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二年目、六歳
第96話 依頼なの。
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「一万層に到着したの!」
「ふー。やっと着いたか」
「レイニィ様、お疲れ様です」
「別段、危ない事もなく到着出来てよかったぜ」
レイニィ、エルダ、スノウィ、アイスの四人は、世界樹の一万層に到着した。
高度でいえば概ね五十キロメートルである。
地球で言えば成層圏と中間圏との境目の成層圏界面辺りである。
これでも世界樹全体から見れば、下から十分の一の高さである。
世界樹の高さ五百キロメートルは、地球なら大気圏外まで達していることになる。
「杖にするのに手ごろな枝がないか外を見てくるの」
「お嬢様、俺も一緒に行くぞ」
「レイニィ様、私はここでお待ちしております」
「私も」
護衛のアイスはレイニィに付いて行くが、侍女のスノウィと家庭教師のエルダは疲れたのか、その場で休憩するようだ。
外に出ると黒みがかった空と、眼下に、遥か彼方まで広がる海と雲が広がっていた。
(これだけ高度があれば球体に見えてもいいはずなのに、平面にしか見えないわね。天動説もだけど、この世界は球体ですらないのかしら?)
レイニィが遠くを見ながら考えに耽っていると、アイスが声をかけた。
「お嬢様、あの枝なんかどうだ」
「そんな大きなものは要らないの。別に杖がなくても魔法は使えるから、邪魔にならないように短いものでいいの」
アイスが示したのは二メートル近くある枝で、レイニィが欲しいと思ったのは三十センチメートルくらいのものだった。
「あら、大魔術師らしく長くて立派な物がいいと思いますよ」
突然よく見知った顔の女性が話しかけてきた。
アイスが警戒してレイニィの前に出る。
「アイス、大丈夫なの。知り合いなの。少し離れていてなの」
アイスは警戒しつつも少し距離を取る。
「久しぶりですね。一年振り位かしら」
「そうですね。そのくらいになると思います」
その女性は、レイニィの前世の身体を利用している女神様だった。
「ここで会ったのは、偶然ってことはないですよね?」
「いや、偶然見かけたからお願いに来ただけよ」
「お願いですか?」
「実はね。世界樹の天辺は天界と繋がっているのよ。それでね、天界に帰ろうと思って来たのだけど、世界樹の天辺に宇宙アメーバが取り付いていて、帰るに帰れない状態なのよ」
「いろいろビックリなのですが、私に何をしろというのです」
「宇宙アメーバを退治してもらいたいの」
「自分でなされたらいかがですか?」
「ほら、この身体って昔のあなたのものでしょ。ハッキリ言って非力なの。魔法も使えないし。今のあなたの方が百倍強いのよ」
「はー。でも帰る日が決まってますから、世界樹の天辺までなんか行けないです」
「それは大丈夫。神様用の直通ゴンドラがあるから、すぐですよ。すぐ」
「そんなものがあったのですか?」
「一層にある神殿にあるから、まずは地上まで降りてちょうだい」
「なら、少し待っていてください。今から枝を取ってきますから」
「枝だったら、天辺に行ってから取った方がいいわよ」
「それもそうですね。では行きますか。アイス、行くの」
レイニィは女神様と一緒に世界樹の中に戻ると、スノウィとエルダに事情を話して地上に戻ることにした。
「下りは歩かなくて済む分助かりますが、百層ごとに乗り換えるのが手間ですね」
「百回も乗り換えなければならないの」
「あら、それなら、直通の昇降機を使えばいいじゃない」
「え、ここから直通の昇降機があるんですか?」
「ありますよ。少し離れたとこに見えるあの右端の二つが、地上と一万層を繋ぐ直通です。ちなみに、その隣の二つは二万層行きですね」
レイニィは、はなから熱気球を使う気だったので、昇降機についてきちんと確認していなかった。
こんなことならきちんと確認するべきだったと後悔した。
なお、レイニィが気付いていないだけで、千層を直接つなぐ昇降機もあった。
「あれ? 先生は前に来たことがあったはずなの。何で教えてくれなかったの!」
「私が前に来た時は、一層一層確認しながら階段で登ったからな。レイニィも途中を見ながら登りたいのかと思って言わなかったのだが、違ったのか?」
「違うの! お金の節約のために階段で登っていただけなの」
「そうだったのか。それはすまなかった。そうなるともったいないことをしたな」
「もったいない?」
「今まで乗ってきた昇降機の代金の合計の方が、一万層直通の昇降機の代金より高いぞ」
「え?」
「一万層直通の方が、一層あたりでみると大幅に割安なんだ。乗り継いでいく場合に比べれば半額以下だ」
「えー。そんな!」
節約するつもりで、全く節約になっていなかったことにショックを受けるレイニィであった。
「ふー。やっと着いたか」
「レイニィ様、お疲れ様です」
「別段、危ない事もなく到着出来てよかったぜ」
レイニィ、エルダ、スノウィ、アイスの四人は、世界樹の一万層に到着した。
高度でいえば概ね五十キロメートルである。
地球で言えば成層圏と中間圏との境目の成層圏界面辺りである。
これでも世界樹全体から見れば、下から十分の一の高さである。
世界樹の高さ五百キロメートルは、地球なら大気圏外まで達していることになる。
「杖にするのに手ごろな枝がないか外を見てくるの」
「お嬢様、俺も一緒に行くぞ」
「レイニィ様、私はここでお待ちしております」
「私も」
護衛のアイスはレイニィに付いて行くが、侍女のスノウィと家庭教師のエルダは疲れたのか、その場で休憩するようだ。
外に出ると黒みがかった空と、眼下に、遥か彼方まで広がる海と雲が広がっていた。
(これだけ高度があれば球体に見えてもいいはずなのに、平面にしか見えないわね。天動説もだけど、この世界は球体ですらないのかしら?)
レイニィが遠くを見ながら考えに耽っていると、アイスが声をかけた。
「お嬢様、あの枝なんかどうだ」
「そんな大きなものは要らないの。別に杖がなくても魔法は使えるから、邪魔にならないように短いものでいいの」
アイスが示したのは二メートル近くある枝で、レイニィが欲しいと思ったのは三十センチメートルくらいのものだった。
「あら、大魔術師らしく長くて立派な物がいいと思いますよ」
突然よく見知った顔の女性が話しかけてきた。
アイスが警戒してレイニィの前に出る。
「アイス、大丈夫なの。知り合いなの。少し離れていてなの」
アイスは警戒しつつも少し距離を取る。
「久しぶりですね。一年振り位かしら」
「そうですね。そのくらいになると思います」
その女性は、レイニィの前世の身体を利用している女神様だった。
「ここで会ったのは、偶然ってことはないですよね?」
「いや、偶然見かけたからお願いに来ただけよ」
「お願いですか?」
「実はね。世界樹の天辺は天界と繋がっているのよ。それでね、天界に帰ろうと思って来たのだけど、世界樹の天辺に宇宙アメーバが取り付いていて、帰るに帰れない状態なのよ」
「いろいろビックリなのですが、私に何をしろというのです」
「宇宙アメーバを退治してもらいたいの」
「自分でなされたらいかがですか?」
「ほら、この身体って昔のあなたのものでしょ。ハッキリ言って非力なの。魔法も使えないし。今のあなたの方が百倍強いのよ」
「はー。でも帰る日が決まってますから、世界樹の天辺までなんか行けないです」
「それは大丈夫。神様用の直通ゴンドラがあるから、すぐですよ。すぐ」
「そんなものがあったのですか?」
「一層にある神殿にあるから、まずは地上まで降りてちょうだい」
「なら、少し待っていてください。今から枝を取ってきますから」
「枝だったら、天辺に行ってから取った方がいいわよ」
「それもそうですね。では行きますか。アイス、行くの」
レイニィは女神様と一緒に世界樹の中に戻ると、スノウィとエルダに事情を話して地上に戻ることにした。
「下りは歩かなくて済む分助かりますが、百層ごとに乗り換えるのが手間ですね」
「百回も乗り換えなければならないの」
「あら、それなら、直通の昇降機を使えばいいじゃない」
「え、ここから直通の昇降機があるんですか?」
「ありますよ。少し離れたとこに見えるあの右端の二つが、地上と一万層を繋ぐ直通です。ちなみに、その隣の二つは二万層行きですね」
レイニィは、はなから熱気球を使う気だったので、昇降機についてきちんと確認していなかった。
こんなことならきちんと確認するべきだったと後悔した。
なお、レイニィが気付いていないだけで、千層を直接つなぐ昇降機もあった。
「あれ? 先生は前に来たことがあったはずなの。何で教えてくれなかったの!」
「私が前に来た時は、一層一層確認しながら階段で登ったからな。レイニィも途中を見ながら登りたいのかと思って言わなかったのだが、違ったのか?」
「違うの! お金の節約のために階段で登っていただけなの」
「そうだったのか。それはすまなかった。そうなるともったいないことをしたな」
「もったいない?」
「今まで乗ってきた昇降機の代金の合計の方が、一万層直通の昇降機の代金より高いぞ」
「え?」
「一万層直通の方が、一層あたりでみると大幅に割安なんだ。乗り継いでいく場合に比べれば半額以下だ」
「えー。そんな!」
節約するつもりで、全く節約になっていなかったことにショックを受けるレイニィであった。
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