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第一部 プロローグ

第3話 起動

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 俺が父上に命令されて宝物庫の整理をしていると、婚約者のリリスがいつもの様に侍女を連れてやって来た。

「セイヤ様がお部屋の外に出られるなんて珍しいですね。どうかされたのですか?」
 リリスは、痩せれば可愛らしいであろう顔を、心配そうにさせて尋ねてきた。

「なに、父上から宝物庫の整理を頼まれてやっていただけだ」
「そうですか。国王陛下の勅命を熟しているところなのですね。素晴らしいです」
 リリスは嬉しそうに俺を褒め称える。

「それ程のことでもないさ」
 褒められて、気分を良くした俺は胸を張る。

 そんな俺に、リリスの侍女アリアの冷たい視線が突き刺さる。
「そんな仕事は下働きのすることなんだよ。リリス様に褒められたからといって、いい気になってんじゃねえ」と、言いたげなのが、その表情からはっきり読み取れる。

 アリアは、リリスの専属の侍女で、護衛もこなす。
 ショートヘアーの栗色の髪で、キリリとした美人である。
 スタイルも、ボン、キュ、ボン、と抜群で、ボン、タプ、ボン、のリリスとは大違いだ。

「ところで、これは何ですか?」
 リリスが謎の球体を見て尋ねてきた。

「それが何かわからないんだ。宝物庫に入っていたから大事な物ではあるのだろうけど……」
「そうですか。でもこれだと、どっちが上だか下だかもわかりませんね」
「うーん、そう言われれば、これが正しい向きだかわからないな」

 俺は球の周りを改めて見て回る。
 継ぎ目の様子は、開きそうな部分が下になっている。

「もしかしたら、この部分が開くかもしれない。転がしてみよう」
 俺は兵士に言って、一緒に球を転がす。
 見た感じは運動会の大玉転がしだ。

 継ぎ目部分が見えるように転がして、継ぎ目部分を丹念に調べる。

「ん? このスイッチみたいなのは何だ」
 俺はそれを押してみた。

 ガチャ!

「ひぃー」
 球体から音がして、警備の兵士が身構える。

「リリス様」
 アリアが透かさずリリスを背中に庇う。

 ガチャン! ガチャガチャガチャ。

 球体の下の方から金属の脚が四本出てきて、球体を固定する。

 プシュー。ウィーン。

 球体の継ぎ目部分が、跳ね上げ扉のように、上方に開いた。
 驚いたが、爆発する危険はないようだ。
 俺は開いた口から中を覗き込む。

「殿下、危険ですよ!」
「セイヤ様、危険な真似はおやめください」
「大丈夫、大丈夫」
「リリス様は近付いてはなりません!」

 兵士とリリスが止めるように言うが、俺は構わず中を確認する。
 アリアはリリスが近付かないように、リリスを押さえている。

 中には座席が三席、前に一つ、後に二つ並んでいた。
「定員三名だな」

 正面にはハンドルやレバーがあり、まるで飛行機のコックピットのようである。

「これは飛行艇か、何かか?」

 俺は中に入って座席に座ってみる。

「さて、メインスイッチはどれかな?」

 俺はそれっぽいスイッチを押してみた。

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