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二年目、六歳
第99話 天使なの。
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レイニィが宇宙アメーバを殲滅したことを確認すると、女神様はシャトルを世界樹に帰還させた。
世界樹に戻るとレイニィは身体に巻き付けられていたロープを解き、宇宙服を脱いだ。
「ぷはー。解放された感がすごいの」
「ご苦労様。宇宙服がきつかったですか?」
女神様はレイニィを気づかい慰労の言葉をかけた。
「きつくはなかったのですが、閉じ込められている感じが堪えたの」
「それはいえますね。さて、苦労をかけましたし、お礼は何がいいでしょう?」
「お礼なんて気にしないでくださいなの」
レイニィは以前に女神様から「希少世放神」なるとんでもない称号を授かっていたので、今回のお礼は遠慮したかった。
「そんな訳にはいきませんよ。何がいいでしょうね……」
女神様は許してくれる気はないようだ。何がいいか考え込んでしまった。
「レイニィ様、ご無事で何よりです」
弾頭昇降機で気を失っていたスノウィは、レイニィがシャトルで引き回されている間に目を覚ましていた。
女神様が考え込んでしまったので、レイニィに駆け寄り声をかけた。
「スノウィ。意識が戻ったの。よかったの」
「ご心配かけて申し訳ありませんでした」
「いいの。気にしてないの」
「随分と派手にやったな」
エルダも寄って来て声をかける。
「えーと、逃げられると面倒なので……。仕方がなかったの」
「まあ、あれだけの大きさと数だからな。一人でやったなら仕方がないか」
「それです!」
エルダの言葉に女神様が反応した。
「どれなの?」
「お礼の件ですが、一人ではいろいろと大変ですから、あなたの眷属として天使を付けましょう」
「眷属って、従者ならスノウィで間に合ってるの」
天使なんて目立つものをつけられたらたまらないと、レイニィ女神様の提案を辞退した。
「ですが、昇降機で気絶するようでは役に立たないでしょう?」
「そんなことないの! スノウィはよくやってくれているの」
「レイニィ様――」
スノウィはレイニィの言葉に手を組んで目を潤ませている。
「そうですか……。なら、その者を天使にしましょう」
「え?!」
女神様はレイニィの返事を待たずに右手をあげた。
スノウィが光に包まれる。
「スノウィ!」
レイニィはスノウィに駆け寄る。
「それではお礼はしましたよ。ああ、世界樹の枝を持ち帰るのを忘れないようにしてくださいね」
それだけ言い残すと、女神様はさっさとシャトルに乗って飛び立ってしまった。
「スノウィ。スノウィしっかりして!」
「あー。レイニィ様?」
スノウィは一瞬意識を失ったが、すぐに意識を取り戻した。
「大丈夫なの? 身体に異常はないの?」
「大丈夫です。特に異常は感じません」
「そう。よかったの」
「女神様は天使にすると言ってたが、なんともないのか?」
「そうですね? あまり変わった感じはしませんが――」
「そうだ、職(ジョブ)とかはどうなっている?」
「職(ジョブ)ですか?」
エルダに言われてスノウィは神の封筒を出し、中身を確認する。
「賞罰:称号『希少世放神の眷属(天使)』になってますね」
「希少世放神? なんだそれ?」
「あ、それは私のことなの。以前女神様からその称号をもらったの」
「そうですか。よかったです」
スノウィは「希少世放神」がレイニィのことであると聞いて安堵の表情を浮かべた。
「レイニィは、神の称号を持っていたのか。名実ともに、といったところか……」
エルダは、既に周りから神扱いをされているレイニィが、神の称号を持っていても当然だと受け止めていた。
「スノウィ、それで、天使になって強くなったのか?」
「どうでしょう。自分ではよくわからないです」
「まあ、スノウィは前から野蛮だったけどな」
「アイス! 何ですって!!」
「おー怖」
アイスは早々に退散する。
「天使といえば、天使の環と天使の羽根があって、空を飛んでるイメージなの」
「まあ、そうだな。飛んでみたりできないのか?」
「どうでしょう? やってみますね」
「スノウィ、イメージが大切なの。イメージが」
「わかりましたレイニィ様。イメージですね」
スノウィは真剣に天使が飛んでいるところをイメージした。
するとどうだろう、スノウィの頭には光の環、背中からは四枚の光の羽根が現れて、ぷかぷかと宙を浮き始めた。
「おおー」
「やりました。レイニィ様」
レイニィ達は感嘆の声をあげ、スノウィは大喜びである。
それからしばらく練習して、スノウィは自在に空を飛べるようになった。
世界樹に戻るとレイニィは身体に巻き付けられていたロープを解き、宇宙服を脱いだ。
「ぷはー。解放された感がすごいの」
「ご苦労様。宇宙服がきつかったですか?」
女神様はレイニィを気づかい慰労の言葉をかけた。
「きつくはなかったのですが、閉じ込められている感じが堪えたの」
「それはいえますね。さて、苦労をかけましたし、お礼は何がいいでしょう?」
「お礼なんて気にしないでくださいなの」
レイニィは以前に女神様から「希少世放神」なるとんでもない称号を授かっていたので、今回のお礼は遠慮したかった。
「そんな訳にはいきませんよ。何がいいでしょうね……」
女神様は許してくれる気はないようだ。何がいいか考え込んでしまった。
「レイニィ様、ご無事で何よりです」
弾頭昇降機で気を失っていたスノウィは、レイニィがシャトルで引き回されている間に目を覚ましていた。
女神様が考え込んでしまったので、レイニィに駆け寄り声をかけた。
「スノウィ。意識が戻ったの。よかったの」
「ご心配かけて申し訳ありませんでした」
「いいの。気にしてないの」
「随分と派手にやったな」
エルダも寄って来て声をかける。
「えーと、逃げられると面倒なので……。仕方がなかったの」
「まあ、あれだけの大きさと数だからな。一人でやったなら仕方がないか」
「それです!」
エルダの言葉に女神様が反応した。
「どれなの?」
「お礼の件ですが、一人ではいろいろと大変ですから、あなたの眷属として天使を付けましょう」
「眷属って、従者ならスノウィで間に合ってるの」
天使なんて目立つものをつけられたらたまらないと、レイニィ女神様の提案を辞退した。
「ですが、昇降機で気絶するようでは役に立たないでしょう?」
「そんなことないの! スノウィはよくやってくれているの」
「レイニィ様――」
スノウィはレイニィの言葉に手を組んで目を潤ませている。
「そうですか……。なら、その者を天使にしましょう」
「え?!」
女神様はレイニィの返事を待たずに右手をあげた。
スノウィが光に包まれる。
「スノウィ!」
レイニィはスノウィに駆け寄る。
「それではお礼はしましたよ。ああ、世界樹の枝を持ち帰るのを忘れないようにしてくださいね」
それだけ言い残すと、女神様はさっさとシャトルに乗って飛び立ってしまった。
「スノウィ。スノウィしっかりして!」
「あー。レイニィ様?」
スノウィは一瞬意識を失ったが、すぐに意識を取り戻した。
「大丈夫なの? 身体に異常はないの?」
「大丈夫です。特に異常は感じません」
「そう。よかったの」
「女神様は天使にすると言ってたが、なんともないのか?」
「そうですね? あまり変わった感じはしませんが――」
「そうだ、職(ジョブ)とかはどうなっている?」
「職(ジョブ)ですか?」
エルダに言われてスノウィは神の封筒を出し、中身を確認する。
「賞罰:称号『希少世放神の眷属(天使)』になってますね」
「希少世放神? なんだそれ?」
「あ、それは私のことなの。以前女神様からその称号をもらったの」
「そうですか。よかったです」
スノウィは「希少世放神」がレイニィのことであると聞いて安堵の表情を浮かべた。
「レイニィは、神の称号を持っていたのか。名実ともに、といったところか……」
エルダは、既に周りから神扱いをされているレイニィが、神の称号を持っていても当然だと受け止めていた。
「スノウィ、それで、天使になって強くなったのか?」
「どうでしょう。自分ではよくわからないです」
「まあ、スノウィは前から野蛮だったけどな」
「アイス! 何ですって!!」
「おー怖」
アイスは早々に退散する。
「天使といえば、天使の環と天使の羽根があって、空を飛んでるイメージなの」
「まあ、そうだな。飛んでみたりできないのか?」
「どうでしょう? やってみますね」
「スノウィ、イメージが大切なの。イメージが」
「わかりましたレイニィ様。イメージですね」
スノウィは真剣に天使が飛んでいるところをイメージした。
するとどうだろう、スノウィの頭には光の環、背中からは四枚の光の羽根が現れて、ぷかぷかと宙を浮き始めた。
「おおー」
「やりました。レイニィ様」
レイニィ達は感嘆の声をあげ、スノウィは大喜びである。
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