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第2章
エラルダさんは紳士!
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本日はついにエレアナとリングルイの2パーティー合同のドルン山脈攻略の日だ。
昨日の夜は結構楽しめたけど、色々なことがありすぎた。また語る日も来ると思うのでその話はその時に。
私たちは今、ルーナのカバンの中で揺られ揺られてドルン山脈へ続く林道を移動していた。
林道は非常に穏やかなもので、モンスターが出てくる気配さえなかった。けれどそれはそれで不気味だった。
「まったく出てこないな。ここら辺は前来た時よりモンスターの数が減ってるのか?」
ポートもモンスターの気配が全くない周囲の異変を不気味に感じたらしい。そして以前は普通に襲ってきたみたいな口ぶりだ。
「いや、そんなことは聞いたことがないんだけど・・・確かに変だね。」
リーノも違和感を感じているらしい。そしてその原因と思っている者にちらちらと視線を向けてくる。
すなわち私たちに。
けれど別に私たちは何もしていないし、そんな効果がある能力も持っていない。ステータスを見ることができる今ならほぼ断言できる。
ただ一つ、全くどういった能力なのかわからないものはあるけれど、それも詳細を見る限りモンスターが出てこなくなるような効果だとは思えない。
むしろモンスターが寄ってたかった襲ってくるみたいな能力だと思うからだ。
ということで私たちは冤罪をかけられている!私たちは無実だ!
「ライムのせいではありませんよ。ドーラに来る道中でも定期的にモンスターに襲われたりしていましたし、その前にも戦闘はありました。」
リーノの視線に気づいたルーナがとげとげしい雰囲気を前面に押し出しながらそう言った。
リーノもそれを聞いて何を思ったのかわからないが、とりあえず矛を収めてくれたようだ。
ずいぶんと雰囲気が悪い。
けれどそれは主にリーノとルーナのせいなので、全体的にはむしろ和やかだったりする。
ニーナは私たちに早くいいところを見せたいのか、ずいぶんと気合が入っているし、私たちのほうに笑顔を向けてくる。
メイリーンはなんだかんだ言ってポートが気になっているようで、たまーにポートのほうを見てはため息をついてまた向き直るを繰り返していた。
逆にポートは絶対にメイリーンのほうを見ようとしていなかった。それはもう徹底して。
いずれこの二人の関係もちゃんと聞いてみたい。絶対面白いと思うし。
(のーちゃん趣味悪いよ~。)
(美景だってこういう話嫌いじゃないでしょ?)
(まあそうだけど。)
エラルダさんは今日も完璧な身のこなしでいかにもな紳士だった。というかこの人の戦闘スタイルって腰に下げている片手剣からして盾無し片手剣スタイルなんだと思うけど、とてもスタイリッシュな戦いぶりになるのだろうと期待してしまう。
早くエラルダさんの雄姿を見てみたいです!
ランベルさんは朝っぱらから酒をあおっている。
そして悪酔いしてレナに絡んでいる。
(あ、レナが思いっきり顔面殴った。)
(けど本人は何事もなかったかのように豪快に笑ってるね。)
(変態なんだね。)
(残念な人なんだね。)
ランベルはなんというか、近所の陽気なおっちゃんという感じ。
私の家の近所に住んでいた高倉さんとこのおやじさんが確かこんな感じだったような。
妙な親近感を覚えるのはこれが理由なんだろうか?
ディランはリーノとルーナの無言の争いに頭を痛めつつ、それでもほかのみんなとの関係は良好なのが救いと思い直し、とりあえず先に進んでしまおうと思っている様子。
今のところ問題も起こっていないしまあそれでいいんじゃないだろうか。
ここでちゃんと解決するまで議論するわけにもいかないし、そもそもどちらも証拠が出せない以上、私たちが危険かそうでないかを判定することはできないわけだし。
そんな感じで私たちは歩み続け、ついに一度の戦闘もしないまま、目的の洞窟入口についてしまった。
洞窟入口付近は草も回らに生えているだけで開けていて、木漏れ日のさす林道の中とはまた違った雰囲気の場所だった。
林道がハイキングコースだとしたら、洞窟付近はまるで地獄の入り口が明るい太陽に照らされているような印象だ。
しかし、こういうドルン山脈の中と外の境界にあたる場所は唯一安全地帯ということのできる場所らしく、ここでは洞窟に入る前の最後の休息をとることがこの場所を探索する冒険者のお決まりだった。
「よし。それじゃあ昼ご飯の準備をして、食事が終わり次第洞窟に入ることにしよう。」
ディランの指示でみんな動き出し、荷物を隅に固めた後はレナとエラルダさんの指示で料理の準備が進められていく。
「それでは私はシチューを作ることにします。」
「じゃあ私はステーキとサラダを作りますね。」
ふむふむ。エラルダさんは牛乳みたいな飲み物であるルンブルノアをを使ったシチューを作るらしい。
そしてレナは同じくルンブルを使ったステーキとニギという葉物野菜を使ったサラダを作るらしい。
というかエラルダさん。まさか料理までできるんですか。美景みたいな完璧超人の部類の人間なんでしょうか?
(本当にどこかの有名貴族の執事だったんじゃない?)
(でもなんでこんなできる執事さんが冒険者なんかになったんだろうか。)
エラルダさんの株はうなぎのぼりに上がっているのだが、その反面なんでこんな一件野蛮に見える冒険者なんてやってるんだろうか。
まあそんなことを指摘すれば、エレアナの面々はもちろん、リーノだって同じことが言えるわけだけど。
考えたって仕方ないか。みんなが話してくれるか、じきにわかることだろうし、今のところは考えないようにしておこう。
料理が完成し、みんなの前に並んでいく。
「それじゃあとっとと食って、先に進もうぜ。」
リーノがそういうと、ディランも頷き、静かに食事が始まる。
(おお!エラルダさんのシチューすごい濃厚でおいしい!)
エラルダさんの料理は絶品で、間違いなく一流の紳士であることが証明された瞬間だった。
昨日の夜は結構楽しめたけど、色々なことがありすぎた。また語る日も来ると思うのでその話はその時に。
私たちは今、ルーナのカバンの中で揺られ揺られてドルン山脈へ続く林道を移動していた。
林道は非常に穏やかなもので、モンスターが出てくる気配さえなかった。けれどそれはそれで不気味だった。
「まったく出てこないな。ここら辺は前来た時よりモンスターの数が減ってるのか?」
ポートもモンスターの気配が全くない周囲の異変を不気味に感じたらしい。そして以前は普通に襲ってきたみたいな口ぶりだ。
「いや、そんなことは聞いたことがないんだけど・・・確かに変だね。」
リーノも違和感を感じているらしい。そしてその原因と思っている者にちらちらと視線を向けてくる。
すなわち私たちに。
けれど別に私たちは何もしていないし、そんな効果がある能力も持っていない。ステータスを見ることができる今ならほぼ断言できる。
ただ一つ、全くどういった能力なのかわからないものはあるけれど、それも詳細を見る限りモンスターが出てこなくなるような効果だとは思えない。
むしろモンスターが寄ってたかった襲ってくるみたいな能力だと思うからだ。
ということで私たちは冤罪をかけられている!私たちは無実だ!
「ライムのせいではありませんよ。ドーラに来る道中でも定期的にモンスターに襲われたりしていましたし、その前にも戦闘はありました。」
リーノの視線に気づいたルーナがとげとげしい雰囲気を前面に押し出しながらそう言った。
リーノもそれを聞いて何を思ったのかわからないが、とりあえず矛を収めてくれたようだ。
ずいぶんと雰囲気が悪い。
けれどそれは主にリーノとルーナのせいなので、全体的にはむしろ和やかだったりする。
ニーナは私たちに早くいいところを見せたいのか、ずいぶんと気合が入っているし、私たちのほうに笑顔を向けてくる。
メイリーンはなんだかんだ言ってポートが気になっているようで、たまーにポートのほうを見てはため息をついてまた向き直るを繰り返していた。
逆にポートは絶対にメイリーンのほうを見ようとしていなかった。それはもう徹底して。
いずれこの二人の関係もちゃんと聞いてみたい。絶対面白いと思うし。
(のーちゃん趣味悪いよ~。)
(美景だってこういう話嫌いじゃないでしょ?)
(まあそうだけど。)
エラルダさんは今日も完璧な身のこなしでいかにもな紳士だった。というかこの人の戦闘スタイルって腰に下げている片手剣からして盾無し片手剣スタイルなんだと思うけど、とてもスタイリッシュな戦いぶりになるのだろうと期待してしまう。
早くエラルダさんの雄姿を見てみたいです!
ランベルさんは朝っぱらから酒をあおっている。
そして悪酔いしてレナに絡んでいる。
(あ、レナが思いっきり顔面殴った。)
(けど本人は何事もなかったかのように豪快に笑ってるね。)
(変態なんだね。)
(残念な人なんだね。)
ランベルはなんというか、近所の陽気なおっちゃんという感じ。
私の家の近所に住んでいた高倉さんとこのおやじさんが確かこんな感じだったような。
妙な親近感を覚えるのはこれが理由なんだろうか?
ディランはリーノとルーナの無言の争いに頭を痛めつつ、それでもほかのみんなとの関係は良好なのが救いと思い直し、とりあえず先に進んでしまおうと思っている様子。
今のところ問題も起こっていないしまあそれでいいんじゃないだろうか。
ここでちゃんと解決するまで議論するわけにもいかないし、そもそもどちらも証拠が出せない以上、私たちが危険かそうでないかを判定することはできないわけだし。
そんな感じで私たちは歩み続け、ついに一度の戦闘もしないまま、目的の洞窟入口についてしまった。
洞窟入口付近は草も回らに生えているだけで開けていて、木漏れ日のさす林道の中とはまた違った雰囲気の場所だった。
林道がハイキングコースだとしたら、洞窟付近はまるで地獄の入り口が明るい太陽に照らされているような印象だ。
しかし、こういうドルン山脈の中と外の境界にあたる場所は唯一安全地帯ということのできる場所らしく、ここでは洞窟に入る前の最後の休息をとることがこの場所を探索する冒険者のお決まりだった。
「よし。それじゃあ昼ご飯の準備をして、食事が終わり次第洞窟に入ることにしよう。」
ディランの指示でみんな動き出し、荷物を隅に固めた後はレナとエラルダさんの指示で料理の準備が進められていく。
「それでは私はシチューを作ることにします。」
「じゃあ私はステーキとサラダを作りますね。」
ふむふむ。エラルダさんは牛乳みたいな飲み物であるルンブルノアをを使ったシチューを作るらしい。
そしてレナは同じくルンブルを使ったステーキとニギという葉物野菜を使ったサラダを作るらしい。
というかエラルダさん。まさか料理までできるんですか。美景みたいな完璧超人の部類の人間なんでしょうか?
(本当にどこかの有名貴族の執事だったんじゃない?)
(でもなんでこんなできる執事さんが冒険者なんかになったんだろうか。)
エラルダさんの株はうなぎのぼりに上がっているのだが、その反面なんでこんな一件野蛮に見える冒険者なんてやってるんだろうか。
まあそんなことを指摘すれば、エレアナの面々はもちろん、リーノだって同じことが言えるわけだけど。
考えたって仕方ないか。みんなが話してくれるか、じきにわかることだろうし、今のところは考えないようにしておこう。
料理が完成し、みんなの前に並んでいく。
「それじゃあとっとと食って、先に進もうぜ。」
リーノがそういうと、ディランも頷き、静かに食事が始まる。
(おお!エラルダさんのシチューすごい濃厚でおいしい!)
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