173 / 255
3章 モーザ・ドゥーグの影
閑話 迷い 3
しおりを挟む
「御嬢様なら何でも可愛いらしくてお似合いですよっ」
あ、何か人選間違ったかも。
とか言うアドニス様の囁き声が聞こえたけど、護衛に付くことが多いキーラちゃんに例の件を言う。
「スカートだと不味いと思うの」
「例のあの娘ですね」
全くと吐息と共に吐かれた言葉にちょっと動揺してしまう。
「わ、悪い子じゃ無いと思うの。ただちょっと人とは違って…」
う~ん、後はフォローが思い付かない。
どうやっても無理だ。
「確かに普通とは違いますね、あの料理長の娘ですし」
良い意味か悪い意味かイマイチ分かりにくい事を言うリアム。
ちなみに先程からキーラと共にウサギの部屋の前で警備をしていた為居ても不思議では無いのだが、空気を読んで黙って居たようだ。最も今ので台無しになったが。
「オットーさんって普通じゃないの?」
「兵士としても格闘家としても一流で、そして料理人。普通ですか?」
「う~ん?」
「そして料理に使う包丁で五メートル程のモンスターを一撃で葬る」
「ふぇっ」
「普通ですか?」
「普通じゃないです」
コクコクと頷くしかないウサギ。
リアムはキーラに「御兄ちゃん!御嬢様で遊ばないのっ!」と叱られつつ、
「服の事ならエイミーさんに聞くと良いですよ。きっと良い品を選んで貰えます」
と伝えた。
「今日って13.9の月齢だったっけ?」
「いや~違うよ嬢ちゃん、新月だよ」
「じゃあ大丈夫かな?」
「だな」
二人(一匹は黒猫のアドニス)が何を気にしているのかと言うと、メイド長のエイミーはメリュジーヌ族(上半身が人、下半身が蛇)であり、月齢13.9の夜の前後に本性を現す。
そしてエイミーは元野生の兎であったウサギにその本性を知られたく無いのである。
最もウサギは知っているのだが。
兎も角エイミーが居ると思われる場所を探す。
先ずはこの時間帯だしと、エイミーに与えられている四階の部屋へ行くが不在。ならばと以前は一階にあったが今は工事中の為に臨時に二階へと移動したメイド達の仕事や支度部屋へ向かうが其所も不在。ちなみに其処に居たメイドのアンバーに「もしかしたら」と教えられた場所へ向かう。
「なあ嬢ちゃん」
「なぁにアドニス様」
ウサギの後にぴったりとくっついて来るアドニスに声を返すと、う~んと唸りながら、
「もし雰囲気が良かったらエイミーの邪魔するのはよそうな」
「…それは多分大丈夫じゃあないかなぁ」
どうやらアドニスはエイミーとザジの仲を勘繰って居るらしい。
でもそれはちょっと違うよねとウサギは思っている。
ウサギの目にはザジとエイミーは何となくではあるが、同じ職場の友人よりちょっとだけ仲が良い、同性の友人の様に見える。
ちなみに某大統領の補佐官曰く、ドワーフの酒友達みたいなものに見えるらしい。
つまりは友情以外は無いのである。
「それは嬢ちゃんの勘?」
「と言うより、ザジ先生もエイミーさんも多分違うと思いますよ?」
そう言って目的の部屋のドアを開けるとーー…
「ぬあーー!巻き上げられたぁあ!」
二階に使用人達用の臨時の遊戯室のドアを開けた先、執事見習いのイーサンが手にしたカードを盛大に空中へとばら蒔いて居た。
そしてイーサンが座って居た机にはスリーカードにストレートフラッシュの揃ったカードが。
どうやらポーカーをしていた様だ。
カードって確か、最近やっと印刷技術が向上してきて出回って来た遊びだった筈。ウサギは室内の机の上を見て、部屋中をぐるっと見渡した。
「ウサギ?」
「おや、御嬢様」
「アドニス様も?」
「遊びに来たの~?」
「御主人様御嬢様呼んだの?」
イーサンだけでなく、マルティンにアンジー、オットーにカメリア夫妻、ウサギの先生のザジにお目当てのエイミー、そしてレノ迄居た。
「…………」
呆然と佇むウサギ。
あ、ヤバッとアドニスはフォローをしようと口を拓いた途端…
「レノずるい!皆と遊んでてズルイずるいズルイ!」
「アイタタタッ」
グニャグニャグニャグニャッ!
ズルイと連呼するウサギにレノ、竜王は頬をグニャグニャと引っ張られ、痛みに悲鳴を上げる。
「うひゃぎいた、いひゃいって!」
モギュモギュと力任せに引っ張られるがレノは抗議をあげるのみで特に何もしない。
「レノー!」
理由は簡単。拗ねて居るだけだし少しすればウサギの気が済むからである。ここ数ヵ月ウサギの側に居て、これが一番早くウサギの機嫌を治す方法なのである。
…レノの頬は犠牲にはなるが。
「…御嬢様それ以上は幾らなんでも御主人様が丈夫とはいえ、裂けます」
「ひゃあっ!」
涙目になっていたレノに流石に憐れと思ったのか、珍しくマルティンが助けに入った。
但し確りと手には遊んで居ると思われるカードは握られたままだが。
「嬢ちゃん容赦無いなぁ」
呆れた様にアドニスは呟き、従者の物達は遠巻きにレノを心配して見ている。そして頬をグニャグニャに引っ張られたレノは床に蹲って痛みに耐えて居た。
「さ、裂けた?」
「…ウサギ言うに事欠いてソレか」
「あ」
「痛い」
「…ぁぅ」
「弁解を先に言うがな、此方も誘わなかったのは悪かったとは思う。だがウサギは何時もならそろそら寝る時間帯だったし、明日は街に行くのだろ?だから気を使って誘わなかったんだ」
「御免なさいっ」
「わかれば良い。此方も誘わずにすまなかった」
「あの、痛かった?レノゴメンね」
「悪いと思うなら次から、ちょ…あ~…まあ、気をつけてくれればそれで良い」
竜王、もといレノ、ウサギに激甘である。
そしてウサギもーー…
まだまだ御子様である。
あ、何か人選間違ったかも。
とか言うアドニス様の囁き声が聞こえたけど、護衛に付くことが多いキーラちゃんに例の件を言う。
「スカートだと不味いと思うの」
「例のあの娘ですね」
全くと吐息と共に吐かれた言葉にちょっと動揺してしまう。
「わ、悪い子じゃ無いと思うの。ただちょっと人とは違って…」
う~ん、後はフォローが思い付かない。
どうやっても無理だ。
「確かに普通とは違いますね、あの料理長の娘ですし」
良い意味か悪い意味かイマイチ分かりにくい事を言うリアム。
ちなみに先程からキーラと共にウサギの部屋の前で警備をしていた為居ても不思議では無いのだが、空気を読んで黙って居たようだ。最も今ので台無しになったが。
「オットーさんって普通じゃないの?」
「兵士としても格闘家としても一流で、そして料理人。普通ですか?」
「う~ん?」
「そして料理に使う包丁で五メートル程のモンスターを一撃で葬る」
「ふぇっ」
「普通ですか?」
「普通じゃないです」
コクコクと頷くしかないウサギ。
リアムはキーラに「御兄ちゃん!御嬢様で遊ばないのっ!」と叱られつつ、
「服の事ならエイミーさんに聞くと良いですよ。きっと良い品を選んで貰えます」
と伝えた。
「今日って13.9の月齢だったっけ?」
「いや~違うよ嬢ちゃん、新月だよ」
「じゃあ大丈夫かな?」
「だな」
二人(一匹は黒猫のアドニス)が何を気にしているのかと言うと、メイド長のエイミーはメリュジーヌ族(上半身が人、下半身が蛇)であり、月齢13.9の夜の前後に本性を現す。
そしてエイミーは元野生の兎であったウサギにその本性を知られたく無いのである。
最もウサギは知っているのだが。
兎も角エイミーが居ると思われる場所を探す。
先ずはこの時間帯だしと、エイミーに与えられている四階の部屋へ行くが不在。ならばと以前は一階にあったが今は工事中の為に臨時に二階へと移動したメイド達の仕事や支度部屋へ向かうが其所も不在。ちなみに其処に居たメイドのアンバーに「もしかしたら」と教えられた場所へ向かう。
「なあ嬢ちゃん」
「なぁにアドニス様」
ウサギの後にぴったりとくっついて来るアドニスに声を返すと、う~んと唸りながら、
「もし雰囲気が良かったらエイミーの邪魔するのはよそうな」
「…それは多分大丈夫じゃあないかなぁ」
どうやらアドニスはエイミーとザジの仲を勘繰って居るらしい。
でもそれはちょっと違うよねとウサギは思っている。
ウサギの目にはザジとエイミーは何となくではあるが、同じ職場の友人よりちょっとだけ仲が良い、同性の友人の様に見える。
ちなみに某大統領の補佐官曰く、ドワーフの酒友達みたいなものに見えるらしい。
つまりは友情以外は無いのである。
「それは嬢ちゃんの勘?」
「と言うより、ザジ先生もエイミーさんも多分違うと思いますよ?」
そう言って目的の部屋のドアを開けるとーー…
「ぬあーー!巻き上げられたぁあ!」
二階に使用人達用の臨時の遊戯室のドアを開けた先、執事見習いのイーサンが手にしたカードを盛大に空中へとばら蒔いて居た。
そしてイーサンが座って居た机にはスリーカードにストレートフラッシュの揃ったカードが。
どうやらポーカーをしていた様だ。
カードって確か、最近やっと印刷技術が向上してきて出回って来た遊びだった筈。ウサギは室内の机の上を見て、部屋中をぐるっと見渡した。
「ウサギ?」
「おや、御嬢様」
「アドニス様も?」
「遊びに来たの~?」
「御主人様御嬢様呼んだの?」
イーサンだけでなく、マルティンにアンジー、オットーにカメリア夫妻、ウサギの先生のザジにお目当てのエイミー、そしてレノ迄居た。
「…………」
呆然と佇むウサギ。
あ、ヤバッとアドニスはフォローをしようと口を拓いた途端…
「レノずるい!皆と遊んでてズルイずるいズルイ!」
「アイタタタッ」
グニャグニャグニャグニャッ!
ズルイと連呼するウサギにレノ、竜王は頬をグニャグニャと引っ張られ、痛みに悲鳴を上げる。
「うひゃぎいた、いひゃいって!」
モギュモギュと力任せに引っ張られるがレノは抗議をあげるのみで特に何もしない。
「レノー!」
理由は簡単。拗ねて居るだけだし少しすればウサギの気が済むからである。ここ数ヵ月ウサギの側に居て、これが一番早くウサギの機嫌を治す方法なのである。
…レノの頬は犠牲にはなるが。
「…御嬢様それ以上は幾らなんでも御主人様が丈夫とはいえ、裂けます」
「ひゃあっ!」
涙目になっていたレノに流石に憐れと思ったのか、珍しくマルティンが助けに入った。
但し確りと手には遊んで居ると思われるカードは握られたままだが。
「嬢ちゃん容赦無いなぁ」
呆れた様にアドニスは呟き、従者の物達は遠巻きにレノを心配して見ている。そして頬をグニャグニャに引っ張られたレノは床に蹲って痛みに耐えて居た。
「さ、裂けた?」
「…ウサギ言うに事欠いてソレか」
「あ」
「痛い」
「…ぁぅ」
「弁解を先に言うがな、此方も誘わなかったのは悪かったとは思う。だがウサギは何時もならそろそら寝る時間帯だったし、明日は街に行くのだろ?だから気を使って誘わなかったんだ」
「御免なさいっ」
「わかれば良い。此方も誘わずにすまなかった」
「あの、痛かった?レノゴメンね」
「悪いと思うなら次から、ちょ…あ~…まあ、気をつけてくれればそれで良い」
竜王、もといレノ、ウサギに激甘である。
そしてウサギもーー…
まだまだ御子様である。
0
お気に入りに追加
881
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
この恋は始まらない
こう
恋愛
世界一可愛い読者モデルと、陰キャのオタクのラブコメです。
4/19更新しました。4ヶ月ぶりの本編更新しました。よんいちママ、麗奈ちゃん、ふゆお嬢様編です。
風夏ちゃんの出番はだいぶ先かな〜。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
勇者(俺)いらなくね?
弱力粉
ファンタジー
異世界で俺強えええとハーレムを目指す勇者だった... が、能力が発動しなかったり、物理的にハーレムを禁じられたりと、何事も思ったように行かない。
一般人以下の身体能力しか持ち合わせていない事に気づく勇者だったが、それでも魔王討伐に駆り出される。
個性的なパーティーメンバーたちに振り回されながら、それでも勇者としての務めを果たそうとする。これは、そんな最弱勇者の物語。
メイドから母になりました
夕月 星夜
ファンタジー
第一部完結、現在は第二部を連載中
第一部は書籍化しております
第二部あらすじ
晴れて魔法使いレオナールと恋人になった王家のメイドのリリー。可愛い娘や優しく頼もしい精霊たちと穏やかな日々を過ごせるかと思いきや、今度は隣国から王女がやってくるのに合わせて城で働くことになる。
おまけにその王女はレオナールに片思い中で、外交問題まで絡んでくる。
はたしてやっと結ばれた二人はこの試練をどう乗り越えるのか?
(あらすじはおいおい変わる可能性があります、ご了承ください)
書籍は第5巻まで、コミカライズは第11巻まで発売中です。
合わせてお楽しみいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる