏兄様大好き!」

「お、おお…もう一枚いるか?」

「いるー!」


 安定の京夏さんのシスコンぶりが発揮されてるよ。『大好き』って言われてニヤニヤしているその顔、普段は結構綺麗系の格好良い男性なのに、今は締りがなくてちょっと…。


「杏花音ちゃん、僕のも一枚あげるよ。このメーカーの、使えそう?」

「ひゃあああ!落合先輩有難う御座います!このご恩返しは優樹ちゃんと私とのツーショットで良いですか!?」

「あ、それいいね~出来たら京夏と俺とのツーショットも撮影して送ってくれない?」

「オッケーでーす!」


 ワイワイと枚数とかスマホに表示されてあるだろ、とか何とか一戸さんと京夏さん兄妹の声が聞こえますが僕は今、それどころではありません。
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