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第一章
第39話 入学試験
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第6月、秋が終わり冬が始まる季節、ファルベス王立高等学院の入学試験が行われた。
ちなみに、この世界の一年は6か月。一月が64日、一年が384日である。つまりこの世界の第6月は日本の11月から12月に相当する。
書類選考から始まり、筆記、実技、面接と何日にも分けて試験が行われる。国中の少年少女が学院入学という狭き門を目指してしのぎを削るのだ。一般受験生は。
そう、上級貴族である私たちは、別枠で、面接があるのみである。それも入学の意思があるかの確認のみだ。
面接は集団面接の形式で行われる。私たちのグループは、私の他に、大公令嬢のトレス様、侯爵令嬢のマリー様の三人。それと、それぞれの侍女である。
この学院では侍女や侍従も主人と一緒に授業を受けることになる。基本、学院にいる間は常に一緒にいて主人の世話をしながら自分も学習する形だ。
私はリココを連れて面接に臨んだ。シリーでは学院に連れて行くには年齢が高すぎる。
あれ、そういえばシリーは何歳なのだろう? 私が生まれてまもなくメイドとして雇われたはずだから少なくてもアラサー。昔から容姿は変わらないから、もしかするとアラフォーかそれ以上かもしれない。
ああ、シリーは女神だから人間の基準を当てはめては駄目だわね。
まあ、年齢の問題がなくても、ぐうたらなシリーという選択肢はないな。
控え室で他の受験生と雑談をしていると、私たち三人の名前が呼ばれた。
トレス様、私、マリー様の順に面接会場に入る。
面接会場は、前世のような窓際に面接官がずらりと並び、入り口側に受験生の座る椅子があるというものではなく。大きなテーブルが中央にあり、右手側に三人の面接官が座っていた。男性二人に女性一人だ。私たちは左側に三人並んで座る形だ。侍女たちは、私たちの右斜め後ろに立ったままだ。
面接官は奥から順番に自己紹介を始める。
「この面接の責任者を務める学院長のワーレン=イース=ブラウじゃ」
「学院で講師をしているセリーネ=ビヤンコよ」
「王宮第二王子担当秘書官のバハト=オラケウスです」
学園の関係者だけでなく、王宮の関係者もいるは第二王子が入学予定だからであろう。王宮からの面接官が第二王子担当秘書官なのがいい証拠だ。
「トレス=セントラル=ゲルプです」
「イライザ=ノース=シュバルツです」
「マリー=フラウムです」
こちらも順番に名乗っていく。
「お三方とも当学院に入学希望で間違いないかな」
学院長が確認をとる。
「はい、その通りです」
「はい、入学を希望します」
「はい、よろしくお願いします」
私たちは名乗った時と同じ順番に答えていく。
「そうですか、それでは来年からよろしく頼みますよ」
学院長から問題なしと言われたようだが、これで面接終わりだろうか?
「侍女の三人もよろしいですね」
おっと、まだ面接は続くようだ。学院長の隣に座る女性の面接官が侍女たちに質問した。
「はい」
「はい」
「はい」
侍女たちが異口同音に答えた。
「分かりました。主人の名を汚さぬよう頑張ってください」
どうやら女性面接官の質問はこれで終わりのようだ。続いて第二王子担当秘書官の質問が始まった。
「皆さんの将来の夢、というか、なりたいものをお聞かせください」
何か三人の中では一番面接っぽいな。
なりたいものか、まさか魔王と答えるわけにはいかないし、あまり考えたことがなかったな。どう答えたものかとあれこれ考えていると、秘書官から突然思いもよらぬことを言われた。
「ああ、イライザ様は答えなくて結構です」
え、どういうこと、私だけ除け者なの?
私が呆気に取られている間にトレス様が答えた。
「そうですね。王国のため、国民のために働ける人になりたいですね」
続いて、私を飛ばしてマリー様が答える。
「私は、第二王子に尽くすのが夢です。将来は必ず妃に」
マリー様の言葉には熱がこもっている。ゲーム的には私が第二王子と結婚した場合側室になる方だ。私が既に第一王子の婚約者となっているので、彼女が第二王子の婚約者になる可能性が高いだろう。
ゲーム開始である学院入学の直前に、第一王子から第二王子の婚約者に変更なんてことは起きないよな?
秘書官はそんなマリー様でなくトレス様に追加で質問した。
「トレス様は、第二王子のことはどのようにお考えですか」
「ご立派なお方だとは思いますが、それ以上はございません」
「そうですか。ありがとうございました」
そういうことか。秘書官は面接で第二王子の婚約者候補を探していたのだ。既に第一王子の婚約者の私に聞く必要はないわけだ。第二王子の周りがこの調子なら婚約者の変更はありえないか。
「それでは、面接は以上です。お三方はもう帰られて結構ですよ」
こうして私の学院入学試験は無事終了したのだった。
結果? 勿論合格以外ありえません。
実は第一王子の婚約者だからと、面接で落とされるのではないかと心配していたのは内緒である。
さあ、いよいよゲーム開始の学院入学である。
事前に準備できたのは女神の腕だけであるが、後は野となれ山となれである。
何としても魔王エンドに持ち込んで生き残ってやる。
ちなみに、この世界の一年は6か月。一月が64日、一年が384日である。つまりこの世界の第6月は日本の11月から12月に相当する。
書類選考から始まり、筆記、実技、面接と何日にも分けて試験が行われる。国中の少年少女が学院入学という狭き門を目指してしのぎを削るのだ。一般受験生は。
そう、上級貴族である私たちは、別枠で、面接があるのみである。それも入学の意思があるかの確認のみだ。
面接は集団面接の形式で行われる。私たちのグループは、私の他に、大公令嬢のトレス様、侯爵令嬢のマリー様の三人。それと、それぞれの侍女である。
この学院では侍女や侍従も主人と一緒に授業を受けることになる。基本、学院にいる間は常に一緒にいて主人の世話をしながら自分も学習する形だ。
私はリココを連れて面接に臨んだ。シリーでは学院に連れて行くには年齢が高すぎる。
あれ、そういえばシリーは何歳なのだろう? 私が生まれてまもなくメイドとして雇われたはずだから少なくてもアラサー。昔から容姿は変わらないから、もしかするとアラフォーかそれ以上かもしれない。
ああ、シリーは女神だから人間の基準を当てはめては駄目だわね。
まあ、年齢の問題がなくても、ぐうたらなシリーという選択肢はないな。
控え室で他の受験生と雑談をしていると、私たち三人の名前が呼ばれた。
トレス様、私、マリー様の順に面接会場に入る。
面接会場は、前世のような窓際に面接官がずらりと並び、入り口側に受験生の座る椅子があるというものではなく。大きなテーブルが中央にあり、右手側に三人の面接官が座っていた。男性二人に女性一人だ。私たちは左側に三人並んで座る形だ。侍女たちは、私たちの右斜め後ろに立ったままだ。
面接官は奥から順番に自己紹介を始める。
「この面接の責任者を務める学院長のワーレン=イース=ブラウじゃ」
「学院で講師をしているセリーネ=ビヤンコよ」
「王宮第二王子担当秘書官のバハト=オラケウスです」
学園の関係者だけでなく、王宮の関係者もいるは第二王子が入学予定だからであろう。王宮からの面接官が第二王子担当秘書官なのがいい証拠だ。
「トレス=セントラル=ゲルプです」
「イライザ=ノース=シュバルツです」
「マリー=フラウムです」
こちらも順番に名乗っていく。
「お三方とも当学院に入学希望で間違いないかな」
学院長が確認をとる。
「はい、その通りです」
「はい、入学を希望します」
「はい、よろしくお願いします」
私たちは名乗った時と同じ順番に答えていく。
「そうですか、それでは来年からよろしく頼みますよ」
学院長から問題なしと言われたようだが、これで面接終わりだろうか?
「侍女の三人もよろしいですね」
おっと、まだ面接は続くようだ。学院長の隣に座る女性の面接官が侍女たちに質問した。
「はい」
「はい」
「はい」
侍女たちが異口同音に答えた。
「分かりました。主人の名を汚さぬよう頑張ってください」
どうやら女性面接官の質問はこれで終わりのようだ。続いて第二王子担当秘書官の質問が始まった。
「皆さんの将来の夢、というか、なりたいものをお聞かせください」
何か三人の中では一番面接っぽいな。
なりたいものか、まさか魔王と答えるわけにはいかないし、あまり考えたことがなかったな。どう答えたものかとあれこれ考えていると、秘書官から突然思いもよらぬことを言われた。
「ああ、イライザ様は答えなくて結構です」
え、どういうこと、私だけ除け者なの?
私が呆気に取られている間にトレス様が答えた。
「そうですね。王国のため、国民のために働ける人になりたいですね」
続いて、私を飛ばしてマリー様が答える。
「私は、第二王子に尽くすのが夢です。将来は必ず妃に」
マリー様の言葉には熱がこもっている。ゲーム的には私が第二王子と結婚した場合側室になる方だ。私が既に第一王子の婚約者となっているので、彼女が第二王子の婚約者になる可能性が高いだろう。
ゲーム開始である学院入学の直前に、第一王子から第二王子の婚約者に変更なんてことは起きないよな?
秘書官はそんなマリー様でなくトレス様に追加で質問した。
「トレス様は、第二王子のことはどのようにお考えですか」
「ご立派なお方だとは思いますが、それ以上はございません」
「そうですか。ありがとうございました」
そういうことか。秘書官は面接で第二王子の婚約者候補を探していたのだ。既に第一王子の婚約者の私に聞く必要はないわけだ。第二王子の周りがこの調子なら婚約者の変更はありえないか。
「それでは、面接は以上です。お三方はもう帰られて結構ですよ」
こうして私の学院入学試験は無事終了したのだった。
結果? 勿論合格以外ありえません。
実は第一王子の婚約者だからと、面接で落とされるのではないかと心配していたのは内緒である。
さあ、いよいよゲーム開始の学院入学である。
事前に準備できたのは女神の腕だけであるが、後は野となれ山となれである。
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