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第一部 オメガユニット編
第51話 カリスト
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御神体のカリストが、オメガユニットの一基である可能性が高いと踏んだ俺たちは、昨日に引き続きカリストの前に来ていた。
だが、なぜ、まだ、こいつがいるのだろう? 昨日伸したはずだが。
「いやあ、残念王子、昨日ぶりだな」
「ハイネス王子か、体は大丈夫か?」
「魔道具の性能で勝ったからといって、いい気になるなよ!」
「まあ、そうだな。あの勝負は魔道具のおかげだ」
「ふん。わかってればいいんだよ。これから私は大切な用があるんだ、邪魔をするなよ」
わざわざ邪魔をする気はないが、何の用だ?
「聖女様、リリスメリヤ嬢、昨日はお見苦しいところをお見せしました」
「ハイネス王子、怪我もなさそうですし、よかったですわね」
「はい、あれ位の攻撃で怪我など致しません」
「それで、今日はどうされました?」
「えっ? あの、カリストへ魔力を込める計画についてなのですが……」
「あー。その件については、セイヤ様がお戻りになりましたから必要なくなりました。今までご協力ありがとうございました」
「な、なんですって! あの残念王子にどうにか出来るというのですか?」
「別に、私としてはどうにかする必要がなくなったのですが、セイヤ様はどうにかするらしいですよ」
「それはどういうことですか?」
何やら聖女とハイネス王子は揉めているようだが、放っておこう。
あっちはあっちでやってもらって、こっちはこっちでさっさと進めてしまおう。
「さて、チハル。これがオメガユニットで間違いないか?」
「間違いない」
「魔力が切れて地上に落ちたんだったよな?」
「多分そう。魔力が切れてる」
「魔力を充填すれば使えるようになるのか?」
「壊れている様子はないから大丈夫」
「じゃあ、さっさと充填するか」
「だけど、セイヤ、どうやって充填するつもり? シャトルポッドからの充填位じゃ間に合わないわよ」
「どうやってって、普通に手をついて魔力を込める気だけど?」
「それで充填できるのは精々シャトルポッド位までよ。講習でも習ったでしょう」
あれ、そういえば、ステファには俺が宇宙船に魔力の充填をしていると教えてなかったな。
「そうだぞ、私の計算では延べ百万人の魔力が必要だ。残念王子が魔力を込めても何の足しにもならん!」
煩わしいのが来たな。聖女との話はついたのか。
しかし、ハイネス王子は、俺がなぜ残念王子と呼ばれているか忘れているようだな。
「まあ、ステファもハイネス王子も見てろって」
俺は、カリストに手をつくと魔力を込めていく。
左手の甲の紋章が光り輝く。
「やっぱり、私と違う。光り輝いているわ」
「神の力を感じます!」
「セイヤ様頑張って」
「ふん。ただの見掛け倒しさ」
魔力を込めること五分。
「やっぱり見掛け倒しじゃないか」
「キャプテン、充填率十二パーセント。衛星軌道まで行くには十分」
ハイネス王子からヤジが飛んできたが、最低限の充填はできたようだ。
「よし、それじゃあ起動しよう」
「起動命令をハルクから送るように指示する」
チハルがハルクを通して命令できるようだ。
カリストが低いうなりをあげ、薄っすらと光を纏い出した。
やがて、ズズズズズ! と周りの土を押し除け、空中に舞い上がった。
「そんな馬鹿な。百万人分だぞ百万人。人間ができることじゃない!」
「ああ、やはりセイヤ様は神だったのですね」
「そんな、こんなの伝説と一緒じゃない!」
「セイヤ様、やりましたね」
「衛星軌道まで飛ばして、ハルクとドッキングさせる」
「ドックングとかできるのか?」
「大丈夫、自動でできる」
「そうなんだ。手間要らずだな」
「でも、魔力はなくなる。充填が必要」
「衛星軌道まで上げるだけでまた、空になっちゃうのか、ハルク経由で充填すればいいのかな」
「それでいい」
「じゃあ、カリストはドッキングさせておいてくれ。その間に、俺たちもハルクに行こう」
「了解。カリストとハルクのドッキングを命令」
カリストは大空をゆっくりと上っていく。
俺も続いて行こうとシャトルポッドに乗り込むと、後をぞろぞろついてくる。
「あの、みんなで行くのか?」
「当然行くわよ。ちょっとセイヤには話を聞かなければならないし!」
ステファが少し怖いのだが、宇宙船に魔力を充填できることを黙っていたのがまずかったか。
「行きたいです」
リリスは控えめで可愛いな。
「お嬢様が行かれるなら当然行きます」
アリアはまあ、そうなるな。
「セイヤ様が私の神です。お供するのは当然です」
聖女の目が完全にいっちゃてるけど、大丈夫か?
「じゃあ、チハル、昨日と同じで、そっちを頼む」
「了解」
「私もセイヤ様と一緒がよかったのですが」
「聖女は我が儘言うなら連れて行かないぞ」
「わかりました。我慢します」
「ララサは大丈夫でしょうか。心配です……」
リリスから見ても異常なのか、これから大丈夫だろうか……。
呆然としているハイネス王子を残して、俺たちはハルクに移動した。
だが、なぜ、まだ、こいつがいるのだろう? 昨日伸したはずだが。
「いやあ、残念王子、昨日ぶりだな」
「ハイネス王子か、体は大丈夫か?」
「魔道具の性能で勝ったからといって、いい気になるなよ!」
「まあ、そうだな。あの勝負は魔道具のおかげだ」
「ふん。わかってればいいんだよ。これから私は大切な用があるんだ、邪魔をするなよ」
わざわざ邪魔をする気はないが、何の用だ?
「聖女様、リリスメリヤ嬢、昨日はお見苦しいところをお見せしました」
「ハイネス王子、怪我もなさそうですし、よかったですわね」
「はい、あれ位の攻撃で怪我など致しません」
「それで、今日はどうされました?」
「えっ? あの、カリストへ魔力を込める計画についてなのですが……」
「あー。その件については、セイヤ様がお戻りになりましたから必要なくなりました。今までご協力ありがとうございました」
「な、なんですって! あの残念王子にどうにか出来るというのですか?」
「別に、私としてはどうにかする必要がなくなったのですが、セイヤ様はどうにかするらしいですよ」
「それはどういうことですか?」
何やら聖女とハイネス王子は揉めているようだが、放っておこう。
あっちはあっちでやってもらって、こっちはこっちでさっさと進めてしまおう。
「さて、チハル。これがオメガユニットで間違いないか?」
「間違いない」
「魔力が切れて地上に落ちたんだったよな?」
「多分そう。魔力が切れてる」
「魔力を充填すれば使えるようになるのか?」
「壊れている様子はないから大丈夫」
「じゃあ、さっさと充填するか」
「だけど、セイヤ、どうやって充填するつもり? シャトルポッドからの充填位じゃ間に合わないわよ」
「どうやってって、普通に手をついて魔力を込める気だけど?」
「それで充填できるのは精々シャトルポッド位までよ。講習でも習ったでしょう」
あれ、そういえば、ステファには俺が宇宙船に魔力の充填をしていると教えてなかったな。
「そうだぞ、私の計算では延べ百万人の魔力が必要だ。残念王子が魔力を込めても何の足しにもならん!」
煩わしいのが来たな。聖女との話はついたのか。
しかし、ハイネス王子は、俺がなぜ残念王子と呼ばれているか忘れているようだな。
「まあ、ステファもハイネス王子も見てろって」
俺は、カリストに手をつくと魔力を込めていく。
左手の甲の紋章が光り輝く。
「やっぱり、私と違う。光り輝いているわ」
「神の力を感じます!」
「セイヤ様頑張って」
「ふん。ただの見掛け倒しさ」
魔力を込めること五分。
「やっぱり見掛け倒しじゃないか」
「キャプテン、充填率十二パーセント。衛星軌道まで行くには十分」
ハイネス王子からヤジが飛んできたが、最低限の充填はできたようだ。
「よし、それじゃあ起動しよう」
「起動命令をハルクから送るように指示する」
チハルがハルクを通して命令できるようだ。
カリストが低いうなりをあげ、薄っすらと光を纏い出した。
やがて、ズズズズズ! と周りの土を押し除け、空中に舞い上がった。
「そんな馬鹿な。百万人分だぞ百万人。人間ができることじゃない!」
「ああ、やはりセイヤ様は神だったのですね」
「そんな、こんなの伝説と一緒じゃない!」
「セイヤ様、やりましたね」
「衛星軌道まで飛ばして、ハルクとドッキングさせる」
「ドックングとかできるのか?」
「大丈夫、自動でできる」
「そうなんだ。手間要らずだな」
「でも、魔力はなくなる。充填が必要」
「衛星軌道まで上げるだけでまた、空になっちゃうのか、ハルク経由で充填すればいいのかな」
「それでいい」
「じゃあ、カリストはドッキングさせておいてくれ。その間に、俺たちもハルクに行こう」
「了解。カリストとハルクのドッキングを命令」
カリストは大空をゆっくりと上っていく。
俺も続いて行こうとシャトルポッドに乗り込むと、後をぞろぞろついてくる。
「あの、みんなで行くのか?」
「当然行くわよ。ちょっとセイヤには話を聞かなければならないし!」
ステファが少し怖いのだが、宇宙船に魔力を充填できることを黙っていたのがまずかったか。
「行きたいです」
リリスは控えめで可愛いな。
「お嬢様が行かれるなら当然行きます」
アリアはまあ、そうなるな。
「セイヤ様が私の神です。お供するのは当然です」
聖女の目が完全にいっちゃてるけど、大丈夫か?
「じゃあ、チハル、昨日と同じで、そっちを頼む」
「了解」
「私もセイヤ様と一緒がよかったのですが」
「聖女は我が儘言うなら連れて行かないぞ」
「わかりました。我慢します」
「ララサは大丈夫でしょうか。心配です……」
リリスから見ても異常なのか、これから大丈夫だろうか……。
呆然としているハイネス王子を残して、俺たちはハルクに移動した。
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