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第3章

少年少女の社交界

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 流し場から戻った後、すぐにディラン達と合流することはできそうになかったので私たちとリィーネはしばし別行動してタイミングを計ることにした。

 なにせディランの周りにはたくさんの人だかりができており、その近くにいたルーナたちも多くの人と話していた。

 ディラン達のそばに行っても別に問題ないだろうとは思う。私たちはエレアナとともに来た知人ということになっているし、どちらかというと護衛対象がそばにいない方が本当は問題がある。

 しかし、ディランと話したがっているのは豪奢でありながら品のある服装に身を包むいかにもな貴族たちである。その中にはこの国でもかなりの実権を握る人物も少なからずいるだろう。

 冒険者とは言え全くの一般人とは絶対に言えないディランやエレアナの面々はこの社交会に出席している人間とある程度は友好的に接しておかないと後々困ったことになってしまうかもしれない。

 王位に興味がないとは言っても無関係ではいられない。

 それに半ばつながりがあることで下手な関係を築けば圧力をかけられる可能性もある。この先自由な活動ができなくなるかもしれない。

 そうならないためにもここで十分に話す機会を作っておいた方がいいと考えたわけだ。

 私たちが離れていったところを見たディランが一瞬表情を曇らせるが、すぐににこやかになって周囲の人々に愛想を振りまく。

 「お、お初にお目にかかります。」

 不意に後ろから声をかけられたので驚いたが、おくびにも出さずに笑顔で振り向く。

 金髪のサラサラなおかっぱスタイルの少年が緊張しながらお辞儀をしている。

 「わ、私はアルトハイク伯爵家の長男。フェレク=アルトハイクと申します。以後お見知りおきを。」

 自己紹介を終えると、フェレクは私たちの顔を見て少し顔が赤くなる。

 なかなか可愛いじゃないか。

 「私はライム=フォスターと申します。伯爵様のご長男のような高貴な方にお会いできるなんと光栄なことでしょうか。」

 私たちは優雅にお辞儀を返し、無難ともいえる挨拶を交わす。

 「ディラン王子のお知り合いであるライム様にそう言っていただけるのは嬉しい限りです。それでその・・もしよろしければ向こうでお話しませんか?」

 かなり緊張しているようで薄っすらと汗が浮いてきているようだ。手に浮かんだ汗をさりげない動作で服で拭っている。

 示された場所はカルミュット子爵にも教えてもらっていた子供たちがいるスペースである。

少ないとはいえここには社交界デビューした子供たちがいる。けれど大人たちとのやり取りはまだまだ難しいというものも当然いる。社交界に出れば大人のふるまいを絶えず要求されることとなるのだが、それでもすぐには対応できないというものだ。

 なので子供たち同士が集まりなれない者同士で徐々に慣らしていくために自然とそう言ったスペースが出来上がるのだろう。

 しかし、それにしてもこの少年は緊張しすぎである。となればおのずと答えがわかるというもの。こういうのは美景のそばに長年いた私ならすぐに理解できる。

 「私も貴族様方のお話に混ぜていただけるというのでしたら、ぜひお願いします。」

 少年はすっと手を私たちの前に手を伸ばしたのでその手を取る。

 瞬間びくっとして、冷や汗で少し手が湿っぽくなった。

 これは初々しいですな~。

 ゆっくりと手を引くフェレクに静かについていき、やがて周りには子供たちだけが見えるようになった。

 「フェレク様。お連れになった方はディラン様と一緒にいらっしゃった方ですか?」

 「と、とても美しい。是非お名前を教えてほしいのですが。」

 「ぜひ今後も友好を深めていきたいと―。」

 私たちが見えた瞬間にできる人だかり。

 男7女3の割合で迫る貴族の子供たちに質問攻めにあい、それに落ち着いて順に返答していく。

 かなりがっつきすぎな気もするが、これはやっぱりディランと一緒にいるということが大きいのかもしれない。

 親にいろいろ吹き込まれていることも考えられるかな。

 「そんな一気に集まったらライム様が疲れるでしょう!」

 返答が追い付かなくなってきたところで私たちと集まってきた子供たちの間に少女が割って入った。

 少女は燃えるように赤い髪に金色の瞳を持つ美少女であり、かわいいというよりはかっこいいと言われそうな将来が見えるような勝気な顔をしていた。

 その少女は眉を吊り上げてカット目を見開き、私たちをかばうように手を大きく広げて私たちに興味津々な子供たちの前に立ちふさがる。

 「ライム様。少しここから離れて静かになれる場所に移りましょう。」

 有無を言わさずに私たちの手を取ってずんずんと歩き始める少女。

 私たちの後を追おうとした子供たちは振り返ってじろりとにらむ少女の剣幕にすくみ上ってそれ以上ついてこようとはしなかった。
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