85 / 104
二年目、六歳
第85話 弾道ロケットなの。
しおりを挟む
レイニィ、スノウィ、元勇者の三人は、城塞都市セットからの救援要請に応えるべく、実験中の人工衛星打ち上げ装置に乗り込んでいた。
乗り込んだレール上の箱の中は何もなく、椅子どころか、メーターやスイッチなどの操作パネルもなかった。
ただ、所々に窓があるだけの本当に箱だった。
「それじゃあ、発射するから、後ろの壁に背中と頭を付けて立つの。発射時は衝撃があるから気をつけるの」
「発射ボタンは外にあるのに、誰が押すんだ?」
「私が魔法で押すの。五、四、三、――」
「あ、ちょっと待て、まだ心の準備が!」
「――、二、一、零。発射! なの!!」
「ぐぇ!」
「うっ!」
「これは、効くの」
発射の衝撃で三人は壁に押し付けられる。
流線型の箱は、レール上を滑るように加速し、そして空高く、地平線の向こうに向けて打ち出された。
「更に、加速なの!!」
レイニィは魔法で箱を更に加速させた。
現状、箱にはロケットエンジンなど付いていない。
レイニィが乗り込んでいるからこそ出来る芸当である。
「ぐぇぇぇぇ!」
「……」
元勇者がカエルが潰れたような声を漏らし、スノウィに至っては最初の時点で気絶していた。
レイニィ達を乗せた箱はどんどんと加速しながら飛んでいく。
そして、発射から五分後には首都シャインのはるか上空を通過した。
レイニィは既に魔法による加速を止めており、箱は弾道軌道をとっている。
「ふー。死ぬかと思ったぞ。メイドは気絶しているが大丈夫なのか?」
「着くまで寝かせたままにするの。まだ、これで終わりではないの」
「終わりではない? それってどういう……! おい、今度は身体が浮き出したぞ」
「魔法での加速を止めたの。だから、後は落ちていくだけなの」
「落ちるだけって。大丈夫なのか?」
「大丈夫なの。ちゃんと落下傘が箱の後ろに付けてるの」
「そうか。それならいいんだが」
「さあ。今度は前の壁に張り付くの。スノウィを運ぶの、手伝うの」
「前の壁にか?」
「落下傘を開いて、速度が急に落ちれば、今度は前に飛ばされるの」
「おう、そうか。わかった」
レイニィと、元勇者は気絶しているスノウィを前の壁に運びながら話を続ける。
「……って。また、発射と同じ状態になるのか?」
「そうなの。これで終わりではないと言ったの」
「……」
元勇者が渋い顔をレイニィに向ける。
「それでは、落下傘を開くの」
レイニィは前の壁に背を付けている。
「三、二、一。展開!」
レイニィが、魔法を使って、箱の後部に取り付けられていた落下傘を開く。
箱に急制動がかかり、三人は壁に押し付けられる。
「グワ! これ、どのくらい我慢すればいいんだ?」
「三分くらい? なの。あたしもはっきりわからないの」
「おい!」
バリバリバリバリ!
元勇者がレイニィに突っ込んだところで、外から何かが破れるような音がして、三人を壁に押し付ける力がなくなった。
「何だあの音は? それに急に楽になったぞ」
「……。落下傘が破れたみたいなの……」
「何だと?!」
「……。私が魔法で加速した分、落下傘が風圧に耐えられなかったのかもしれないの」
「おい! 何てことしてくれたんだ。それでこれからどうなる?」
「このままだと地面に激突なの」
「落下傘の予備はないのか?」
「ここにあるの」
レイニィは予備の落下傘を神の封筒から取り出す。
「そうかよかった。なら早く取り付けて開いてくれ」
「でも、このままだとまた壊れるの」
「どうにかならないのか?」
「魔法で制動をかけてみるの。でも、重量が少しでも軽い方がいいの」
「軽い方がいいと言われても、この中には捨てられる物など何もないぞ?」
「箱自体を捨てるの!」
「それって、飛び降りるということか?」
「そうともいうの。さあ、スノウィを背負うの。あ、変なところを触ったら駄目なの」
「こんな緊急時にそんなことするか! 第一、俺はこう見えて百十歳だ」
「そうだったの。ただのエロ爺なの」
「エロ爺いうな!」
元勇者は文句を言いながらも、スノウィを背負ったのだった。
乗り込んだレール上の箱の中は何もなく、椅子どころか、メーターやスイッチなどの操作パネルもなかった。
ただ、所々に窓があるだけの本当に箱だった。
「それじゃあ、発射するから、後ろの壁に背中と頭を付けて立つの。発射時は衝撃があるから気をつけるの」
「発射ボタンは外にあるのに、誰が押すんだ?」
「私が魔法で押すの。五、四、三、――」
「あ、ちょっと待て、まだ心の準備が!」
「――、二、一、零。発射! なの!!」
「ぐぇ!」
「うっ!」
「これは、効くの」
発射の衝撃で三人は壁に押し付けられる。
流線型の箱は、レール上を滑るように加速し、そして空高く、地平線の向こうに向けて打ち出された。
「更に、加速なの!!」
レイニィは魔法で箱を更に加速させた。
現状、箱にはロケットエンジンなど付いていない。
レイニィが乗り込んでいるからこそ出来る芸当である。
「ぐぇぇぇぇ!」
「……」
元勇者がカエルが潰れたような声を漏らし、スノウィに至っては最初の時点で気絶していた。
レイニィ達を乗せた箱はどんどんと加速しながら飛んでいく。
そして、発射から五分後には首都シャインのはるか上空を通過した。
レイニィは既に魔法による加速を止めており、箱は弾道軌道をとっている。
「ふー。死ぬかと思ったぞ。メイドは気絶しているが大丈夫なのか?」
「着くまで寝かせたままにするの。まだ、これで終わりではないの」
「終わりではない? それってどういう……! おい、今度は身体が浮き出したぞ」
「魔法での加速を止めたの。だから、後は落ちていくだけなの」
「落ちるだけって。大丈夫なのか?」
「大丈夫なの。ちゃんと落下傘が箱の後ろに付けてるの」
「そうか。それならいいんだが」
「さあ。今度は前の壁に張り付くの。スノウィを運ぶの、手伝うの」
「前の壁にか?」
「落下傘を開いて、速度が急に落ちれば、今度は前に飛ばされるの」
「おう、そうか。わかった」
レイニィと、元勇者は気絶しているスノウィを前の壁に運びながら話を続ける。
「……って。また、発射と同じ状態になるのか?」
「そうなの。これで終わりではないと言ったの」
「……」
元勇者が渋い顔をレイニィに向ける。
「それでは、落下傘を開くの」
レイニィは前の壁に背を付けている。
「三、二、一。展開!」
レイニィが、魔法を使って、箱の後部に取り付けられていた落下傘を開く。
箱に急制動がかかり、三人は壁に押し付けられる。
「グワ! これ、どのくらい我慢すればいいんだ?」
「三分くらい? なの。あたしもはっきりわからないの」
「おい!」
バリバリバリバリ!
元勇者がレイニィに突っ込んだところで、外から何かが破れるような音がして、三人を壁に押し付ける力がなくなった。
「何だあの音は? それに急に楽になったぞ」
「……。落下傘が破れたみたいなの……」
「何だと?!」
「……。私が魔法で加速した分、落下傘が風圧に耐えられなかったのかもしれないの」
「おい! 何てことしてくれたんだ。それでこれからどうなる?」
「このままだと地面に激突なの」
「落下傘の予備はないのか?」
「ここにあるの」
レイニィは予備の落下傘を神の封筒から取り出す。
「そうかよかった。なら早く取り付けて開いてくれ」
「でも、このままだとまた壊れるの」
「どうにかならないのか?」
「魔法で制動をかけてみるの。でも、重量が少しでも軽い方がいいの」
「軽い方がいいと言われても、この中には捨てられる物など何もないぞ?」
「箱自体を捨てるの!」
「それって、飛び降りるということか?」
「そうともいうの。さあ、スノウィを背負うの。あ、変なところを触ったら駄目なの」
「こんな緊急時にそんなことするか! 第一、俺はこう見えて百十歳だ」
「そうだったの。ただのエロ爺なの」
「エロ爺いうな!」
元勇者は文句を言いながらも、スノウィを背負ったのだった。
11
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説

神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。

辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる