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第一部 プロローグ
第1話 転生王子
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俺は王宮の裏にある宝物庫の前に来ていた。
「あれ、セイヤ殿下じゃないですか。どうしたんですかこんな所に?」
宝物庫の警備をしている兵士が親しげに声をかけてくる。
俺の名前は、セイヤ S シリウス、セレスト皇国の第三王子だ。
「いやー、父上に怒られてね『部屋に引き篭ってないで少しは働け』って」
「ははははは、それはサバラ国王陛下の仰る通りですね。第一王子のアベル殿下も第二王子のダレス殿下も立派に働いていらっしゃいますよ。セイヤ殿下も成人したのですから、少しは働いてください」
田舎である我が国では、王族と民との距離が近い。兵士であっても構わず王族に声をかけてくる。
特に俺は、王族といっても第三王子、それも、成人も過ぎ、十六歳にもなったのに、魔法もまともに使えない引き篭りときている。
兵士も全くお構いなしだ。日頃から「残念王子」だとか「引き篭り王子」と呼ばれている。
「だから態々部屋から出て、こんな所まで来たんだろ。父上が『宝物庫の片付けでもしろ』ってさ」
「こんな所って……、王宮から十歩も離れてないじゃないですか」
「俺にとっては部屋の外はこんな所なんだよ。第一、お前が先に『どうしたんですかこんな所に』って言ったんじゃないか」
「全く、セイヤ殿下は、引き篭りのくせに、本当に口だけは達者ですね」
「ハイハイ、俺は屁理屈ばかり言ってる、引き篭りのニートだよ。それより、扉の鍵を開けてくれ」
「わかりました。今開けます」
警備の兵士が鍵を開けて扉を開く。
「殿下、宝物庫の中には貴重な魔道具もありますから、間違っても魔力を通して壊さないでくださいよ」
「わかってるって。散々やって懲りてるからな」
「ならいいですが……」
俺は魔法もまともに使えないと言ったが、魔力がないから使えないわけではない。むしろ逆だ。
魔力が高過ぎて、上手く制御できないのだ。
俺は生まれた時から魔力計測器の針が振り切れる程の魔力が高く、周囲から先祖返りだろうと大いに期待された。
だが、五歳になって魔法の勉強を始めると、魔力が高過ぎて上手く制御できないことがわかった。
ちょっとした魔法を使おうと思っても、大爆発を起こしてしまい、魔道具に魔力を込めれば、ことごとく魔力過多で壊れてしまう。
期待が大きかっただけに失望も大きい。皆から「残念王子」と呼ばれるようになってしまった。
しまいには魔力の暴走を起こしてしまい、危うく死にかけるところであった。
だが、死にかけたことで俺は前世の記憶を思い出した。
俺の前世は日本人であった。
ファンタジーな剣と魔法のこの世界でなく、科学文明が栄えた異世界の住人であったのだ。
前世で俺は、引き篭りのニートだった。今と同じだ。
どの位引きこもっていたか覚えていないのだが、気づいたら神様と対面していた。
多分、何らかのトラブルがあり、死んでしまったのだろう。
神様には、「もう少し真面目に生きろ」と怒られてしまった。
そして、「オマケをくれてやるから人生をやり直せ」と言われ、転生することになった。
転生先が魔法のある世界だと聞いた俺は、オマケを魔力に極振りした。
そう、魔力が高いのは先祖返りではなく、転生者でチートだからだ。
だが、その結果がこれである……。
魔法で無双してやろうと思っていたのに、魔法が上手く使えず、不貞腐れた俺は、結局、また、引き篭りのニートになってしまった。
「引き篭り王子」の完成である。
「あれ、セイヤ殿下じゃないですか。どうしたんですかこんな所に?」
宝物庫の警備をしている兵士が親しげに声をかけてくる。
俺の名前は、セイヤ S シリウス、セレスト皇国の第三王子だ。
「いやー、父上に怒られてね『部屋に引き篭ってないで少しは働け』って」
「ははははは、それはサバラ国王陛下の仰る通りですね。第一王子のアベル殿下も第二王子のダレス殿下も立派に働いていらっしゃいますよ。セイヤ殿下も成人したのですから、少しは働いてください」
田舎である我が国では、王族と民との距離が近い。兵士であっても構わず王族に声をかけてくる。
特に俺は、王族といっても第三王子、それも、成人も過ぎ、十六歳にもなったのに、魔法もまともに使えない引き篭りときている。
兵士も全くお構いなしだ。日頃から「残念王子」だとか「引き篭り王子」と呼ばれている。
「だから態々部屋から出て、こんな所まで来たんだろ。父上が『宝物庫の片付けでもしろ』ってさ」
「こんな所って……、王宮から十歩も離れてないじゃないですか」
「俺にとっては部屋の外はこんな所なんだよ。第一、お前が先に『どうしたんですかこんな所に』って言ったんじゃないか」
「全く、セイヤ殿下は、引き篭りのくせに、本当に口だけは達者ですね」
「ハイハイ、俺は屁理屈ばかり言ってる、引き篭りのニートだよ。それより、扉の鍵を開けてくれ」
「わかりました。今開けます」
警備の兵士が鍵を開けて扉を開く。
「殿下、宝物庫の中には貴重な魔道具もありますから、間違っても魔力を通して壊さないでくださいよ」
「わかってるって。散々やって懲りてるからな」
「ならいいですが……」
俺は魔法もまともに使えないと言ったが、魔力がないから使えないわけではない。むしろ逆だ。
魔力が高過ぎて、上手く制御できないのだ。
俺は生まれた時から魔力計測器の針が振り切れる程の魔力が高く、周囲から先祖返りだろうと大いに期待された。
だが、五歳になって魔法の勉強を始めると、魔力が高過ぎて上手く制御できないことがわかった。
ちょっとした魔法を使おうと思っても、大爆発を起こしてしまい、魔道具に魔力を込めれば、ことごとく魔力過多で壊れてしまう。
期待が大きかっただけに失望も大きい。皆から「残念王子」と呼ばれるようになってしまった。
しまいには魔力の暴走を起こしてしまい、危うく死にかけるところであった。
だが、死にかけたことで俺は前世の記憶を思い出した。
俺の前世は日本人であった。
ファンタジーな剣と魔法のこの世界でなく、科学文明が栄えた異世界の住人であったのだ。
前世で俺は、引き篭りのニートだった。今と同じだ。
どの位引きこもっていたか覚えていないのだが、気づいたら神様と対面していた。
多分、何らかのトラブルがあり、死んでしまったのだろう。
神様には、「もう少し真面目に生きろ」と怒られてしまった。
そして、「オマケをくれてやるから人生をやり直せ」と言われ、転生することになった。
転生先が魔法のある世界だと聞いた俺は、オマケを魔力に極振りした。
そう、魔力が高いのは先祖返りではなく、転生者でチートだからだ。
だが、その結果がこれである……。
魔法で無双してやろうと思っていたのに、魔法が上手く使えず、不貞腐れた俺は、結局、また、引き篭りのニートになってしまった。
「引き篭り王子」の完成である。
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