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第二部 アダラ星編

第74話 督促状

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 シリウス星に行く前に、アダラ星のファーレン侯爵邸に滞在している俺たちであったが、そこに、毎日のように第四王女のエリザベートが突撃をかけてきた。

 エリザベートは、積極的で実践的、思いついたら即行動、行動は早いが、考えなしの面がある。
 猪突猛進、勇往邁進。

 ただ、優秀ではあるようで、知識は豊富で、人当たりも良い。ステファに対しては除くが。
 俺の婚約者であるリリスに辛く当たることもない。
 リリスも最初は戸惑っていたが、今では友達感覚だ

「セイヤ様、まだ、私と婚約する気になりませんか?」
「ならないね」

「私に何かご不満な点でも?」
「特にないね」

「でしたら、婚約者にしていただいてもよろしいではないですか?」
「俺はリリス以外と婚約する気はないから」

「確かにリリスさんは素敵な方ですが、何も一人に拘らなくてもよろしいのではないですか?」
「俺はリリス以外愛せる気がしないよ」

「王族なのですから、そこに愛がない政略結婚は当たり前ですよ」
「エリザのようには割り切れないよ」

 セレストだけでなく、こちらでも政略結婚が当たり前なのか。
 まあ、俺とリリスも政略結婚になるからな、反対はしないけど、結婚相手は一人で十分だ。

 しかし、どうすれば諦めてくれるのやら……。

 考えを巡らせていると、カードにメッセージが届いているのに気付いた。
「誰からだ?」
 俺はメッセージを確認する。

「何だって!」

 俺は思わず大きな声をあげてしまった。

「セイヤ様、どうかしましたか?」
「どうされました?」
「どうしたのよ?」

 リリスとエリザとステファが声をかけてくる。チハルとアリアと聖女もこちらに視線を向けている。

「いや、なんでもない! 少し用事ができた。チハル一緒に来てくれ」
「私も一緒に行きます」

「いや、リリスたちは留守番していてくれ」
「……わかりました」

「チハル、行くぞ」
「わかった」

 俺はチハルを連れて部屋を出た。

「それで、どこへ行く?」
「銀行だ」

「銀行?」
「督促状が届いた。このままだと船を差し押さえられてしまう」
「それは大変。急ぐ」

 俺とチハルは急いで銀行に向かった。
 侯爵邸を出て徒歩で三十分、といっても早足でだが、街の中心部にギャラクシー銀行の支店があった。

「すみません。督促状が来たのですが、どういうことですか?」
「督促状ですか? カードをよろしいでしょうか」
 俺は、受付にカードを提示する。

「セイヤ様ですね。そちらのブースでお待ちください」

 俺たちは、指定されたブースで待っていると係の男性が現れた。
 挨拶を交わした後、本題に入った。

「今回督促状をお送りしましたのは、セイヤ様が貸付対象者の条件から外れてしまったからです」
「貸付対象者の条件?」
「ご契約いただいた時に確認させていただいたと思いますが、シリウス皇国の王族に現在貸付は行えません」

 確かに最初の時に係のお姉さんに、シリウス皇国の王族ではないか念を押された覚えがある。
 あの時点では、シリウス皇国の王族でないといえたが、今はどうだろう。
 ステファの所為で周りからは完全に、シリウス皇国の王族と見られている。

「俺はシリウス皇国の王族になったつもりはないんだが……」
「シリウス皇国に問い合わせたところ、セイヤ様は王族であるとの回答をいただきました」

 誰だ、そんな回答をしたのは! 俺はまだシリウス皇国の王族になるとは言ってないぞ。

「ご納得いただけましたか?」
 俺がシリウス皇国の王族であるということには納得がいかないが、銀行側の言い分もわからないでもない。

「つきましては、借入金になっている九百八十万Gを、一週間後の営業終了までにご返済ください。もし、返済いただけなかった場合は、担保を差し押さえて、売却させていただくことになります」

 一週間で約一千万Gか、どうにかなるだろうか?
 また、レアメタルを集めてくればどうにかなりそうだが、セレスト周辺と違い、この辺でレアメタルが簡単に見つけられるかは疑問だ。

「なお、担保となる宇宙船ですが、返済までの間はアダラ星の衛星軌道から出ないようにお願いします」
「それじゃあ困るんだが、レアメタルの採取に行けないじゃないか!」
「そう言われましても、担保を持ち逃げされても困りますので」

 くそう、そうなると一千万Gを一週間で稼ぐのは無理だぞ。
 侯爵に立て替えてもらうか? そうなると、皇王になることを受け入れなければならなくなる……。
 エリザベートはどうだ? この場合は、彼女を婚約者にしなければならないだろう。

 と、なると、ステファか……。彼女に自由にできるお金が一千万Gもあるだろうか?
 というか、ステファにレアメタル採取の報酬をまだ払ってなかった!
 報酬額を相談しなければと考えていたが、そのままにしていた。
 これは、申し訳ないがしばらく待ってもらうしかないだろう。

 兎に角、これは戻って相談してみるしかないな。

「侯爵邸に戻るぞ」
「待つ。ギルドに行ってみるべき」
 チハルに止められた。

「ギルドにか? 衛星軌道から出ないでできる仕事があるとは思えないが」
「仕事はある。デブリ掃除とか」

「そうなのか、なら、なんとかなるか」
「ただ、それは大したお金にならない」

「駄目じゃん」
「でも行ってみるべき」
「チハルがそこまで言うなら行ってみよう」

 俺たちは銀行を出てギルドに向かった。

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