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【02】選定!?俺が聖女なわけがない!
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神官の一人が高らかに祝詞を唱え始めると、広場全体が静まり返った。祈りの声が澄み渡る空気の中で響き渡り、俺の心にも不思議な静けさと興奮が同時に広がっていく。
祈りが終わり、ついに聖女選出の瞬間が訪れた。祭壇上空の空がパッと明るくなり、純白の光が降り注ぎ始める。周りの人々が息を飲むなか、俺もその光景に目を奪われた。
次の瞬間、光の柱が一人に向かって降り注ぎ、その後は選ばれた聖女が感極まる感動的なシーンが繰り広げられる――はずだった。
はずだったのに――。
「何だこれ!?」
驚きのあまり、俺は思わず大きな声を出してしまった。
祭壇から放たれた光の柱は、あろうことか俺に降り注いでいたのだ。
「えっ!? う、嘘だろ……?」
パニックになりながら、俺は周りを見渡す。皆の視線は俺に集中しており、その誰もが驚きと困惑の表情を浮かべていた。
神官たちも狼狽の色を隠せず、慌てたように何かを話し合い始めている。
王子も驚いた表情で俺を見つめていた。その目には戸惑いの色が浮かんでいる。
神官が一歩前に出て、深呼吸をしてから厳かに告げた。
「新たなる聖女として、か……彼が選ばれた!」
驚きの声が上がり、瞬く間に広場全体に広まっていく。
「お、俺が聖女なわけがない! 俺は男だぞ!?」
俺の叫びに、周囲がいっそうざわめいた。俺と王子に視線が集まっていくのが分かる。
「これは……間違いということはないのか?」
王子が戸惑いながら神官に質問をするのが聞こえた。普段は冷静なイメージの彼でさえ、予想外の事態に驚きを隠せない様子だ。
「た、確かに前代未聞のことですが……選定の儀は神聖な儀式です。間違いはあり得ません……」
神官が真剣な表情で答える。それを聞いた王子が、意を決したように俺の方を見た。
呆然と立ち尽くしている俺の方へ、王子が静かに歩み寄ってくる。
その美しい顔が近づくと、緊張のあまり心臓が飛び出しそうになった。
「君……名は何という?」
王子の優しく美しい声が響く。
「ル……ルセルです……」
名前を言うだけで声が上ずって、恥ずかしいくらいに顔が真っ赤になってしまった。
「ルセル……いい名前だ」
王子が俺の名を呼び、ニッコリと微笑む。その笑顔は太陽のようで眩しかった。思わず見惚れてしまうが、すぐに我に返る。今はこの事態をなんとか打開しなくてはいけないのだ。
「王子、これは何かの間違いです! 俺には聖女の力なんてありません!」
必死に訴えてみたが、王子は首を横に振り、優しく笑った。
「心配はいらないよ。君には自然と人を引きつける魅力があるようだ……きっと運命なんだと思う」
王子の微笑みがさらに広がる。優しい光がふわりと彼の瞳に宿り、その魅力に一瞬引き込まれそうになった。反則レベルで美しい。鼻血が出そうなくらいに。
——って、そうじゃなくて。
「いやいや、運命とかじゃなくて、俺は男なんですよ! 聖女って普通は女性ですよね?」
「確かに前例はないし、僕もまだ戸惑っている……でも、儀式の結果は覆せないんだ」
王子が俺の手をしっかりと握りしめる。
「だからこそ……こうなったからには、お互いに支え合って進んでいこう」
王子のその言葉に、俺は少し肩の力が抜けた。王子も実は混乱しているっぽいことが分かり、ちょっとだけ親近感が湧いてくる。
「うう……分かりました……」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。さあ、一緒に行こう」
王子は握っていた手を一度離し、改めて差し出した。俺は一瞬ためらったが、深呼吸してその手を取る。もう、この状況を受け入れるしかない。
「一体これからどうなってしまうんだ……」
俺は小さく呟きながら、王子に手を引かれて歩き出した。
祈りが終わり、ついに聖女選出の瞬間が訪れた。祭壇上空の空がパッと明るくなり、純白の光が降り注ぎ始める。周りの人々が息を飲むなか、俺もその光景に目を奪われた。
次の瞬間、光の柱が一人に向かって降り注ぎ、その後は選ばれた聖女が感極まる感動的なシーンが繰り広げられる――はずだった。
はずだったのに――。
「何だこれ!?」
驚きのあまり、俺は思わず大きな声を出してしまった。
祭壇から放たれた光の柱は、あろうことか俺に降り注いでいたのだ。
「えっ!? う、嘘だろ……?」
パニックになりながら、俺は周りを見渡す。皆の視線は俺に集中しており、その誰もが驚きと困惑の表情を浮かべていた。
神官たちも狼狽の色を隠せず、慌てたように何かを話し合い始めている。
王子も驚いた表情で俺を見つめていた。その目には戸惑いの色が浮かんでいる。
神官が一歩前に出て、深呼吸をしてから厳かに告げた。
「新たなる聖女として、か……彼が選ばれた!」
驚きの声が上がり、瞬く間に広場全体に広まっていく。
「お、俺が聖女なわけがない! 俺は男だぞ!?」
俺の叫びに、周囲がいっそうざわめいた。俺と王子に視線が集まっていくのが分かる。
「これは……間違いということはないのか?」
王子が戸惑いながら神官に質問をするのが聞こえた。普段は冷静なイメージの彼でさえ、予想外の事態に驚きを隠せない様子だ。
「た、確かに前代未聞のことですが……選定の儀は神聖な儀式です。間違いはあり得ません……」
神官が真剣な表情で答える。それを聞いた王子が、意を決したように俺の方を見た。
呆然と立ち尽くしている俺の方へ、王子が静かに歩み寄ってくる。
その美しい顔が近づくと、緊張のあまり心臓が飛び出しそうになった。
「君……名は何という?」
王子の優しく美しい声が響く。
「ル……ルセルです……」
名前を言うだけで声が上ずって、恥ずかしいくらいに顔が真っ赤になってしまった。
「ルセル……いい名前だ」
王子が俺の名を呼び、ニッコリと微笑む。その笑顔は太陽のようで眩しかった。思わず見惚れてしまうが、すぐに我に返る。今はこの事態をなんとか打開しなくてはいけないのだ。
「王子、これは何かの間違いです! 俺には聖女の力なんてありません!」
必死に訴えてみたが、王子は首を横に振り、優しく笑った。
「心配はいらないよ。君には自然と人を引きつける魅力があるようだ……きっと運命なんだと思う」
王子の微笑みがさらに広がる。優しい光がふわりと彼の瞳に宿り、その魅力に一瞬引き込まれそうになった。反則レベルで美しい。鼻血が出そうなくらいに。
——って、そうじゃなくて。
「いやいや、運命とかじゃなくて、俺は男なんですよ! 聖女って普通は女性ですよね?」
「確かに前例はないし、僕もまだ戸惑っている……でも、儀式の結果は覆せないんだ」
王子が俺の手をしっかりと握りしめる。
「だからこそ……こうなったからには、お互いに支え合って進んでいこう」
王子のその言葉に、俺は少し肩の力が抜けた。王子も実は混乱しているっぽいことが分かり、ちょっとだけ親近感が湧いてくる。
「うう……分かりました……」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。さあ、一緒に行こう」
王子は握っていた手を一度離し、改めて差し出した。俺は一瞬ためらったが、深呼吸してその手を取る。もう、この状況を受け入れるしかない。
「一体これからどうなってしまうんだ……」
俺は小さく呟きながら、王子に手を引かれて歩き出した。
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