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第一章
第25話 最初の迷宮第二層
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今日は最初の迷宮第二層への挑戦である。
いつも部屋の清掃に来るメイドに、秘密の実験中だから部屋に絶対に入らないように言いつけ、部屋の内鍵を閉めて、シリーの転移で迷宮に向かう。
魔法カードの実験や薬剤の調合など、日頃から怪しい行動が多い私たちだけに、メイドが部屋に入って来ることはまずない。
到着したのは、昨日最後にいた第二層へ続く階段の前だった。
「本当に便利ですね。昨日攻略した続きからできるなんて」
リココが感心している。
「どこでも移動できますからね」
シリーが自慢げに胸を張る。
「どこへでもですか。なら最下層までの転移もできるのですか」
「勿論できますよ」
「え、でしたら、ちまちま攻略していないで、一気に転移したほうが楽なのでは?」
「それではゲームの面白味が半減、じゃなくて、途中で経験を積んで、成長していかないと、いきなりラスボスでは大変ですよ」
「それもそうですね」
シリーのやつ、ゲームとか言っちゃてるよ。
「それでは、行くよ」
私がかけ声を掛けて、第二層へ続く階段を下りようとしたところ、逆に階段を上がって来た人たちがいた。
他の冒険者パーティと鉢合わせすることは珍しいことではなかったが、すれ違った冒険者を見て私は驚きの声をあげた。
「ケニーじゃない!」
「げ、エリー、なんでこんなところに」
「それはこっちの台詞よ」
騎士団北部分団長の息子ケニーである。
「親分、誰ですかい」
「親分言うな。リーダと呼べと言ってるだろ」
ケニーは子分を四人引き連れていた。
「北の公爵令嬢のイライザだ」
「あれが例の悪役令嬢ですか」
誰が悪役令嬢だ、まあ、そのとおりではあるのだけれど。
「おい悪役令嬢、ラスボスを倒して宝物を手にするのは俺たちだからな。邪魔するなよ」
なにか、威勢のいい子分がいるようだ。
「おい、やめておけ」
ケニーが止めに入る。
「邪魔はしないけれど、ラスボスを倒すのは早い者勝ちよ」
「こっちが早いに決まってるだろ。そして宝物は、親分が好きな女に貢ぐんだ」
「やめておけと言ってるだろ」
ケニーったら、いつの間に好きな女の子ができたのだろう。最近姿を見せないと思えばそのせいか。子供のくせに色気づきやがって。
「エリー、お前たちもラスボス狙いなのか」
「当然よ」
「そうか」
ケニーが考え込んでしまった。子分たちはこちらを威嚇している。
少々うざいので、軽く睨んでやる。それだけで子分たちは皆、ケニーの後ろに隠れてしまった。
「エリー、これから下に行くのか」
「そうだけど」
「せいぜい辱めを受けないように気をつけるんだな。じゃ頑張れよ」
そう言って、ケニーたちは、第一層を入口に向けて去っていった。
私たちは第二層に下り、第一層と同じような洞窟を慎重に進む。
しばらく進むと緑色のスライムが現れた。大きさは第一層の茶色と同じで、私たちの身長より大きい。
「リココ、威嚇射撃」
私の命令にリココが弓を射る。すかさず私はスライムに近づき、魔法カードを押し付け、魔法を発動する。
『発火』
スライムは一瞬、炎をあげ、そのまま燃え尽きた。
「アチチチ、ちょっと魔力が強すぎたかしら」
「お嬢様、限度を考えてください。限度を」
シリーに窘められてしまった。
「まあ、緑のスライムは『発火』があれば一発ね。近づかないといけないのが少し難点だけれども、このくらいなら注意すれば問題ないわ。どんどんいきましょう」
その後順調にスライムを狩っていった。余りにも順調なので油断があったのだろう。
私たちは、とんでもない反撃を受けることになる。
『発火』
スライムが燃え上がる。よしやった。
私はスライムを一匹倒したことで気を緩めていた。
そこに、炎の中から二匹目のスライムが現れた。
一匹だと思っていたスライムは、二匹が前後に並んでいたのだ。
スライムは、私たちに触手のようなものを伸ばしてくる。
「えっ、触手」
「キャー」
気づいた時には、私とリココが触手に絡まれていた。シリーはうまく逃れたようだ。スライムから距離を取っている。
「ちょっと、どこ触っているのよ、やめなさい」
「えーん、もうお嫁に行けません」
触手は私とリココの締め上げ、そのうえ、恥ずかしいところに触手を伸ばしてきている。
「お嬢様、なんてあられもない姿に」
「シリー、そんなこと言ってないで、こいつ倒して」
「えー。でも私、火魔法使えませんし、無理です」
私は、触手に絡まれた時に、魔法カードを落としてしまっている。
「リココ、なにか火魔法の魔道具は持ってないの」
「えー。そう言われましても。あーんやめて。夜営の道具は持ってきていませんし。あ駄目です。そこだけはやめてください」
リココはそれどころではないようだ。
「シリー、なんとかして助けて」
私は叫ぶ。
「仕方ないですね。お嬢様のあられもない姿も十分堪能できましたし。『転移』」
私とリココがシリーの隣に転移した。
「できるなら初めからやりなさいよ」
「えーん、シリーさんひどいです。でも助けてくれてありがとうございます」
「え、だってお嬢様は最初こいつ倒せって。ですから、それは無理ですと」
「……」
「……」
「わかったわ、その件はもういいわ。それであのスライムをどうするかなのだけれど」
「イライザお嬢様、魔法カードは」
「魔法カードはあそこよ」
魔法カードはスライムの足元(足はないけど)に落ちている。
「こんなことなら、魔法カードも予備を作っておくべきだった」
「あのカードが手元に戻ればいいのですよね。『転移』はいどうぞ、お嬢様」
シリーはこともなさげにカードを手元に転移させた。
「転移便利すぎます」
リココは、感心を通り越して、尊敬の眼差しである。
「お嬢様の所有物以外は、転移できませんよ」
その後、そのスライムも無事討伐し、私たちは、乙女の窮地を脱することができた。
ケニーの言っていた「辱めを受けないように」とはこのことだったのだろう。
結局、第三層へ続く階段の前に到着するまでに、スライムを15匹討伐し、魔石二つを手に入れた。
今日は、エロエロ、じゃない、いろいろ、疲れたので切りのいいところでさっさと屋敷に帰って、しっかりとお風呂に入って、早々に就眠したのだった。
いつも部屋の清掃に来るメイドに、秘密の実験中だから部屋に絶対に入らないように言いつけ、部屋の内鍵を閉めて、シリーの転移で迷宮に向かう。
魔法カードの実験や薬剤の調合など、日頃から怪しい行動が多い私たちだけに、メイドが部屋に入って来ることはまずない。
到着したのは、昨日最後にいた第二層へ続く階段の前だった。
「本当に便利ですね。昨日攻略した続きからできるなんて」
リココが感心している。
「どこでも移動できますからね」
シリーが自慢げに胸を張る。
「どこへでもですか。なら最下層までの転移もできるのですか」
「勿論できますよ」
「え、でしたら、ちまちま攻略していないで、一気に転移したほうが楽なのでは?」
「それではゲームの面白味が半減、じゃなくて、途中で経験を積んで、成長していかないと、いきなりラスボスでは大変ですよ」
「それもそうですね」
シリーのやつ、ゲームとか言っちゃてるよ。
「それでは、行くよ」
私がかけ声を掛けて、第二層へ続く階段を下りようとしたところ、逆に階段を上がって来た人たちがいた。
他の冒険者パーティと鉢合わせすることは珍しいことではなかったが、すれ違った冒険者を見て私は驚きの声をあげた。
「ケニーじゃない!」
「げ、エリー、なんでこんなところに」
「それはこっちの台詞よ」
騎士団北部分団長の息子ケニーである。
「親分、誰ですかい」
「親分言うな。リーダと呼べと言ってるだろ」
ケニーは子分を四人引き連れていた。
「北の公爵令嬢のイライザだ」
「あれが例の悪役令嬢ですか」
誰が悪役令嬢だ、まあ、そのとおりではあるのだけれど。
「おい悪役令嬢、ラスボスを倒して宝物を手にするのは俺たちだからな。邪魔するなよ」
なにか、威勢のいい子分がいるようだ。
「おい、やめておけ」
ケニーが止めに入る。
「邪魔はしないけれど、ラスボスを倒すのは早い者勝ちよ」
「こっちが早いに決まってるだろ。そして宝物は、親分が好きな女に貢ぐんだ」
「やめておけと言ってるだろ」
ケニーったら、いつの間に好きな女の子ができたのだろう。最近姿を見せないと思えばそのせいか。子供のくせに色気づきやがって。
「エリー、お前たちもラスボス狙いなのか」
「当然よ」
「そうか」
ケニーが考え込んでしまった。子分たちはこちらを威嚇している。
少々うざいので、軽く睨んでやる。それだけで子分たちは皆、ケニーの後ろに隠れてしまった。
「エリー、これから下に行くのか」
「そうだけど」
「せいぜい辱めを受けないように気をつけるんだな。じゃ頑張れよ」
そう言って、ケニーたちは、第一層を入口に向けて去っていった。
私たちは第二層に下り、第一層と同じような洞窟を慎重に進む。
しばらく進むと緑色のスライムが現れた。大きさは第一層の茶色と同じで、私たちの身長より大きい。
「リココ、威嚇射撃」
私の命令にリココが弓を射る。すかさず私はスライムに近づき、魔法カードを押し付け、魔法を発動する。
『発火』
スライムは一瞬、炎をあげ、そのまま燃え尽きた。
「アチチチ、ちょっと魔力が強すぎたかしら」
「お嬢様、限度を考えてください。限度を」
シリーに窘められてしまった。
「まあ、緑のスライムは『発火』があれば一発ね。近づかないといけないのが少し難点だけれども、このくらいなら注意すれば問題ないわ。どんどんいきましょう」
その後順調にスライムを狩っていった。余りにも順調なので油断があったのだろう。
私たちは、とんでもない反撃を受けることになる。
『発火』
スライムが燃え上がる。よしやった。
私はスライムを一匹倒したことで気を緩めていた。
そこに、炎の中から二匹目のスライムが現れた。
一匹だと思っていたスライムは、二匹が前後に並んでいたのだ。
スライムは、私たちに触手のようなものを伸ばしてくる。
「えっ、触手」
「キャー」
気づいた時には、私とリココが触手に絡まれていた。シリーはうまく逃れたようだ。スライムから距離を取っている。
「ちょっと、どこ触っているのよ、やめなさい」
「えーん、もうお嫁に行けません」
触手は私とリココの締め上げ、そのうえ、恥ずかしいところに触手を伸ばしてきている。
「お嬢様、なんてあられもない姿に」
「シリー、そんなこと言ってないで、こいつ倒して」
「えー。でも私、火魔法使えませんし、無理です」
私は、触手に絡まれた時に、魔法カードを落としてしまっている。
「リココ、なにか火魔法の魔道具は持ってないの」
「えー。そう言われましても。あーんやめて。夜営の道具は持ってきていませんし。あ駄目です。そこだけはやめてください」
リココはそれどころではないようだ。
「シリー、なんとかして助けて」
私は叫ぶ。
「仕方ないですね。お嬢様のあられもない姿も十分堪能できましたし。『転移』」
私とリココがシリーの隣に転移した。
「できるなら初めからやりなさいよ」
「えーん、シリーさんひどいです。でも助けてくれてありがとうございます」
「え、だってお嬢様は最初こいつ倒せって。ですから、それは無理ですと」
「……」
「……」
「わかったわ、その件はもういいわ。それであのスライムをどうするかなのだけれど」
「イライザお嬢様、魔法カードは」
「魔法カードはあそこよ」
魔法カードはスライムの足元(足はないけど)に落ちている。
「こんなことなら、魔法カードも予備を作っておくべきだった」
「あのカードが手元に戻ればいいのですよね。『転移』はいどうぞ、お嬢様」
シリーはこともなさげにカードを手元に転移させた。
「転移便利すぎます」
リココは、感心を通り越して、尊敬の眼差しである。
「お嬢様の所有物以外は、転移できませんよ」
その後、そのスライムも無事討伐し、私たちは、乙女の窮地を脱することができた。
ケニーの言っていた「辱めを受けないように」とはこのことだったのだろう。
結局、第三層へ続く階段の前に到着するまでに、スライムを15匹討伐し、魔石二つを手に入れた。
今日は、エロエロ、じゃない、いろいろ、疲れたので切りのいいところでさっさと屋敷に帰って、しっかりとお風呂に入って、早々に就眠したのだった。
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