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二年目、六歳
第89話 爆炎龍なの。
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火砕流を押し返したレイニィであったが、その直後巨大な噴火が起こり、それと同時に爆炎龍が姿を現した。
爆炎龍はレイニィ目掛けて迫って来た。
「お姉神様。爆炎龍が迫って来ます」
「くっ。一難去ってまた一難なの。何としても住民達を守るの!」
「はい!」
気球下の住民からは悲鳴が聞こえてきた。
レイニィとウォーミィは爆炎龍を迎え撃つべく、臨戦態勢をとる。
爆炎龍は気球の目の前に来るとそこで一旦停止した。そして大口を開けた。
レイニィは龍のブレスがくるかと身構えたが、きたのは怒鳴り声だった。
「折角ゆっくり寝てたのに、溶岩やら火山灰をぶつけてきたのは誰だ!!」
レイニィが押し戻した火砕流は、運悪く爆炎龍が寝ていた火口にある横穴に流れ込んだようである。
「ごめんなさい。それをやったのは多分私なの。だけど、元を正せばそちらが火山を噴火させて、火砕流で集落を潰そうとしたからやったまでなの。いわば、正当防衛なの」
レイニィは身に覚えがあったので素直に謝り、その上で正当防衛を主張した。
だが、爆炎龍から返ってきたのは思いがけない事実だった。
「俺様に火山を噴火させる力はないし、火砕流も俺様が起こしたことではない。あれは自然現象だ!」
思わぬ事実にレイニィが固まり言葉が出ない。
代わりにウォーミィが確認する。
「えっ。火山の噴火は、爆炎龍が起こしているのではないのですか?」
「違う。先程も言ったが、噴火は自然現象だ。俺様が起こしているわけではない」
「では、なぜ火口にいるの?」
レイニィが復活して疑問に思ったことを問い質した。
「俺様は火山からのエネルギーを糧にして生きている。火口にいるのは当たり前だろう」
「火山からエネルギーを取っているの?考え方によっては、噴火のエネルギーを抑えているとも考えられるの……」
「そこまで大量にエネルギーは取っていないが、そう言えないこともないな」
暴風龍は少し自慢げに返事をする。
「ということは、他の龍達も一緒なの? 暴風龍が嵐を起こしているのではなく。嵐が起きるから暴風龍が嵐のエネルギーを吸いに来るということなの?」
「その通りだ。暴風龍は大変だよな。俺様と違って、わざわざ、嵐を追いかけて回らなければならないからな。おちおち、寝てもいられないだろう」
とんでもない事実が判明してしまった。
これではレイニィの正当防衛を主張できない。
レイニィは素直に爆炎龍に謝ることにした。
「すみません。こちらが一方的に悪かったようです。申し訳ございませんでした」
気球の上で土下座するレイニィ。ウォーミィもその様子を見て慌てて土下座した。
「わかればいい。二度とするなよ」
「わかりましたの」
「うむ。だが、どうするのだ? このままだとまたこちらに噴き出すぞ」
「それはできれば避けたいの。何か方法はないの?」
「そうだな。お前の力であれば、山の反対側に新しい火口を作れるかもしれない。そうすれば、こちらに噴き出てくることはなくなるだろう」
「なるほど。ウォーミィ、山の反対側に集落はないの?」
「山の反対側なら人は住んでいません。大丈夫です」
「それなら早速山の反対側に行くの」
「ちょっと待ってください。下の住民達はどうしますか。ぎゅうぎゅう詰めですし、早く安全な場所に降ろしてあげないと」
「そうなの。それもあったの。どうしたらいいの?」
レイニィはどちらを優先すべきか悩んでしまった。
「それなら、俺様がお前を山の反対側まで運んでやろう」
「運んでくれるの? それならお願いするの」
「気球の操縦はどうするんですか? お姉神様以外操れませんよ」
「気球は遠隔で操作するの。さっき一度往復したから大丈夫なの」
「本当に大丈夫なのですか?」
「大丈夫、大丈夫。何かあったらウォーミィに任せるの。じゃあ、いってくるの」
レイニィは気球から爆炎龍の背中に飛び移った。
「任せますと言われても、私では何もできませんよ。あー。お姉神様―」
レイニィを乗せた爆炎龍は既に飛び去った後で、ウォーミィを乗せた熱気球も、避難場所に向けて移動を開始していた。
「お姉神様ーーー! ……」
ウォーミィの呼び声だけが虚しく木霊していた。
爆炎龍はレイニィ目掛けて迫って来た。
「お姉神様。爆炎龍が迫って来ます」
「くっ。一難去ってまた一難なの。何としても住民達を守るの!」
「はい!」
気球下の住民からは悲鳴が聞こえてきた。
レイニィとウォーミィは爆炎龍を迎え撃つべく、臨戦態勢をとる。
爆炎龍は気球の目の前に来るとそこで一旦停止した。そして大口を開けた。
レイニィは龍のブレスがくるかと身構えたが、きたのは怒鳴り声だった。
「折角ゆっくり寝てたのに、溶岩やら火山灰をぶつけてきたのは誰だ!!」
レイニィが押し戻した火砕流は、運悪く爆炎龍が寝ていた火口にある横穴に流れ込んだようである。
「ごめんなさい。それをやったのは多分私なの。だけど、元を正せばそちらが火山を噴火させて、火砕流で集落を潰そうとしたからやったまでなの。いわば、正当防衛なの」
レイニィは身に覚えがあったので素直に謝り、その上で正当防衛を主張した。
だが、爆炎龍から返ってきたのは思いがけない事実だった。
「俺様に火山を噴火させる力はないし、火砕流も俺様が起こしたことではない。あれは自然現象だ!」
思わぬ事実にレイニィが固まり言葉が出ない。
代わりにウォーミィが確認する。
「えっ。火山の噴火は、爆炎龍が起こしているのではないのですか?」
「違う。先程も言ったが、噴火は自然現象だ。俺様が起こしているわけではない」
「では、なぜ火口にいるの?」
レイニィが復活して疑問に思ったことを問い質した。
「俺様は火山からのエネルギーを糧にして生きている。火口にいるのは当たり前だろう」
「火山からエネルギーを取っているの?考え方によっては、噴火のエネルギーを抑えているとも考えられるの……」
「そこまで大量にエネルギーは取っていないが、そう言えないこともないな」
暴風龍は少し自慢げに返事をする。
「ということは、他の龍達も一緒なの? 暴風龍が嵐を起こしているのではなく。嵐が起きるから暴風龍が嵐のエネルギーを吸いに来るということなの?」
「その通りだ。暴風龍は大変だよな。俺様と違って、わざわざ、嵐を追いかけて回らなければならないからな。おちおち、寝てもいられないだろう」
とんでもない事実が判明してしまった。
これではレイニィの正当防衛を主張できない。
レイニィは素直に爆炎龍に謝ることにした。
「すみません。こちらが一方的に悪かったようです。申し訳ございませんでした」
気球の上で土下座するレイニィ。ウォーミィもその様子を見て慌てて土下座した。
「わかればいい。二度とするなよ」
「わかりましたの」
「うむ。だが、どうするのだ? このままだとまたこちらに噴き出すぞ」
「それはできれば避けたいの。何か方法はないの?」
「そうだな。お前の力であれば、山の反対側に新しい火口を作れるかもしれない。そうすれば、こちらに噴き出てくることはなくなるだろう」
「なるほど。ウォーミィ、山の反対側に集落はないの?」
「山の反対側なら人は住んでいません。大丈夫です」
「それなら早速山の反対側に行くの」
「ちょっと待ってください。下の住民達はどうしますか。ぎゅうぎゅう詰めですし、早く安全な場所に降ろしてあげないと」
「そうなの。それもあったの。どうしたらいいの?」
レイニィはどちらを優先すべきか悩んでしまった。
「それなら、俺様がお前を山の反対側まで運んでやろう」
「運んでくれるの? それならお願いするの」
「気球の操縦はどうするんですか? お姉神様以外操れませんよ」
「気球は遠隔で操作するの。さっき一度往復したから大丈夫なの」
「本当に大丈夫なのですか?」
「大丈夫、大丈夫。何かあったらウォーミィに任せるの。じゃあ、いってくるの」
レイニィは気球から爆炎龍の背中に飛び移った。
「任せますと言われても、私では何もできませんよ。あー。お姉神様―」
レイニィを乗せた爆炎龍は既に飛び去った後で、ウォーミィを乗せた熱気球も、避難場所に向けて移動を開始していた。
「お姉神様ーーー! ……」
ウォーミィの呼び声だけが虚しく木霊していた。
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