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第二部 アダラ星編
第84話 次の仕事に向けて
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借金問題も解決したし、第四王女との問題も解決した。
後は皇王問題が解決すれば全て解決か……。
だが、皇王問題については何度も侯爵と協議しているが、解決の目処が立たない。
これは、以前リリスが言っていたように、こちらが多少は譲歩しないと駄目かもしれないな。
皇王の称号だけもらって、権利は放棄し、セレストに帰る。
この線で進めてみることにしよう。
それと、借金問題は解決したとはいえ、チハルの金をあてにしているようでは駄目だ。
俺は親の脛は齧っても、女のヒモになるつもりはない。
褒められた台詞ではないが、引き篭りとしての最後の矜持だ。
できるだけ早い時期に次の仕事を熟そう。
と、いうことで、船から侯爵邸に戻った俺は、早く仕事を始めるためにも、ステファとも相談して、めげずに侯爵との協議にあたった。
「皇王を名乗ってもいいが、いくつか条件がある」
「おお、やっとその気になっていただけましたか!」
侯爵は感涙にむせぶように喜んでいる。
「喜ぶのはまだ早いぞ、その条件だが、俺は、シリウス皇国の政治にも戦争にも、ましてや、王位継承にも関わらない。
その上で、居住地はセレストにする。
そして、嫁はリリス以外にとらない。これは、万が一、リリスが亡くなることがあってもだ」
「それでは、皇王としての役目を果たせないではないですか!」
「そもそも、皇王としての役目とはなんだ。皇王は神と同じなのだろう。神は政治にも戦争にも直接加担しないだろ」
「それはそうかも知れませんが、折角のお力をシリウス皇国のために使っていただきたいものです」
「そうだな、孤児院の救済といったことになら使ってもいいかも知れないが、それも、俺が自分で決める」
大体、ご先祖様の出身地かもしれないが、そこまでしてやる義理はない。
今回、ここにいるのも、ステファに半ば脅されて強制されたからだ。ステファには同情しないでもないが、代わりになってやろうとまでは考えていない。
「実際問題、安全だと言われていた、この星でも命を狙われたんだ、絶対に安全なセレストに早い時期に戻りたい」
「それはセイヤ様がレース大会になど出られるから……」
「俺にずっと引き篭っていろというのか。なら、セレストに引き篭っていても一緒だろ」
引き篭り王子が何を言っているんだ。と言われそうだが、どうせ引き篭るならセレストがいい。
「困りましたな……」
侯爵はほとほと困り果てている。だが、迷惑しているのはこっちだ、ということを認識してもらいたいものだ。
「もう少しすれば国王陛下との会談の手筈が整います。そこで話し合ってもらいましょう」
侯爵は、自分だけでは手に負えないと判断したようだ。
「国王とか? ということはシリウスまで行けと」
「そうですね。いずれは行かなければならない訳ですし。護衛はつけますから心配しないでください」
俺が逃げないように、護衛という名の監視かを付けるわけか。
まあ、いい。さっさとシリウスまで行って、国王に会って、すぐにセレストに帰ろう。
そういえば、国王に会うのはいいが、国王は俺のことどう考えているんだ?
「本音として、国王は俺のことどうしたいんだ。まだ、聞いていなかったな」
「国王陛下ですか……。陛下の心情は複雑でしょう。法律的に見れば、セイヤ様を皇王にしない訳にはいきません。王が自ら法を曲げる訳にはいきませんからね。
ですが、父親としては、自分の子供を王にしたいでしょうね」
「俺が権力は要らないと言っているんだから、皇王の他に王もおけばいいんじゃないか」
「セイヤ様の意見を通せばそうなるでしょうが、それでも王は皇王の下になりますからね」
王であっても、トップでなければ意味がないか……。
本当に面倒くさいな。どうにかトンズラできないものだろうか。
結局、この日の協議では、近いうちにシリウスへ向かうということで話が終わった。
どうせシリウスに向かうなら、その間に何か仕事ができないかと、ギルドの依頼を見るために、侯爵邸から船に移る。
ギルドに行ってもよかったが、チハルがまた、レース大会のポスターでも見つけると厄介なので船にした。
チハルと一緒に手頃な仕事がないか、ブリッジのスクリーンに映し出される依頼票と睨めっこをする。
最初はチハルと二人で検討していた筈だが、いつの間にか女性陣がワラワラと集まっていた。
「この護衛依頼なんかどうなのよ?」
「ステファ、今は、余り貴族と関わりたくない」
「そうなの? 報酬はいいのに……」
「それに、狙われている俺が護衛依頼を受けるのは不味いだろ」
「狙われているといっても、航路上で、しかも、ギルドの依頼を遂行中に襲ってはこないわよ」
「そうなのか?」
「そんなことをすれば、航宙管理局とギルドを一度に敵に回すことになるわよ」
だがな、レース大会中に襲われたのに、あの対応では、ギルドはあてにならんな。
「これなどどうでしょう? 前にもやったレアメタルの採取みたいですが。今度は私もお嬢様とシャトルポッドで出られますし」
「それは駄目よ。レアメタルの種類の指定が単価の安いものばかりだもの。それだと大量に積める船でないと赤字になるわよ」
「そうなのですか……」
ステファに言われ、アリアは残念そうだ。折角ライセンスを取ったから、シャトルポッドに乗りたいのかも知れない。
ドックでは講習の途中で攫われて、ライセンスを取ることができなかったが、アダラ星に来て改めて講習を受けて取得したのだ。
ステファは忘れているようだが、魔力の充填を俺がやれば魔力代はタダだ。赤字になることはない。
だが、そんな依頼ばかり受けていると、赤字のはずなのにと、周りから怪しまれてしまう。できる限りそれは避けたい。
「ここに、相乗り希望とありますが、これは何ですか?」
「それは、一人では宇宙船を貸し切れないから、何人かで集まって乗って行こうということね」
「乗合馬車みたいな物ですか?」
「それはバスという乗り物が近いと思うけど。相乗りは、そのバスが通っていない場所に安く行こうとする場合にとる手段よ」
「だが、これ行先の希望はシリウスだぞ。ここからシリウスに定期のバスは通ってないのか?」
「そんなはずないじゃない。ちゃんと毎日シリウス行きの定期便は出ているわよ」
「それならなぜ相乗り希望なんだ。バスだと不都合があるのか……」
少し気になったので詳細を見てみた。
「乗船中の護衛も依頼内容に含まれているな。不特定多数が乗るバスでは安全が確保できないということか……」
「それは相乗りでも一緒じゃないの?」
「バスよりはまし、ということじゃないか。そのための護衛依頼なのだろう。本当なら貸切にしたいけど、そこまでお金がかけられない。といったところか」
「つまり、その人は狙われているということですか。そんな人を乗せるのは危険では?」
「そうだな……」
アリアの言うことももっともだ、無理に危険を冒す必要はない。
しかし、狙われているということなら俺も一緒だがな。
「あっ! この人ライブで歌っていた人です!」
一緒に詳細を確認していたリリスが突然声を上げた。
「ライブというと、レース大会の休憩中に行われたやつか?」
「そうです。ベル ダンディアという名前でした」
「確かにそんな名前でしたね」
「そうか、アイドルか。それならファンに付き纏われないためにバスは避けるか」
「でも、そういう人達って、普通、事務所で船を用意するもんじゃないの?」
「そうだよな……」
「何か事情があるのかも知れません。詳しい話を会って聞いてみませんか!」
リリスに、目をキラキラさせながら、期待に満ちた表情でお願いされた。
余程、生アイドルに会ってみたいのだろう。
リリスのこの様子じゃ断れないな。
俺はこの依頼を引き受けるか、本人に会って話を聞くことにした。勿論、リリス同席で。
後は皇王問題が解決すれば全て解決か……。
だが、皇王問題については何度も侯爵と協議しているが、解決の目処が立たない。
これは、以前リリスが言っていたように、こちらが多少は譲歩しないと駄目かもしれないな。
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俺は親の脛は齧っても、女のヒモになるつもりはない。
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できるだけ早い時期に次の仕事を熟そう。
と、いうことで、船から侯爵邸に戻った俺は、早く仕事を始めるためにも、ステファとも相談して、めげずに侯爵との協議にあたった。
「皇王を名乗ってもいいが、いくつか条件がある」
「おお、やっとその気になっていただけましたか!」
侯爵は感涙にむせぶように喜んでいる。
「喜ぶのはまだ早いぞ、その条件だが、俺は、シリウス皇国の政治にも戦争にも、ましてや、王位継承にも関わらない。
その上で、居住地はセレストにする。
そして、嫁はリリス以外にとらない。これは、万が一、リリスが亡くなることがあってもだ」
「それでは、皇王としての役目を果たせないではないですか!」
「そもそも、皇王としての役目とはなんだ。皇王は神と同じなのだろう。神は政治にも戦争にも直接加担しないだろ」
「それはそうかも知れませんが、折角のお力をシリウス皇国のために使っていただきたいものです」
「そうだな、孤児院の救済といったことになら使ってもいいかも知れないが、それも、俺が自分で決める」
大体、ご先祖様の出身地かもしれないが、そこまでしてやる義理はない。
今回、ここにいるのも、ステファに半ば脅されて強制されたからだ。ステファには同情しないでもないが、代わりになってやろうとまでは考えていない。
「実際問題、安全だと言われていた、この星でも命を狙われたんだ、絶対に安全なセレストに早い時期に戻りたい」
「それはセイヤ様がレース大会になど出られるから……」
「俺にずっと引き篭っていろというのか。なら、セレストに引き篭っていても一緒だろ」
引き篭り王子が何を言っているんだ。と言われそうだが、どうせ引き篭るならセレストがいい。
「困りましたな……」
侯爵はほとほと困り果てている。だが、迷惑しているのはこっちだ、ということを認識してもらいたいものだ。
「もう少しすれば国王陛下との会談の手筈が整います。そこで話し合ってもらいましょう」
侯爵は、自分だけでは手に負えないと判断したようだ。
「国王とか? ということはシリウスまで行けと」
「そうですね。いずれは行かなければならない訳ですし。護衛はつけますから心配しないでください」
俺が逃げないように、護衛という名の監視かを付けるわけか。
まあ、いい。さっさとシリウスまで行って、国王に会って、すぐにセレストに帰ろう。
そういえば、国王に会うのはいいが、国王は俺のことどう考えているんだ?
「本音として、国王は俺のことどうしたいんだ。まだ、聞いていなかったな」
「国王陛下ですか……。陛下の心情は複雑でしょう。法律的に見れば、セイヤ様を皇王にしない訳にはいきません。王が自ら法を曲げる訳にはいきませんからね。
ですが、父親としては、自分の子供を王にしたいでしょうね」
「俺が権力は要らないと言っているんだから、皇王の他に王もおけばいいんじゃないか」
「セイヤ様の意見を通せばそうなるでしょうが、それでも王は皇王の下になりますからね」
王であっても、トップでなければ意味がないか……。
本当に面倒くさいな。どうにかトンズラできないものだろうか。
結局、この日の協議では、近いうちにシリウスへ向かうということで話が終わった。
どうせシリウスに向かうなら、その間に何か仕事ができないかと、ギルドの依頼を見るために、侯爵邸から船に移る。
ギルドに行ってもよかったが、チハルがまた、レース大会のポスターでも見つけると厄介なので船にした。
チハルと一緒に手頃な仕事がないか、ブリッジのスクリーンに映し出される依頼票と睨めっこをする。
最初はチハルと二人で検討していた筈だが、いつの間にか女性陣がワラワラと集まっていた。
「この護衛依頼なんかどうなのよ?」
「ステファ、今は、余り貴族と関わりたくない」
「そうなの? 報酬はいいのに……」
「それに、狙われている俺が護衛依頼を受けるのは不味いだろ」
「狙われているといっても、航路上で、しかも、ギルドの依頼を遂行中に襲ってはこないわよ」
「そうなのか?」
「そんなことをすれば、航宙管理局とギルドを一度に敵に回すことになるわよ」
だがな、レース大会中に襲われたのに、あの対応では、ギルドはあてにならんな。
「これなどどうでしょう? 前にもやったレアメタルの採取みたいですが。今度は私もお嬢様とシャトルポッドで出られますし」
「それは駄目よ。レアメタルの種類の指定が単価の安いものばかりだもの。それだと大量に積める船でないと赤字になるわよ」
「そうなのですか……」
ステファに言われ、アリアは残念そうだ。折角ライセンスを取ったから、シャトルポッドに乗りたいのかも知れない。
ドックでは講習の途中で攫われて、ライセンスを取ることができなかったが、アダラ星に来て改めて講習を受けて取得したのだ。
ステファは忘れているようだが、魔力の充填を俺がやれば魔力代はタダだ。赤字になることはない。
だが、そんな依頼ばかり受けていると、赤字のはずなのにと、周りから怪しまれてしまう。できる限りそれは避けたい。
「ここに、相乗り希望とありますが、これは何ですか?」
「それは、一人では宇宙船を貸し切れないから、何人かで集まって乗って行こうということね」
「乗合馬車みたいな物ですか?」
「それはバスという乗り物が近いと思うけど。相乗りは、そのバスが通っていない場所に安く行こうとする場合にとる手段よ」
「だが、これ行先の希望はシリウスだぞ。ここからシリウスに定期のバスは通ってないのか?」
「そんなはずないじゃない。ちゃんと毎日シリウス行きの定期便は出ているわよ」
「それならなぜ相乗り希望なんだ。バスだと不都合があるのか……」
少し気になったので詳細を見てみた。
「乗船中の護衛も依頼内容に含まれているな。不特定多数が乗るバスでは安全が確保できないということか……」
「それは相乗りでも一緒じゃないの?」
「バスよりはまし、ということじゃないか。そのための護衛依頼なのだろう。本当なら貸切にしたいけど、そこまでお金がかけられない。といったところか」
「つまり、その人は狙われているということですか。そんな人を乗せるのは危険では?」
「そうだな……」
アリアの言うことももっともだ、無理に危険を冒す必要はない。
しかし、狙われているということなら俺も一緒だがな。
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「そうです。ベル ダンディアという名前でした」
「確かにそんな名前でしたね」
「そうか、アイドルか。それならファンに付き纏われないためにバスは避けるか」
「でも、そういう人達って、普通、事務所で船を用意するもんじゃないの?」
「そうだよな……」
「何か事情があるのかも知れません。詳しい話を会って聞いてみませんか!」
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余程、生アイドルに会ってみたいのだろう。
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