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08☆甘い日常

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翌朝目覚めると、隣に十夜の姿はなかった。シャワーの音が聞こえるので、浴室にいるのだろう。
ゆっくりと起き上がると、身体が綺麗になっていることに気付いた。昨日あんなにぐちゃぐちゃドロドロだったはずなのに、しっかりとパジャマも着ている。
(あれ?昨日のことは夢……?)
そんなことを思ってみたが、夢にしてはリアル過ぎた。何より、身体の怠さが現実であることを物語っている。
ボーっとしていると、ガチャッと扉が開いた。
「おはよう、起きたのか?」
十夜が髪を拭きながら入ってくる。
「う、うん、おはよ……」
「どうした?」
「あの……僕、パジャマを着た覚えがないんだけど……」
「ああ、俺が着替えさせたぞ。ついでに色々綺麗にしておいた」
「うう、やっぱり……」
あんなことをしてしまっただけでも恥ずかしいのに、身体を見られた上に、後始末までされてしまったなんて。顔が熱くなっていくのを感じる。
「今日は仕事午後からだし、ゆっくりしようぜ」
そう言うと、十夜は再び布団の中に潜り込んできた。
「ちょっと待って、またここで寝るつもり!?」
「だってここが一番暖かいし」
そう言いながら抱き付いてくる。
「僕は湯たんぽじゃないぞ……」
文句を言いつつも、十夜を引き剥がすことができない僕だった。

結局、そのままベッドでダラダラと過ごしてしまい、気付いた時には昼過ぎになっていた。
「まずい、もうこんな時間じゃん!」
慌てて飛び起きると、ちょうどインターホンが鳴り、マネージャーが迎えに来る。
『お疲れ様でーす』
「わああ、お疲れ様です!すみません、ちょっと待ってください」
大急ぎで準備をして、車に乗り込んだ。
「ごめんなさい、遅くなってしまって……」
十夜と二人で謝るが、怒られたりはせず、むしろ心配されてしまう。
「大丈夫ですよ。それより、何かあったんですか?」
「え!?い、いや、べべ別に何も……」
つい動揺してしまい、声が裏返ってしまった。これでは余計に怪しまれてしまう……。
「そうですか?まあ、体調が悪くなければいいですけど。では、スケジュールを確認しますね」
「はい……」
なんとか誤魔化せたようだ。

スケジュールを確認している最中に、ふと、視線を感じる。横を向くと、十夜が僕をじっと見つめていた。
「どうかした?」
目が合うと、ニヤリと笑って小声で伝えてくる。
「昨日の夜のお前、可愛かったなって思って……」
「っ!?」
思わず声が出そうになるのを必死で堪えた。
マネージャーにはバレていないようでホッとする。
「もう、変なこと言うなよ……」
「ははっ、悪い悪い」
全く悪びれずに笑っている。本当にタチが悪い。悔しいので、仕返ししてやることにした。
「……まあ、僕も気持ち良かったけど」
耳元で囁いてやる。すると、十夜の頬が赤く染まった。
「お前……何てことを……」
やったぞ、と思いながら、ふと十夜の股間のあたりを見ると、そこが大変なことになっている。
「ちょ!?何で今そんなトコ元気にしてんだよっ」
「お前のせいだろっ」
小声とはいえマネージャーの前でこんな会話をしてしまうなんて。ヒヤヒヤしながら前を向くと、ミラー越しに目が合った。
「本当に仲が良いですねぇ」
微笑ましいものを見るような視線を向けられ、居たたまれない気持ちになってしまう……。


今日は事務所での打ち合わせだけだったので、珍しくいつもより早い時間に仕事が終わった。
「夕飯どうしようか。帰りに何か買っていく?」
以前ならお店に寄って夕飯を食べて帰っていたが、最近はファンやマスコミ達に見つかると面倒なので、あまり外食をしなくなっているのだ。
テイクアウトでも買って帰ろうかなと思って聞いてみると、十夜が意外な提案をする。
「光輝の手料理が食べたいなぁ」
「えっ……?僕の……?」
そういえば、一緒に暮らし始めてから、まだ料理をしたことがなかった。せっかくの最新設備が整ったキッチンを、まだ一度も使っていないのだ。
忙しくて時間が無かったことが原因だが、じつは料理をする機会を避けていた部分もある。
僕は簡単なものなら作れないこともないが、十夜の口に合うかどうかが不安なのだ。
お坊ちゃまだったコイツは、小さい頃から高級な料理をたくさん食べているだろう。さらに、本人も料理が上手い。
僕の手料理なんて、恥ずかしくてとても食べさせられない……。
「うーん、今日は中華弁当が食べたい気分なんだよね。今度作るよ!」
苦笑いを浮かべて答えると、十夜に力強く肩を掴まれた。
「約束だからな」
「わ、分かったよ……」
凄まれて思わず了承してしまう。僕の返事を聞いた十夜は、期待に満ちた表情を見せていた。プレッシャーがすごい……。
とりあえず、今日のところはお弁当を買って帰ったのだった。
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