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第5章
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「と、いうわけですので、これからは王太后様からの助言や、逆に王太后様に伝えた事柄などは、全て私を通して行うことになります。」
ポートの次に話し出したエラルダの面会の話はかなり予想外で、話を聞いた全員は呆気にとられたまましばらく黙ってしまった。
少し間が空いてしまったけれど、話しを進めるためにディランが軽く咳払いをして、話の整理をする。
「あー、つまりあれか。いつも通りの困った行動という事だな?」
「王太后様のお力をうまく使えば確かに優位に事を運ぶことができますし、ありがたいことではありますが。」
エラルダは否定する言葉を用いず、ただ言葉の先を口にせずに苦笑した。
コルネリア様の助力を得られるのはエラルダの言うように確かに強力なのだろう。話を聞く限りではコルネリア様の繋がりをそのままディランに移すことができるだけで、貴族社会における立場は強固になるに違いない。ただ、表立って動けないのでコルネリア様が直接働きかけるのではなく、機会を与えたりといった手をまわすくらいの事しかできないけれど。
そして、その動きをエラルダを通してディランに伝え、逆にディランからコルネリア様にこれからの動きなどを伝える時もエラルダを通して伝えてもらう。その延長でエラルダには近衛の副団長に戻ってもらい、近衛にいる不穏分子を取り除きたいと。
ディランが治める将来の王国のためと言えばなるほど良い話だと思うかもしれないけれど、よくよく見てみると、そのどれもこれもがコルネリア様の利になるところなのだ。
ディランに自分は味方であると伝えるだけで、ディランが国王に成ったときは何かと融通が利きやすくなる。エラルダを通して行うというのも、詰まるところ王太后側の人員をほとんど割くことなく情報を容易に共有できるからである。エラルダが近衛に戻って副団長となり、不穏分子を取り除くことも、コルネリア様の身近に迫る危険を無くすためであるし、もっと言えばエラルダが副団長となることで、大きく体制を変えることなく、一定の信頼関係のもと仕事を割り振ることができると言うところが大きい。
何より、そうしてディランがうまく国王に成るというところでさえコルネリア様の望みであり、私たちに恩を売っておいて仲良くしたいという下心まで見えてくるので、困った人だなと思わずにはいられない。
「そうだな。まあ、悪くはない。確かに王太后様の力を借りることができれば、クライフ兄上の勢力が多少上回っていたところで問題はない。ライム。この問題が片付いたら王太后様が会いに来ると思うが、好きにさせてやれ。」
「その言い方では何をされるのか怖くなってしまいますが、まあ、ご機嫌はとっておきます。」
コルネリア様がいかに可愛らしいおばあちゃんだったとしても、王太后の訪問に逃げ出すことは難しいだろう。これからディランと共に王国を支えようとするならば猶更だ。
・・・私たちが王国に射られたらの話だけどね。
ドラゴン討伐の一件以来、私はディランやみんなと一緒に王国を支えていく未来が見えなくなってしまった。美景は今後の状況次第ではそれ程難しくないと思っているけれど、私はどうしても別れが近いような気がしてしまうのだ。
そこで私は今ドラゴン討伐から帰ってくる途中である本隊がいつ王都に到着するのだろうかと思い浮かんだ。
「ディラン。リアナたちはいつこちらに到着するでしょうか。」
ディランは私たちの質問に僅かに目を伏せて考える。
「何とも言えないところだが、早くて4日、遅くとも8日後には到着するだろうな。どちらにしても時間があまりないことは確かだ。本隊が帰ってくる前に一度リアナ達と話を合わせる必要があるし、ウォルトス兄上と父上にも話を通しておかないといけない。」
本隊が帰ってきたときに、騎士や兵士たちがドラゴンを討ち取ったのに相応しい態度で帰還しなければ、何かあったのかと民衆を不安にさせるし、妙に勘繰られる可能性がある。リアナや主要な人物とは王都の外で話をしておいた方がいい。オーランド男爵が何やら動いているようなので、あまり手間取らないかもしれない。
ウォルトス王子と国王にも今回の討伐の詳細を伝えておかないといけないだろう。今この王国を動かしている中心人物二人である彼らにはこれからの付き合い上隠し通しておくことは難しい。少なくとも皇国が私たちをどういった目で見ているかは伝えておかないといけない。それに変に隠しておくと、今のほぼ唯一の後援であるウォルトス王子に疑念を抱かれるかもしれないし、それは得策ではない。
問題があるとすると・・・。
「今、国王やウォルトス王子と話すことはできそうですか?」
私たちの疑問は、ただ話すという事ではなく、各個人と話し合う機会を設けられるかどうかという事だけど、ディランはため息をついて俯く。
「それが一番難しいところだ。明朝、ルーダス兄上とマルク、そしてフェルノア姉上が帰ってくるそうだ。フェルノア姉上は滅多に顔を出す人ではないからまだいいが、ルーダス兄上とマルクは恐らく明日の内に会いに来るだろう。食事にも出るだろうし、ルーダス兄上の側近やマルクの側近が全員帰ってくることになるので、秘密裏に動くのも難しくなる。どうしたものかな。」
王都を離れていた兄弟明日帰って来るらしい。これが大きな障害となるわけだ。基本的には私たちの話はディランが信用する者にしか話していない。国王、リアナ、ロア、ウォルトス王子、イリアナ、コルネリア、エレア、後はまあオーランド男爵も。オーランド男爵の場合は話してはないんだけどね。
とにかく、ディランの敵には回らず、他言しない人ばかりにしか話してはいない。けれど、これから帰ってくる兄弟たちは、ディランの敵になる人たち。少なくとも現時点で味方ではない人たちである。そんな人たちのいる前で私たちに関する話などできるはずがない。
そして、兄弟が帰ってくるという事は、その兄弟についていた側近たちも帰ってくることになり、城には騎士やら侍女やらが増えてくることになる。つまり目が多くなるのだ。
以前私たちがウォルトス王子にあったような行動がより難しくなるし、今度は見つかったらすぐその情報が主に伝わる。誤魔化しができなくなる。
救いはウォルトス王子とは協力体制が出来上がっているので、以前よりも容易に、不審がられずに面会できる土壌が出来上がっているところだろうか。
「ただ、それでも城の中でならばどこで話を聞かれるかわからない。注意をするに越したことはないだろう。」
バレれば即終了である私たちの事は確実に安全であるという方法でしか話せないと言うディラン。
みんなが頭を悩ませる中、エラルダは少し上を向いて考えた後に苦笑した。
「では、少し早いですが、あの方のお力を借りることにしましょう。」
ポートの次に話し出したエラルダの面会の話はかなり予想外で、話を聞いた全員は呆気にとられたまましばらく黙ってしまった。
少し間が空いてしまったけれど、話しを進めるためにディランが軽く咳払いをして、話の整理をする。
「あー、つまりあれか。いつも通りの困った行動という事だな?」
「王太后様のお力をうまく使えば確かに優位に事を運ぶことができますし、ありがたいことではありますが。」
エラルダは否定する言葉を用いず、ただ言葉の先を口にせずに苦笑した。
コルネリア様の助力を得られるのはエラルダの言うように確かに強力なのだろう。話を聞く限りではコルネリア様の繋がりをそのままディランに移すことができるだけで、貴族社会における立場は強固になるに違いない。ただ、表立って動けないのでコルネリア様が直接働きかけるのではなく、機会を与えたりといった手をまわすくらいの事しかできないけれど。
そして、その動きをエラルダを通してディランに伝え、逆にディランからコルネリア様にこれからの動きなどを伝える時もエラルダを通して伝えてもらう。その延長でエラルダには近衛の副団長に戻ってもらい、近衛にいる不穏分子を取り除きたいと。
ディランが治める将来の王国のためと言えばなるほど良い話だと思うかもしれないけれど、よくよく見てみると、そのどれもこれもがコルネリア様の利になるところなのだ。
ディランに自分は味方であると伝えるだけで、ディランが国王に成ったときは何かと融通が利きやすくなる。エラルダを通して行うというのも、詰まるところ王太后側の人員をほとんど割くことなく情報を容易に共有できるからである。エラルダが近衛に戻って副団長となり、不穏分子を取り除くことも、コルネリア様の身近に迫る危険を無くすためであるし、もっと言えばエラルダが副団長となることで、大きく体制を変えることなく、一定の信頼関係のもと仕事を割り振ることができると言うところが大きい。
何より、そうしてディランがうまく国王に成るというところでさえコルネリア様の望みであり、私たちに恩を売っておいて仲良くしたいという下心まで見えてくるので、困った人だなと思わずにはいられない。
「そうだな。まあ、悪くはない。確かに王太后様の力を借りることができれば、クライフ兄上の勢力が多少上回っていたところで問題はない。ライム。この問題が片付いたら王太后様が会いに来ると思うが、好きにさせてやれ。」
「その言い方では何をされるのか怖くなってしまいますが、まあ、ご機嫌はとっておきます。」
コルネリア様がいかに可愛らしいおばあちゃんだったとしても、王太后の訪問に逃げ出すことは難しいだろう。これからディランと共に王国を支えようとするならば猶更だ。
・・・私たちが王国に射られたらの話だけどね。
ドラゴン討伐の一件以来、私はディランやみんなと一緒に王国を支えていく未来が見えなくなってしまった。美景は今後の状況次第ではそれ程難しくないと思っているけれど、私はどうしても別れが近いような気がしてしまうのだ。
そこで私は今ドラゴン討伐から帰ってくる途中である本隊がいつ王都に到着するのだろうかと思い浮かんだ。
「ディラン。リアナたちはいつこちらに到着するでしょうか。」
ディランは私たちの質問に僅かに目を伏せて考える。
「何とも言えないところだが、早くて4日、遅くとも8日後には到着するだろうな。どちらにしても時間があまりないことは確かだ。本隊が帰ってくる前に一度リアナ達と話を合わせる必要があるし、ウォルトス兄上と父上にも話を通しておかないといけない。」
本隊が帰ってきたときに、騎士や兵士たちがドラゴンを討ち取ったのに相応しい態度で帰還しなければ、何かあったのかと民衆を不安にさせるし、妙に勘繰られる可能性がある。リアナや主要な人物とは王都の外で話をしておいた方がいい。オーランド男爵が何やら動いているようなので、あまり手間取らないかもしれない。
ウォルトス王子と国王にも今回の討伐の詳細を伝えておかないといけないだろう。今この王国を動かしている中心人物二人である彼らにはこれからの付き合い上隠し通しておくことは難しい。少なくとも皇国が私たちをどういった目で見ているかは伝えておかないといけない。それに変に隠しておくと、今のほぼ唯一の後援であるウォルトス王子に疑念を抱かれるかもしれないし、それは得策ではない。
問題があるとすると・・・。
「今、国王やウォルトス王子と話すことはできそうですか?」
私たちの疑問は、ただ話すという事ではなく、各個人と話し合う機会を設けられるかどうかという事だけど、ディランはため息をついて俯く。
「それが一番難しいところだ。明朝、ルーダス兄上とマルク、そしてフェルノア姉上が帰ってくるそうだ。フェルノア姉上は滅多に顔を出す人ではないからまだいいが、ルーダス兄上とマルクは恐らく明日の内に会いに来るだろう。食事にも出るだろうし、ルーダス兄上の側近やマルクの側近が全員帰ってくることになるので、秘密裏に動くのも難しくなる。どうしたものかな。」
王都を離れていた兄弟明日帰って来るらしい。これが大きな障害となるわけだ。基本的には私たちの話はディランが信用する者にしか話していない。国王、リアナ、ロア、ウォルトス王子、イリアナ、コルネリア、エレア、後はまあオーランド男爵も。オーランド男爵の場合は話してはないんだけどね。
とにかく、ディランの敵には回らず、他言しない人ばかりにしか話してはいない。けれど、これから帰ってくる兄弟たちは、ディランの敵になる人たち。少なくとも現時点で味方ではない人たちである。そんな人たちのいる前で私たちに関する話などできるはずがない。
そして、兄弟が帰ってくるという事は、その兄弟についていた側近たちも帰ってくることになり、城には騎士やら侍女やらが増えてくることになる。つまり目が多くなるのだ。
以前私たちがウォルトス王子にあったような行動がより難しくなるし、今度は見つかったらすぐその情報が主に伝わる。誤魔化しができなくなる。
救いはウォルトス王子とは協力体制が出来上がっているので、以前よりも容易に、不審がられずに面会できる土壌が出来上がっているところだろうか。
「ただ、それでも城の中でならばどこで話を聞かれるかわからない。注意をするに越したことはないだろう。」
バレれば即終了である私たちの事は確実に安全であるという方法でしか話せないと言うディラン。
みんなが頭を悩ませる中、エラルダは少し上を向いて考えた後に苦笑した。
「では、少し早いですが、あの方のお力を借りることにしましょう。」
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